システム開発を依頼する際、知識がなければ見積もりの料金が妥当か判断するのは難しいですよね。想定よりも多く費用がかかるケースもあれば、思ったより安くてもクオリティが担保されるか心配になるケースもあります。
本記事では、見積もりを失敗しないための、依頼時のチェックポイントについて紹介します。この記事を読んで、費用面でもクオリティ面でも納得ができる見積もりをしてくれる会社を選びましょう。

システム開発の見積もりって?

システム開発の見積もりって?

見積もりとは、案件を進めるうえで必要な費用や作業工程、数量、納期などを算出する作業です。

特にシステム開発は、様々な開発方法や多くの作業工程があるため、見積もり内容が複雑になりやすいです。

同じシステムの開発依頼でも、複数の開発会社の相見積もりの際に、費用が大きく違うこともあります。開発会社によってエンジニアの人数やスキルも違いますし、見積もりの中に機能設定や操作説明などの開発以外の部分も加える会社もあります。会社ごとに開発の条件が変わるため、費用も変わってしまうのです。

見積もりの際は、案件に関わる細かい工程や情報を明確にし、費用の根拠を明示してもらいましょう。

システム開発工程については、こちらの記事でも詳しく紹介しているのでぜひご確認ください。

見積もりの対象項目

開発会社によって増減しますが、見積もりの主な対象項目は11個あります。以下をご参照ください。

  • 要件定義費用
  • 設計費用
  • UIデザイン費用
  • 進行管理費用
  • 開発費用
  • 動作テスト費用
  • 導入費用
  • 導入支援費用
  • 購入費用
  • 旅費・交通費用
  • 保守費用

●要件定義費用

開発するシステムに必要な機能を明確にするために行う「要件定義」の費用。

●システム設計費用

要件定義で洗い出した内容から、どうやってシステムに実装するかを明確にする費用。

●UIデザイン費用

システムを扱う人が簡単に操作できるデザインにする費用。

●進行管理費用

システム開発の進行から完了まで、進捗を管理するための費用。

●開発費用

実際に開発にかかる費用。

●テスト費用

システムが滞りなく稼働するかを確かめるための費用。

●導入費用

初期設定といった、システム完成後に会社に導入する際に発生する費用。

●導入支援費用

システムのマニュアル作りや操作説明などの、システム導入に関してのサポートにかかる費用。

●購入費用

システム開発に必要な機材の購入にかかる費用。

●旅費・交通費用

開発途中の打ち合わせで移動にかかる費用。

●保守費用

システム導入後に不具合があった際に対応するための費用。

主な見積もりの算出手法

主な見積もりの算出手法

システム開発の主な見積もり手法についてご紹介します。システム開発の見積もり算出方法は、大きく分けて3つあります。

  • 類推見積もり
  • 係数モデル見積もり
  • ボトムアップ見積もり

類推見積もり

類推見積もりとは、過去の事例や経験からコスト(費用や工数)を類推し、見積もりを行う手法です。

過去のプロジェクトと照らし合わせて、開発にかかるコストを算出するので、他の手法よりもスムーズに見積もりを出せます。実際にかかるコストが、見積もりで想定したものと大きく変わらないため、見積もりの正確性が高まります。

しかし、初めてのシステム開発の場合、比較できる過去の事例がありません。事例がない場合、見積もりの制度は、見積もりを行う人の知識や経験に左右されてしまいます。

係数モデル見積もり

係数モデル見積もりとは、開発の各作業を数字化して見積もる手法です。

システム開発の工数や要件などを、過去のデータをもとに点数化し、数学的に見積もります。

例として「製品Aを100個作るのにかかる費用」を見積もってみましょう。過去に製品Aを5個作った時に10,00円かかったというデータがあった場合、1個あたりのコストは10,00の1/5の200円となります。今回の場合、1個200円の製品Aを100個作るので、20,000円がかかるという見積もりが出ます。

過去のデータをもとに見積もるので、見積もりを行う人の知識や経験に左右されません。費用や工数が数字で可視化されているため、客観性の高い見積もりができます。反面、過去に蓄積したデータが少ないと、見積もりの制度が下がってしまうデメリットもあります。

ボトムアップ見積もり

ボトムアップ見積もりとは、システム開発で行われる作業を分解し、それぞれの構成要素をもとに見積もる手法です。作業を一つひとつに分解するため、やるべき作業が明確になり、見積もりに抜け漏れが生じにくくなります。

一方で、大きなプロジェクトになると、見積もりの正確性が低くなってしまいます。大規模なシステム開発の場合、完成までの工数が膨大ゆえに想定しにくく、全体像がつかめません。

ボトムアップ見積もりは、工数を算出しやすい中小規模のシステム開発に向いた方法です。

失敗しないために!システム開発の見積もり依頼時のチェックポイント

失敗しないために!システム開発の見積もり依頼時のチェックポイント

こちらでは、システム開発の見積もり依頼時の7つのチェックポイントを紹介します。

  • 前提条件が明確か
  • 見積もりの範囲が適切か
  • 作業範囲や修正などの対応が十分か
  • 見積書がしっかり記載されているか
  • 対応に問題ないか
  • 提案力がありそうか
  • 責任の範囲が明確か

ぜひ見積もり時の参考にしてみてください。

前提条件が明確か

まずは、作るシステムの前提条件を明確にしましょう。

システム開発における前提条件とは、開発するエンジニアの頭の中に想定されている要件のことです。この要件とは、システムの対象範囲や使用する開発言語などを指します。

導入会社と開発会社の理解の不一致を防ぐために、前提条件はエンジニアの頭の中だけにおかず、テキスト化しておきましょう。前提条件のすり合わせを怠ると、開発の途中でやり直さなければならない可能性も出てきます。最悪の場合、導入会社側が思い描いていた完成品と違うものができてしまうこともあります。

前提条件をはっきりさせて、作るシステムに関する認識を一致させましょう。

見積もりの範囲が適切か

見積もりの範囲が適切か、精査しましょう。

同じシステムを開発するとしても、開発会社ごとに見積もり対象が異なる場合もあります。

例えば受発注システムを開発したい旨を、事前打ち合わせで開発会社に共有したとします。この際、受発注に関する機能がどこまで必要か明確に伝えなければ、必要以上の機能まで開発範囲に含まれて見積もられてしまうケースもあります。

見積もりの範囲がどこまでか、開発会社と打ち合わせましょう。

作業範囲や修正などの対応が十分か

作業範囲を明確にしなければ、見積もりの費用があいまいになってしまいます。どこまでが作業範囲かはっきりさせましょう。

システム開発は、ただシステムを作るだけではありません。システム導入前のテストや操作マニュアルの作成、完成品の修正などさまざまな作業があります。

しかし開発会社ごとに「開発から導入まで」や「導入後の修正対応まで」など、依頼できる作業範囲は異なります。なんとなく見積もってもらって、完成後に修正が必要になっても見積もりの範囲外だと、追加でコストがかかってしまいます。

見積もりを出す際は、どこまでが作業範囲かを具体化し、その見積もりが妥当か確認しましょう。

見積書がしっかり記載されているか

見積もり書に記載されているコスト(費用や工数)の数字に、妥当性があるかをチェックしましょう。

悪質な開発会社であれば、相場より高めの費用や過剰な工数を記載している場合もあります。また、記載されている見積もり項目が大まかな場合、何にコストがかかっているかわかりません。開発の工程で、追加の費用がかかってしまう場合もあります。見積書の項目があいまいであれば、項目を分解して再度見積書を出してもらうように依頼しましょう。

対応に問題ないか

依頼するシステム会社の対応に問題ないか、チェックしましょう。

システム開発から導入まで滞りなく進んだとしても、運用段階で丁寧なサポートを受けられないパターンもあります。何か不具合が起きた際に、対応が雑で復旧に遅れが生じてしまえば、あらゆる業務に悪影響を及ぼしてしまう可能性があります。

企業の体質は、実際に会う社員の応対や、見積もりの数字が具体的かなどである程度判断できます。事前打ち合わせでの見積もりの際に、丁寧な対応をしてくれそうか見極めましょう。

提案力がありそうか

見積もりの際に、開発会社に提案力がありそうかチェックしましょう。

システム開発では、最初の要件定義が不十分だと、開発途中に問題が起こってしまう可能性が高くなります。修正しようにも、一つの変更が広範囲に影響を及ぼすことがあり、取り返しがつかず、開発がやり直しとなってしまう場合があります。

提案力のある開発会社なら、導入会社が想定していなかった費用や工数を算出して提案してくれるので、問題が起こるリスクを未然に防いでくれます。さらに、システムに対してより良い提案をしてくれることもあります。

失敗を未然に防ぐ意味でも、見積もり時に提案力のありそうな開発会社か判断しましょう。

責任の範囲が明確か

見積もり時は、責任の範囲が明確かも確認しましょう。

あらかじめ責任の範囲を明確にしておけば、トラブルが生じても被害を最小限に抑えることが可能です。トラブル発生時の責任の所在があいまいだと、どちらが責任を取るかでさらなるトラブルを呼んでしまう可能性があります。

見積もり時点で責任の範囲を明確にし、トラブルを必要以上に大きくしないようにしましょう。

必ずしも見積もりが高い=良い会社ではないので注意!

必ずしも見積もりが高い=良い会社ではないので注意!

見積もりが高い会社が、必ずしも良い会社ではないことを頭に入れておきましょう。

見積もりの費用が高い理由は、良い場合も悪い場合もあります。障害を起こしにくいシステムを作れる優秀なエンジニアを抱えていて、人件費が高い可能性もあります。逆に、開発プロセスに無駄があり、過剰な作業工数で費用が高くなっている可能性もあります。

見積もり費用が高かった場合、なぜその費用か、工数かの明確な理由を、開発会社に確認しましょう。

システム開発の見積もりはしっかりと比較検討しよう

システム開発の見積もりにおいて、あいまいな見積もりはあらゆる側面で損失を招く可能性が高くなります。

見積もりの際は、コスト(費用や工数)を具体的に算出しましょう。もちろん想定外の要因によりコストが高くなる場合もありますが、大幅なズレが生じるリスクは少なくなります。

しかし具体的な数字が出ても、発注側はシステム開発に関してプロではないので、妥当な見積もりかは判断しにくいはずです。妥当な見積もりか見極めるためにも、複数社に見積もりを出して比較検討することをおすすめします。