オウンドメディア戦略の設計手順を解説|運用目的や意識したいポイントについてもご紹介

オウンドメディア戦略の設計手順を解説|運用目的や意識したいポイントについてもご紹介

この記事の監修者

粟飯原匠 |プロデューサー

マーケティングを得意とするホームページ制作会社PENGINの代表。教育系スタートアップで新規事業開発を経験し、独立後は上場企業やレガシー産業のホームページ制作・SEO対策・CVR改善の支援を行うPENGINを創業。「ワクワクする。ワクワクさせる。」を理念に掲げてコツコツと頑張っています。

オウンドメディア運営のためには、戦略設計が重要です。しかし、「どのように設計すればいいかわからない」「オウンドメディアにおける重要な目的とは?」と悩まれる方は少なくありません。

この記事では、オウンドメディア戦略の設計手順を構築開始から詳細に解説しています。オウンドメディアを運用する目的や、意識したいポイントについても紹介しています。

オウンドメディア運営の担当者の方は、ぜひ参考にしてください。

オウンドメディアの戦略とは

オウンドメディアの効果的な運用には、適切な戦略設計が不可欠です。戦略設計では、以下の点を明確にする必要があります。

  • 運用目的の明確化(ブランディング重視か販路拡大重視か)
  • ターゲット層の設定とペルソナ作成
  • コンテンツの種類(記事、動画など)と制作方針の決定
  • 運用体制の構築(人員配置、外注活用など)
  • 集客手法の検討(SEO対策、SNSプロモーション、リンクビルディングなど)
  • 実行計画の具体化(コンテンツ更新頻度、プロモーション計画など)
  • 数値目標とKPIの設定

なお、リソース不足は計画の実行を妨げる可能性があるため、必要な予算や人員などのリソースを適切に確保することが重要です。

また、継続的な運用を実現するには、設定したKPIに基づいて定期的に運用状況を評価し、コストを最適化しましょう。

オウンドメディアを運用する3つの目的

オウンドメディアを運用する目的には、以下の3つが挙げられます。

  1. メディア自体を広告事業化する
  2. リード獲得・顧客育成をする
  3. ブランディング・認知度を強化する

1.メディア自体を広告事業化する

オウンドメディアの目的の1つとして、メディア自体の広告事業化が挙げられます。期待できるメリットは、以下のとおりです。

  • 広告収入によって安定した収益源を確保できる
  • 自社サービスや商品の認知拡大につながる
  • 競合他社に対する優位性を確立できる

ただし、認知拡大までに時間を要し難易度が高いため、収益化は簡単ではありません。一方で、メディアが一定の人気を獲得できれば、大手企業からの広告出稿や、高単価の広告料金設定などが可能になり、収益の最大化が見込めます。

2.リード獲得・顧客育成をする

ターゲット層向けの有益なコンテンツを発信し、検索上位表示で自社サイトへ誘導することで、効率的な顧客育成が可能になります。

優れたメディアでは月間数百万アクセスも実現しており、大きな集客効果が見込めます。ただし、SEO対策や継続的なコンテンツ更新、プロモーション等の戦略的な運営が必須です。

3.ブランディング・認知度を強化する

オウンドメディアは、企業のブランディングと認知度向上に大きく貢献します。企業の理念や製品への情熱を、コンテンツを通じて効果的に発信することで、ユーザーの理解と共感を得られるでしょう。 

結果として、企業ブランドに対する深い理解と熱心なファン層を獲得できる可能性があります。ユーザーにとってもメリットのある有益な情報を提供し続けることで、他社との差別化も図れます。

オウンドメディア戦略を設計する8つの手順

オウンドメディア戦略を設計する手順は、8つに分類されます。それぞれ詳しくみていきましょう。

1.目的を明らかにする

オウンドメディアの運用を始める前に、明確な目的と具体的な目標設定が不可欠です。運用の目的と達成したい最終目標を詳細に検討することで、成果を明確に測定できるようになります。

運用目的が定まっていないと、成果が適切に把握できません。たとえば、ブランディング強化や販路拡大、顧客育成など、コンテンツ制作やプロモーション、評価指標も大きく変わってきます。

したがって、オウンドメディア運用の初期段階では、目的設定とKPI設定を綿密に決める必要があります。すると、運用効果を検証して、改善につなげることができます。

2.ターゲット・競合調査を実施する

オウンドメディア運営の成功には、競合分析が欠かせません。まずは、成功事例の競合メディアを調査し、以下の点を把握する必要があります。

  • 掲載されているコンテンツの特徴
  • 検索上位に表示されているキーワード
  • 流入経路や獲得しているユーザー属性
  • アクセス数やエンゲージメントなどのKPI

この分析から、人気のあるコンテンツや効果的な導線が見えてくるでしょう。その後、自社ならではの差別化ポイントを見出し、最適な戦略を立案できます。つまり、運用開始前に十分な準備ができれば、効果的な運営につなげられます。

3.自社の強みを明らかにする

オウンドメディア運営にあたっては、自社の強みを明確にし、適切な戦略を立てることが重要です。そのためには、以下のようなマーケティング分析ツールが役立ちます。

  • 3C分析:市場環境、自社の強み・弱み、競合状況を把握
  • STP分析:市場をセグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング
  • 4P分析:製品、価格、流通、プロモーションの施策を確認

1つのフレームワークでは不十分な場合もありますが、複合的な分析を行うことで、より適切な施策立案につなげられます。自社、競合他社、市場の状況を客観的に把握し、自社の強みや立ち位置を明確にしましょう。

4.KPIツリーを作る

オウンドメディアの運用において、KGI(重要目標達成指標)を基にKPI(重要業績評価指標)を設定し、これらを視覚化するKPIツリーの作成が効果的です。

KPIツリーは目標達成に向けたプロセスを視覚的に明確にできます。たとえば、「売上増加」をKGIとした場合、「受注数」や「平均受注額」をKPIに設定し、それらを達成するための具体的な行動を下層に配置します。

オウンドメディアにおけるKPIの例は、以下の表のとおりです。

目的KPI例
リード獲得お問い合わせ数セミナー申込者数メルマガ登録者数
採用お問い合わせ数エントリー数UU数
ブランディングサイトコメント数SNSフォロワー数PV数
収益化商品販売数サービス利用者数商品利益額入会者数

適切なKPIを設定し、ツリー化することで、目標の達成状況が測定しやすくなり、分析と改善が円滑に進められます

5.達成目標や期限を設定する

オウンドメディアの成功には、明確な目標設定と具体的な期限の設定が不可欠です。オウンドメディアの効果が表れるまでには、数ヶ月から1年程度の期間を要します。したがって、長期的な視点での計画が重要です。

期限設定により、進捗状況を定期的に評価し、必要に応じて戦略を柔軟に修正できます。

初期段階では、新規ユーザー数や検索順位などの基本的な指標を中心に目標値を設定しましょう。その後、時間の経過とともに、滞在時間や回遊率などサイトの質を反映するKPIを追加していくとよいでしょう。

長期的な目標設定と、適切な期限管理により、PDCA サイクルを回しながら、効果的なオウンドメディア運営を実現できます。

6.P/Lを作成して社内で合意形成する

企業の財務状況を示す財務三表の中で、損益計算書(P/L)は非常に重要な位置を占めています。P/Lには、1年間の売上高、発生費用、最終的な利益額が記載されています。つまり、企業活動の結果を一目で把握できる書類です。

オウンドメディア運用においても、P/Lの作成は欠かせません。P/Lを作成し、社内で稟議にかければ、社内の関係部門が一丸となって内容を検討・承認できるようになります。

P/Lの作成と社内承認を経ることで、部門間の認識齟齬を防ぎ、オウンドメディア運営に関する効率的な合意形成が可能です。つまり、P/Lは単なる会計書類ではなく、オウンドメディア戦略の立案・実行に不可欠なツールといえます。

7.予算・人的リソースを確保してオペレーションを整理する

損益計算書(P/L)を踏まえ、適切な予算とリソースを確保する必要があります。その際、以下の点を明確にすることが重要です。

  • 運用目的
  • 段階ごとの戦略計画
  • ターゲットとなるタッチポイントの設計
  • メディアの準備と立ち上げ
  • 継続的な監視・分析環境の確立

オウンドメディアを成功に導くには、このように戦略的な設計と適切なリソース配分が欠かせません。単に予算を確保するだけではなく、運用の目的やターゲット、施策の優先順位など、戦略的な観点から体制構築を行うことが肝心です。

これにより、効果的かつ持続可能なオウンドメディア運営が実現できるでしょう。

8.制作フェーズに移る

オウンドメディアの成功には、目標に対する成果測定と、それに基づいた運用の仕組み構築が不可欠です。特に、検索エンジンを重要なタッチポイントと捉え、SEO対策を意識したコンテンツ制作への注力は欠かせません。

コンテンツ制作にあたっては、ユーザーの検索意図やニーズを詳細に分析し、それに応えられるような設計が必要です。キーワード選定から内容構成まで、細部にわたる計画立案が求められます。

最終的な目標は、ユーザーにとって真に価値のあるコンテンツ提供です。結果、オウンドメディアの認知拡大と、目標達成につなげられます。

オウンドメディア戦略を構築する際、意識したい6つのポイント

オウンドメディア戦略で意識したいポイントは、以下の6つです。

  1. 戦略ごとにフェーズを考える
  2. 目的ごとに成果を明確にする
  3. リソースの確保
  4. 長い目で見て運用する
  5. 目的からブレないように気を付ける
  6. 我慢強くPDCAを回す

1.戦略ごとにフェーズを考える

オウンドメディアの運用には、一般的に複数の目的が存在します。しかし、それらを同時に追求するのではなく、段階を踏んで目的ごとの戦略が重要です。

たとえば、直接的な収益化を目指す場合、事前にトラフィックの確保が必要になります。一方で、リード獲得とブランディングの優先順位を明確にし、初期段階で集中すべき方針の選定も効果的です。

つまり、オウンドメディアの目的に応じて、初期段階から中長期にかけての戦略を段階的に設計することが重要です。

2.目的ごとに成果を明確にする

目的を具体的に定め、その達成度を把握できる成果指標を設定することが重要です。

たとえば、商品・サービスの売上拡大を目的とする場合は、お問い合わせ数や資料請求数が成果指標となります。一方、採用エンゲージメントの向上を目的とする場合は、エントリー数が適切な指標です。

このように、オウンドメディアの運用目的に応じて具体的な成果指標を設定し、目標達成状況を適切に把握できれば、改善に役立てることができます

3.リソースの確保

多くの企業では利用可能なリソース(予算、人員など)に限りがあるため、無駄を省き、目的に沿った選択と集中が求められます

具体的には、検索エンジン向けコンテンツ制作、ソーシャルメディア活用、動画配信など、オウンドメディアの各種施策について、優先順位の明確化が必要です。

成功すれば投資対効果が得られますが、失敗すれば資金の損失につながります。そのため、「何をすべきか」「何をすべきでないか」を正確に見極める戦略設計が大切です。

4.長い目で見て運用する

オウンドメディアの運営は、成果が現れるまでに時間を要するプロセスです。SEO対策を施したコンテンツであっても、公開直後から高い評価を得られるわけではありません。特に初期段階では、効果発現に長期の期間が必要となります。

しかし、日々の記事更新を通じて、徐々に検索エンジンからの評価を獲得し、アクセス数の増加やユーザーとの接点を築いていきます。

このため、オウンドメディアが目に見える成果を生み出すまでには、最低1〜2年の期間をかける長期的な視点が重要です。

5.目的からブレないように気を付ける

オウンドメディアの運営には、成果が表れるまでに長期の期間を要します。SEO対策を施した質の高いコンテンツでも、初期段階では認知度や評価が低く、日々の地道な更新が必要です。

時間がかかるからこそ、オウンドメディアの「なぜ運営するのか」という本来の目的を見失う可能性があります。一時的な注目を集めるだけではなく、中長期的な視点に立ち、企業にとっての真の価値を追求していかなければなりません。

そのためには、KGI(重要目標達成指標)とKPI(重要業績評価指標)を明確に設定し、目的指向型の運営が不可欠です。

6.我慢強くPDCAを回す

オウンドメディアの運営は、うまくいかないことの連続です。そのため、迅速な検証と改善を繰り返すPDCAサイクルが必須となります。

具体的には、KPIの達成状況を確認し、コンテンツの改善に取り組む必要があります。まず、実績をしっかりとレビューし、具体的な改善策を検討しましょう。

たとえば、SEO対策では、成果の上がっていない記事にサイト内からの導線を設置したり、検索順位を上げるためにリライトを行ったりと、さまざまな施策が考えられます。

さらに、Googleのアルゴリズム変更によって、SEOの状況が変動することにも注意が必要なため、定期的な実績チェックと、施策の見直しが欠かせません

オウンドメディア戦略の事例

弊社がとあるオウンドメディアを担当した際の話です。

当初、このメディアは総額200万円の投資にもかかわらず、わずか5万PVしか集客できていませんでした。そのため、売上増加を目的として、戦略の見直しを行いました。

解決策としては、自社の強みを医療専門情報に特化し、専門家による監修・執筆、専門的なインタビューコンテンツに注力することにしました。

加えて、オペレーションの改善とKPIの再設定、SEO対策の強化にも取り組み、結果として、半年で80万PVまで成長を遂げたのです

つまり、メディアの強みを活かしたコンテンツ戦略と、オペレーションの最適化、SEO対策の強化といった、総合的な取り組みが功を奏したといえます。

オウンドメディア 戦略でよくある3つの質問

オウンドメディアの戦略でよくある質問には、以下の3つが挙げられます。

  1. オウンドメディアとECサイトの違いは何ですか?
  2. オウンドメディアにはどのような種類がありますか?
  3. オウンドメディアのメリットは?

ここではそれぞれに分けて解説しますので、詳しくみていきましょう。

1.オウンドメディアとECサイトの違いは何ですか?

オウンドメディアとECサイトの主な違いは、ユーザーを魅了しファン化しやすいかどうかです。ECサイトは商品の販売に特化していますが、オウンドメディアはブランドや商品の背景や魅力を深く伝えることが可能です。これにより、ユーザーとの関係を強化し、集客にも役立つとされています。

2.オウンドメディアにはどのような種類がありますか?

オウンドメディアは、主に「公式サイト型」と「独立型」の2種類です。公式サイト型は自社の商品やサービスの紹介、企業概要などを中心に、ブログやニュースページを通じて有益な情報を提供します。

一方、独立型オウンドメディアは、公式サイトとは別立てで運営され、自社商品・サービスに関連した情報やターゲットユーザー向けのコンテンツを独自の視点から発信します。このタイプは、ユニークでユーザーの注意を引くようなデザインが特徴です。

3.オウンドメディアのメリットは?

オウンドメディアは、広告費削減、認知度向上、自社ファン獲得の3つの大きなメリットがあります。

自社のWebサイトやブログを通じて、広告に頼らずに持続的な情報発信が可能です。自然検索から新たな顧客層にアクセスしてもらえることで、自社の認知度が高まります。

さらに、価値あるコンテンツ提供によりユーザーの信頼を獲得し、自社のファンを作り出すことが可能です。これらのメリットは、潜在顧客を見込み客やリピーターに育て上げる基盤を作ります。

まとめ

オウンドメディアにおける戦略は、運用目的を明確化したり、目標設定やリソース確保などあらゆる面で継続可能かを計画立てなければなりません。

長期的な運営が必要になるオウンドメディア運営ですが、メディア自体を広告事業化したり、リード獲得・顧客育成できたりなど、メリットや利益も計り知れない戦略です。

オウンドメディア戦略を設計するためには、ターゲット・競合調査の実施やKPIツリーなど、注意すべきポイントもいくつか存在します。この記事を参考にして、自社のオウンドメディア戦略に役立ててください。