3C分析とはビジネスの基本になる「自社」と「顧客・市場」「競合」をまとめるためのフレームワークです。数あるビジネスフレームワークのなかでも初歩的なものですが、基本中の基本であるため、決しておろそかにはできません。マーケティング施策を行う前段階で整理すべき内容です。
今回は3C分析について、概要、作り方、事例をご紹介します。基本をおろそかにしてしまうと、思わぬ落とし穴にはまる可能性もありますので、はじめに作成してみてください。
3C分析とは
3C分析とは「Company(自社)」「Customer(顧客・市場)」「Competitor(競合)」の3つの言葉の頭文字から名付けられたビジネスフレームワークです。1982年に経営コンサルタントの大前 研一氏が自著内で発表しました。
そもそもどうして3C分析をやるのでしょうか。それは「競争市場内において、どうやって勝利するかを考える必要があるから」です。顧客のニーズや思考、競合の強みや弱みを知ることで、自社の強み・アピールポイントが鮮明になります。これが「成功するための鍵」といえる要素です。
成功するうえで、大前氏は「KSF(Key Success Factor)」を見つけることが大事だといいます。では、KSFとは具体的にどういった要素を指す言葉なのでしょうか。
3C分析の目的はKSFを明確に設定すること
KSFとは、外部環境と内部環境を照合した際に、事業を成功に導くための要因を指す言葉です。自社の強みを発揮したくても、外部環境にチャンスがなければ事業は失敗してしまいます。
KSFの例をご紹介します。あなたは「紙からクラウドでの労務管理に切り替えたいレガシーの小規模事業者」をターゲットとして「労務管理のSaaSツール」を提供するとしましょう。
この時、リテラシーが低い方でも使えるよう「UI・UXの使いやすさ」は必要不可欠な条件です。これが達成できれば、KSFを最低限満たせるといっていいでしょう。
しかし、もし「過度にスタイリッシュにし過ぎてボタン操作が分かりにくい」「ツールの動線がばらばらになっている」などのUIになった場合、とてもKSFを満たしているとはいえません。
3C分析のゴールとは、自社と顧客・市場、競合を照合することで、自社の強みを発見することです。そのうえでKSFを明確に設定することだといえます。
3C分析の各要素
では3Cの各要素について解説しましょう。3C分析は設定する順番も大切です。
1. 顧客・市場(Customer)
はじめに、顧客・市場を分析しましょう。自社を取り囲む競合のトレンドや変化を知らなければ、自社の強みや競合の隙が分からないからです。
ただし「顧客・市場」といわれても、抽象的過ぎて、どのような要素を記載したらいいか分からないかもしれません。より細分化して考えることで、具体的な要素が見えてきます。
例えば市場には「ミクロ」と「マクロ」の2つがあります。
マクロとは比較的広い領域であり景気の変動や政治の動向、法の改正などが当たります。一方、ミクロとはマクロのなかに位置するものであり、主に業界全体の動向を意味する言葉です。この両方に着目して気づきを記載していきましょう。
顧客はミクロの市場のなかに位置する存在と言ってもいいでしょう。業界のトレンドのなかで顧客は何を望んでいるのかを、明確に定めるのがコツです。
2. 競合(Competitor)
自社を記載する前に外部要因である「競合」の強みと弱みを記載しましょう。成功例と失敗例がある場合は、どちらも記載しておくことをおすすめします。
それぞれについて、費やしたコストやリソース、チャネルとビジネスモデル全体を記載しましょう。具体的に見比べることでKSFが具体的に見えてきます。さらに「なぜ成功したのか」という成功理由も深堀りできます。
3. 自社(Company)
最後に自社の強みや弱みを分析します。
顧客や競合を先に分析しておくことで「顧客のニーズが○○の状態に動いているから、自社の○○な部分がフィットする」「競合は○○が弱い。その隙を突けるような強みが自社にはある」などと、自社の強み弱みを論理的に分析できるのです。
そのため、3C分析を実践する際には「顧客・市場」「競合」「自社」の順番で分析をするように心がけましょう。
別のフレームワークを併用して、3Cの輪郭をより濃くする
3C分析の大きなデメリットの一つが「得られる示唆が抽象的で薄くなりがち」という点です。以下に記載する他のフレームワークを併用することで、より論理的に深みのあるアウトプットを出しやすくなります。
1. マクロ環境の分析には「PEST分析」を
PEST分析は「政治(Politics)」「経済(Economy)」「社会(Society)」「技術(Technology)」の代表的な4つのマクロ環境をフレームワーク化して分析するためのツールです。
顧客・市場分析の際に有効に使えます。
2. ミクロ環境と競合の分析には「5forces」を
5forcesとは「新規参入者」「代替品」「買い手」「売り手」「既存競合他社」という5つの力を分析するためのフレームワークです。
ミクロ環境である業界の状況が分かるのはもちろん、ミクロ環境を踏まえたうえで顧客の強みと弱みを分析できます。
顧客・市場分析、競合分析の際に使うことで「売り手・買い手の観点」も含めたうえで競合分析ができます。
3.顧客と自社の分析には「ビジネスモデルキャンバス」を
ビジネスモデルキャンバスとは以下の9つの点で、企業やサービスの要素を可視化するフレームワークです。
- 顧客セグメント
- 提供価値
- 顧客とのリレーション
- チャネル
- 活動
- リソース
- パートナー
- コスト
- 収益
競合分析、自社分析の際に用いることで、あらゆる側面から、それぞれの強み・弱みを浮き彫りにできます。
3C分析とSWOT分析の違いとは
3C分析とSWOT分析の違いについて気になっている方も多いようです。
先述した通り、3C分析とは顧客のニーズを軸に競合・代替品を分析することで、自社の強み・KSFを設定するためのフレームワークになります。
一方のSWOT分析とは「Strengths:強み(内部)」「Weaknesses:弱み(内部)」「Opportunities:機会(外部)」「Threats:脅威(外部)」という4つの内外環境を1つのフレームワークにまとめられるツールです。
その後「強み×機会」「強み×脅威」「弱み×機会」「弱み×脅威」の4つの状況を記載して「自社が状況の変化に応じて、どう立ち回るべきなのか」を定義していきます。これを「クロスSWOT分析」といいます。
両者は「内外環境を分析する」という意味では似ています。しかし外部環境の視点としては、まったく違う性質をもつフレームワークです。
SWOT分析では「顧客(市場」や「競合」などの視点はありません。一方で3C分析のデメリットとして、内部環境(自社)と外部環境(顧客と競合)を並列化して比較できない点があります。
使う順番は「3C分析」→「SWOT分析」がおすすめです。
まず3C分析によって顧客と競合を参考にしながら自社の強みを明らかにしましょう。その後にSWOT分析によって自社の強み・弱みを細分化して、同時に「機会と脅威が訪れた際にどう動くか」を決めます。
3C分析をスターバックスの事例から読み解く
では実際に3C分析を実践してみましょう。今回はスターバックスを例に挙げましょう。競合としてドトールを挙げます。
1. スターバックスの顧客・市場(Customer)
まずはコーヒーショップ業界をマクロ環境分析(PEST)で捉えてみましょう。政治的要因は大きく寄与しません。経済的要因としては「景気変動による消費者の購買意欲の昇降」があります。また「材料費高騰」も考えられます。
社会的要因として「SNSの流行」があります。いわゆる”バズ”による短期的な売り上げ向上が考えられます。反対に炎上によるブランド毀損は大きなリスクの一つです。技術的要因としては「製造機器のアップデート」があります。
ミクロの外部環境を見たとき、大きな顧客層は「コーヒーを飲む消費者全体」です。市場として競合が多いレッドオーシャンなので、顧客セグメントが重要になります。
2. スターバックスの競合(Competitor)
競合はさまざまありますが、今回はドトールを挙げましょう。
価格帯を見たとき、ドトールは低価格帯のコーヒーで勝負しています。アイスコーヒーMサイズ1杯の値段は300円です(2024年1月3日現在)。メニューのオリジナリティに凝っておらず、一般的なメニューが並びます。
店内デザインとしては、1店舗あたりの面積は小さいものの席数を多く確保しています。また喫煙席を設けているのが特徴です。
3. スターバックスの自社(Company)
それに対してスターバックスは「ブランド力」で勝負をしています。「スターバックスの新作を飲むこと」「カップを持って歩くこと」などが、一種のステータスになるレベルのブラド効果です。SNSとの相性の良さが伺えます。
また店内面積は広く、席数は少ないのでゆったりと過ごせるのが特徴となっています。さらに店員の接客力が高いのが特徴。「接客マニュアルがない」という話は有名ですが、各人が自分で思考して行動しています。
顧客セグメントは「ブランド志向」「オシャレ志向」「店員のホスピタリティを求める層」です。特に女性をメインターゲットに据えているため、喫煙室はありません。これはKSFの一つです。
「小物・インテリアの販売」を拡充するのも相性が良いモデルでしょう。またアパレルとの協業可能性も考えられます。
一方で「景気変動による消費者の購買意欲の下落」には注意したいところです。消費者の懐の余裕がなくなった場合は、売り上げが下がる可能性があります。またSNSでの炎上リスクも、常に管理しておくポイントです。
3C分析から4C・5C・6C分析に
「顧客」「競合」「自社」を分析する3C分析は時代とともに、一緒に考えるべき要素が増えています。そこで追加されたフレームワークが4C、5C、6C分析です。それぞれの分析手法についても紹介しましょう。
4C分析
4C分析とは3C分析に「協力者」を加えたフレームワークのことです。
他社との差別化や顧客へのより大きな価値提供のためにも他社とアライアンスを組んでビジネスを進めることが増えてきました。
4C分析によってのメリットは他社の力を借りることで自社の強みをさらに伸ばし、弱みを補完できる部分にあります。顧客と競合を同じフレームワーク上に並べて「協力者」が、どのように関与するかを確認できるのが魅力です。
ただし4C分析には2種類あります。自社商品の要素だけについて4つの要素を比較するフレームワークもありますので注意しましょう。
5C分析
5C分析とは4Cに加えて「地域のコミュニティ」という外部の視点を加えたフレームワークです。
自分のビジネスがいるプラットフォーム全体が、ビジネスにどのような影響を及ぼすのかについても比較・考察できます。
6C分析
6C分析は自社とともに、顧客の3Cも分析するフレームワークです。BtoBマーケティングの際に用いられるフレームワークになります。
対企業でのマーケティングにおいては「顧客の顧客」を考えることがとても大切です。自社の商材を導入した結果、顧客の顧客にどのようなプラスがあるのかを考えることで、コンセプトや売り方などがより鮮明になります。
3C分析はマーケティング戦略の上流で整理しておく
顧客(市場)×競合×自社を分析することで、根本的なマーケティングの方向性が見えるのが3C分析の面白さです。ターゲティングにもセグメンテーションにも役立ちます。
各社がマーケティング施策を行っていると思います。しかし市場・競合を観察したうえでマーケティングできている企業は数少ないです。論理的に施策を回すために、前提として必要な思考ですので、実践してみてください。
株式会社PENGINでは、BtoBマーケティングのコンサルティング・代行ができます。特にSEO、CVR向上などのWebマーケティング施策に強みがありますので、お困りの方はお気軽にご相談ください。