新規事業の作り方とは|論理的にアイディアを生み出しリリースまでを14ステップで紹介

新規事業の作り方とは|論理的にアイディアを生み出しリリースまでを14ステップで紹介

この記事の監修者

粟飯原匠 |プロデューサー

マーケティングを得意とするホームページ制作会社PENGINの代表。教育系スタートアップで新規事業開発を経験し、独立後は上場企業やレガシー産業のホームページ制作・SEO対策・CVR改善の支援を行うPENGINを創業。「ワクワクする。ワクワクさせる。」を理念に掲げてコツコツと頑張っています。

ここ数年でビジネス環境はさらに多様化、複雑化しています。その一方で、現在は起業や新規事業に対する技術的なハードルが下がったことで、幅広い分野でさまざまな事業が登場するようになりました。

さらにインターネット・SNSへのアクセスが増加するにつれて、顧客行動が見えるようになりました。

このような変化のなかで、商品のライフサイクルは短くなっています。市場トレンドが変化するスピードが早まっているのが現状です。これまで好調であった事業がいつ不振に陥るかわかりません。

そこで今回は「社内新規事業の作り方」をご紹介します。これから事業創出を考えている方、社内の新規事業担当者の方、マーケターの方はぜひご覧ください。

新規事業を創出する流れとは

社内事業を発想するためには、どのように思考をすればいいのでしょうか。いきなりブレインストーミングで自由に発想することも悪くはありません。しかし細部の裏付けが不十分なまま進んでしまうリスクもあります。

新しく事業を創出する際には、ビジネスモデルの論理性を持たせることが重要です。以下の一連の流れに論理性を持たせつつ、新規事業を作ることをおすすめします。

  1. 会社の現状は○○だ
  2. 顧客を含めた外部環境は○○の方向に向かっている
  3. だから○○の市場を獲得するために新規事業を作る必要がある
  4. 新規事業のビジネスモデルは○○だ
  5. その際の顧客のニーズは○○だ
  6. この事業の競合は○○だ
  7. ニーズに対応しつつ競合と差別化するための戦略をおこなう
  8. 事業を作るための具体的なアクションは○○だ
  9. その結果、必要なリソースは○○だ
  10. KGI・KPI○○である
  11. 上記を俯瞰して見た場合の収支項目は○○だ
  12. P/Lは○○だ
  13. 目標値を達成するための効果検証は○○の手法で行う
  14. 検証結果を踏まえて新規事業を修正する
  15. 新規事業をリリースする

このように順序を意識しつつ、フレームワークを使ってまとめながら事業を考えることで、論理性のある新規事業が組み立てられます。では早速各項目についてご紹介していきましょう。

1. 現状と課題を明確に言語化する

まずは「会社が現状、どのような状況にあるのか(As Is)」を明確に言語化します。

「現事業はうまくいっているのか」「既存のお客様は何を求めているのか」「売上推移は堅調か」「現事業に足りないものはなにか」などを挙げていきましょう。

この際に、現在の事業モデルをビジネスモデルキャンバスで整理していくことがおすすめです。ビジネスモデルキャンバスとは「顧客」「提供価値」「収益」「コスト」など、ビジネスを形成する9つの項目で事業や会社のビジネスをまとめるフレームワークです。

2. シナリオシナリオプランニングで俯瞰する

現状の課題が判明したら「シナリオプランニング」を進めていきます。

シナリオプランニングとは未来に発生する可能性があるシナリオを複数考えたうえで、自社の対処法を考える手法です。

「インパクトの大きさ」と「不確実性の大きさ」のマトリクス図で4つの領域に分けたうえでシナリオを当てはめていき「今後、自社がどう動くべきか」を決めていきます。

このうえで各項目を考えるために「PEST分析」や「5forces分析」などのフレームワークを使いましょう。

PEST分析は「法律」「経済」「社会」「技術」の4項目からマクロの外部環境を見ていくフレームワークです。

「5forces分析」とは「売り手」「買い手」「競合」「新規参入者」「代替品」の5つからミクロの外部環境を考えていきます。

3. あるべき未来と新規事業の大枠の確定

シナリオプランニングを踏まえ、自社が今後あるべき姿(To Be)を考えていきます。数あるシナリオのなかから、自社のあるべき姿を定義していきましょう。

「既存事業の顧客にさらなる提供価値を加えるのか」「まったく新しい顧客を開拓するのか」なども含めて定義していきます。

この際に新規事業の大枠を確定させましょう。事業に対してビジネスモデルキャンバスを利用することで、必要な項目をアウトプットできます。

4. 新規事業における「顧客像」の確定

新規事業の顧客を特定します。新規事業の商材に従って、顧客像を具体的に定めるフェーズです。まずはターゲットレベルで定めましょう。例えば以下の項目を記載していきます。

BtoBをターゲットとする場合の例

  • 年商
  • 部署
  • 悩み

さらに状況に応じて決裁者のペルソナを設定すると「営業トークスクリプトの作成」などに有効です。

BtoBの決裁者ペルソナの例

  • 所属部署
  • 年齢
  • 年収
  • 趣味
  • 仕事のゴール
  • 仕事でのミッション
  • 仕事の価値観
  • 業務上の悩み

これらのうち、重要なのは「悩み=ニーズ」です。新規事業において、顧客のニーズを掴むことは最低限重要な項目になります。顧客ニーズをアウトプットする際には「ジョブマップ」を使いましょう。

ジョブマップとは「ジョブ理論」をベースにしたフレームワークです。機能的、社会的、感情的といった3つの側面から、顧客の抱えるジョブ(≒ニーズ)を特定できます。

5. 新規事業における「競合」と「代替品」の確定

続いて、新規事業における「競合」と「代替品」をラインナップします。競合と代替品は大きく違いがあります。

例えばスターバックスの競合はドトールやタリーズといったカフェ―チェーンが該当します。一方でスターバックスの「コーヒーの味」の代替品はコンビニのカウンターコーヒーです。また「居心地のいい空間」の代替品はネットカフェやシーシャ店などになります。

こうした競合や代替品などをラインナップしたうえで、ポジショニングマップを作成しておくと、のちのち差別化しやすいです。

また特に新規事業の脅威となりうる存在がある場合、競合のビジネスモデルキャンバスを作成します。すると「強み」について、より具体的に可視化できます。

6. ニーズに対応しつつ競合と差別化し「やるべきこと」を確定する

「顧客ニーズ」と「競合のビジネスモデル」について整理できたら、あらためて「自社が顧客ニーズを満たしつつ、どのように競合と差別化すべきか」を考えます。この際に使えるフレームワークが「3C分析」と「STP分析」です。

3C分析とは「市場・顧客(Customer)」「競合(Competitor)」「自社(Company)の3つの要素を1つの画面で整理するフレームワークです。

自社の差別化を考えるなかで「差別化を意識し過ぎて顧客のニーズから離れてしまう」というミスは起きがちです。しかし最も重要なのは「顧客のニーズに応えること」です。ブレないように気をつけましょう。

STP分析とは「セグメント」「ターゲティング」「ポジショニング」の3点を整理する際に用いるフレームワークです。

セグメントとは「市場のなかから顧客をわけること」。ターゲティングとは「分けた顧客群から狙うターゲットを絞ること」。ポジショニングとは「競合群のなかから自社の立ち位置を定めること」です。

市場が広い場合、競合が獲得しようとしている顧客に合わせる必要はありません。例えばカフェチェーンのなかでも、スターバックスは女性やブランド志向の人に狙いを定めています。一方でドトールは男性・ビジネスマンの方をターゲットとしています。

後発でビジネスを始める場合、同じ顧客をターゲットとすると、認知を取りにくいうえ独自の価値を提案できず、負けてしまいます。STP分析で既存市場のどこを狙いにいくかを明確に定めましょう。

7. 新規事業を実現するためにリソースの戦略を決める

ここまで整理できたら、具体的にやるべきことを定めていきます。「ひと」「もの」「かね」の観点で足りない要素と、取るべきアクションを定めていきましょう。

  • どんな人が必要か
    • 採用する
    • 業務委託契約を結ぶ
  • 必要な予算はいくらか
  • 新しく導入すべきツールはあるか

特に人的リソースは重要です。採用と外部調達にはそれぞれのメリット・デメリットがあります。必要なポジション等によって、どちらが適しているかはまちまちです。

採用業務委託
メリット長期的な関係性を築きやすいコミットしてもらいやすい育成を通して長期的に会社の核となる人材となりやすい短期間のプロジェクトや特定のスキルが必要な場合に、契約しやすいコスト管理がしやすい短期間で人材を調達できる
デメリット固定給与、社会保険、福利厚生など、コストが高くなりやすい成果が出なかった時の解雇が難しい採用完了までに時間がかかるコミットメントまで管理できないノウハウが流出するリスクがある品質をキープしにくい

8. 新規事業を実現するために必要なアクションを決める

リソース確保のほか、必要なアクションを定めていきます。以下はその一例です。

BtoB向けの労務管理ツールの販売の例

  • 開発
    • プロダクト開発
    • プロダクト保守
  • マーケティング
    • リード獲得から受注までの流れの作成
    • マーケティングチャネルの確定
    • マーケティング手法の確定
    • インサイドセールスのトークスクリプトの作成
  • 営業
    • 資料作成
    • 営業トークスクリプトの作成
  • カスタマーサクセス
    • アップセル・クロスセル商材の開発
    • チャーンレート低減施策の作成
    • カスタマーサポート方針の作成
    • 顧客フィードバックの運用方針作成
  • 経理
    • 請求書管理の運用フロー作成
    • 入出金管理の運用フロー作成

これらをタスクとして細分化し、担当者とスケジュールを決めてシートにまとめていきます。

9. 新規事業の目標値を決める

ここまでが出来たら、目標値を決めます。KGIとKPIに落とし込むのが一般的です。

KGIとは最終的な目標を指す言葉です。KPIはKGIを達成するために設定すべき項目になります。例えばBtoB向けの労務管理ツールの場合、KGIは「売り上げ」であり、KPIは「販売個数」「商談数」「リード獲得数」「LTV」「解約率」などに分けられます。

これらの目標値は一般的に企業が求める「売り上げ」「利益」から逆算して算出される場合が多いです。KGIが定まったら、逆算的にKPIを出します。

10. リソースの「量」を確定して予算を設定する

立てた目標値に応じて、「7」で立てたリソースの量が決まります。「採用・業務委託で必要な人員数」や「必要な予算」を確定させましょう。

このときに、採用するパートナー契約を結ぶか、といった選択をする場合が多いです。

11. 収支項目を書き出して、中期的な予算計画を策定する

「目標値」と「目標を達成するために必要なコスト」が判明したら、あらためて収支項目を書き出ましょう。「目標値の達成」をベースとして、損益計算書(PL)を作成します。損益分岐点が見やすいようにまとめることが必要です。

ここで必要な予算が導き出されます。よくあるのが、このタイミングで「目標値が現実的でないこと」に気付くパターンです。無理な数字を追うのは、得策ではありません。メンバーが疲弊して退職したり、のちのち予算の縮小になったりします。

あくまで現実的な数字を設定するように心がけましょう。会社側から目標値のクリアをもとめられた場合は、収益項目を増やす、値上げするなどして対応することが必要となります。

12. 効果検証の期間と手法を定める

新規事業の方向性が決まっても、いきなり本番でリリースするのはリスクが大きいです。そのためMVP(必要最小限の機能を搭載したプロダクト・サービス)をリリースして、顧客の反応を検証し、改善しましょう。これはPoCとも呼ばれるフェーズです。

例えばプロダクト開発の際に、いきなり本番並みの機能を開発すると、それだけで膨大な予算が必要となります。その後リリースした際に「顧客のニーズと合っておらずまったく購買されなかった」というケースもあります。すると膨大な開発費が無駄になります。これはサービス商材も同様です。

そのため、まずは必要最低限の商材をつくり、パイロット版などで顧客に使ってもらいましょう。

「MVPキャンバス」というフレームワークを使うことでつくるべきMVPを可視化でき、まわりに共有することもできます。以下の10項目をまとめながら、学習結果を得ましょう。

  1. 仮説
  2. 何を学ぶのか
  3. どのようにMVPで仮説を検証するのか
  4. 実証に必要なデータ・条件
  5. 何を作るのか
  6. MVP構築に必要なコスト
  7. 実証に必要な期間
  8. 回避できる/発生するリスク
  9. 結果
  10. 得た学び

13. 検証結果を踏まえて新規事業の方向性を修正する

効果検証の結果を踏まえて新規事業の方向性を修正します。

この際に重要なのは「顧客のフィードバックをバイアスなしで受け入れて改善すること」です。変更があった際は、ビジネスモデルキャンバスをあらためてまとめ直してアウトプットしましょう。

14. 新規事業をリリースする

最終的なビジネスモデルがまとまったら、新規事業のリリースとなります。事前に計画していた手法を使いつつ、進めていきましょう。

なお「施策」「オペレーション」「収支計画」などに関して、事前のプランがそのまま通用することはほぼありません。必ず、なにかしらの不具合が起こります。事前にリスクヘッジを考えておくことで、イレギュラーがあった際に柔軟に対応できます。

新規事業が軌道に乗るまでは、たいへんなことの連続です。しかし地道に「KPI」を追いつつ「不足している部分をどう補うか」「順調な部分を伸ばすことで補填できるか」などを考えながら、PDCAを繰り返していきましょう。

新規事業を作る際は「論理性」が大切

今回は「新規事業の作り方」についてご紹介しました。企業数が増えたいま「新規事業」はどの企業にも必要です。その際になんとなくでアイディアを出して、新しい事業をつくってしまうこともあるでしょう。

しかし、それではスムーズに事業をスタートできない可能性もあります。今回ご紹介したように、最初に「会社としてどうなりたいのか」「そのために何が足りないのか」という視点をもつことが重要です。また、フレームワークを用いて、ビジネスモデルの各要素を定義することで、メンバー間での共通言語ができ、スピードアップにつながります。

株式会社PENGINでは、BtoB企業のSEO・CVR向上施策といったWebマーケティングを支援できます。こうした企業の戦略に関して理解しつつ、マーケティングができますので、ぜひご依頼ください。