開発とテストを同時に進める開発モデルが「W字モデル」です。

モデルには、「V字モデル」など様々なものがありますが、一般的な認知度は低く、W字モデルのことを詳しく知らないという方も多いでしょう。

この記事ではシステムの開発にかかわっている方に、W字モデルの概要や導入するメリット・デメリット、成功させるポイントなどを解説しています。

今後プロジェクトを効率よく進めていきたいという方は、W字モデルを理解して、実際のプロジェクト現場で役立てください。

W字モデルとは?

W字モデルとは?

W字モデルとは、開発の初期段階から開発とテストを同時に進めていく開発モデルです。そのため、システム開発が一定まで進まなければテストを行うことができません。

テストエンジニアは開発工程中に仕様書に不備がないか確認したり、テストケースの準備などを行ったりするのが一般的です。

反対にテスト工程になれば、開発担当のエンジニア達はテストエンジニアと、コミュニケーションを取りながら、不具合や仕様書の不備などを修正などを行っています。

開発とテストを並走させる形でプロジェクトを進めるのがW字モデルの特徴です。W字モデルはイギリスの大手調査会社オーバムのポール・エルズリッシュ氏が1993年にロンドンで開催された「EuroSTARカンファレンス」で語ったものが起源とされています。

日本では、ドイツ・ブレーメン州立経済工科大学のアンドレアス・シュピルナー氏のモデルが注目され、2000年代半ば頃から注目されるようになりました。

参考:https://www.next-v.com/Blog/Detail/40016

V字モデルとの違いとは?

W字モデルとV字モデルの違いは「プロジェクトの進め方」です。

V字モデルとは、システムの定義・設計からリリースまでの開発・テスト工程の対応関係を表現しているモデルで、開発からテストというように工程ごとに進めていきます。

そのため、多少の違いあるものの、V字モデルはウォーターフォールモデルそのものだといわれています。ウォーターフォールモデルとは作業や工程ごとに検収していくモデルです。

各作業や工程ごとに品質を確認できることから、規模の大きい開発プロジェクトや品質が重視される日本の現場で多く採用されています。

V字モデルもウォーターフォールモデルと同様に開発を上流工程、テストを下流工程に分け、関係を明確にすることが可能です。工程の関係性を明確にすることで、各プロセスごとで確実に品質を確認することができ、テストの品質を保証することができます。

反対にW字モデルは開発とテストを同時に進めなければならない分、開発プロセス分だけテスト工程があり、V字モデルよりも工数が多くなっているのが特徴です。

ただし、W字モデルはV字モデルの問題点を解決するために誕生したモデルであり、V字モデルの発展型といわれています。そのため、全く別物というわけではありません。

V字モデルに関する詳しい内容は次のページも解説しています。

W字モデルにおけるメリット

W字モデルにおけるメリット

V字モデルとの違いを理解したけれど、W字モデルを活用するとどのようなメリットがあるのか気になる方も多いでしょう。

W字モデルのメリットは、下記の2つです。

  • 開発工程から品質の向上
  • コストダウンと工数削減

ここでは、W字モデルのメリットをそれぞれ詳しく解説します。

開発工程から品質の向上

テストエンジニアが、定義や設計などの開発工程からかかわるW字モデルを活用することで、開発段階から品質を向上させることができます。

開発工程からシステムを確認することで、エンジニアが気づいていない不具合を見つけることが可能だからです。

不具合が見つかれば、その時点で設計書や仕様書を再確認することができ、開発段階で設計書などの不備を発見・修正することが可能です。

従来ならば開発工程で見逃されていた問題を見つけられるため、開発段階から品質を向上させられます。

コストダウンと工数削減

W字モデルを上手に活用すれば、コストダウンと工数削減が可能です。

W字モデルは前述のとおり、開発プロセス分だけテスト工程が増えるため、プロジェクト工程上の工数はV字モデルよりも多くなります。

しかし、テストを開発と並走させることで開発の初期段階から不具合や設計・使用の矛盾などを見つけられるため、前述のとおり開発工程で品質を向上させることが可能です。

開発工程で品質を向上させることができれば、テスト工程で発見される不具合の数を減らせます。

不具合の数を減らすことができれば、作業の手戻りを減らせるため、滞りなくテストを進められるでしょう。結果、コストダウンと工数削減が可能です。

W字モデルにおけるデメリット

W字モデルにおけるデメリット

W字モデルを上手に活用することができれば、開発の時点で品質を向上させながらコストダウンや工数削減も可能です。

しかし、当然ながらメリットだけでなくデメリットも存在します。W字モデルの効果を最大限引き出すためには、デメリットも理解しておかなければなりません。

経験豊富なテストエンジニアの導入が必要

スキルや経験を持ったテストエンジニアがW字モデルには欠かせません。プロジェクトの終盤あたりで行われる最終テストは、基本的にシステムが実物としてある状態で行われます。

実際に操作しながら不具合をさかのぼることで定義や設計の問題を見つけられるため、経験が浅いテストエンジニアでも問題なく作業することが可能です。

しかし、上流工程からかかわる場合、システムが実物としていない状態つまり定義や設計の段階で問題を見つけ、エンジニアに意見を伝える必要があり、高度なスキルが求められます。そのため、経験の浅いテストエンジニアでは務まりません。

以上の点から、W字モデルを効率よく進めていくためには、スキルや経験を持ったテストエンジニアが欠かせません。

W字モデル成功のためのポイント

W字モデル成功のためのポイント

W字モデルは経験やスキルを持ったテストエンジニアが欠かせないため、V字モデルと比較すると難易度の高い開発モデルとなります。

難易度の高いW字モデルを成功させるためには、ポイントを押さえたうえでプロジェクトを進めることが大切です。W字モデルを成功させるためのポイントは、下記の2つです。

  • プロジェクト状況をしっかりと把握しておく
  • テストエンジニアがしっかりと上流工程にかかわる

ここでは、W字モデルを成功させるためのポイントをそれぞれ解説します。

プロジェクト状況をしっかりと把握しておく

W字モデルの導入で失敗しやすいのが、プロジェクト状況を把握せずにW字モデルを導入することです。

V字モデルを上手に進められていない状況で、W字モデルを導入しても開発は上手くいきません。現状の問題点や今後の課題点などをしっかりと洗い出し、各工程のプロセスを見直すことが大切です。

プロジェクト状況を把握しプロセスの見直しを図った後、それでもモデルチェンジが必要だと判断した場合にW字モデルの導入を検討してください。

テストエンジニアがしっかりと開発にかかわる

テストエンジニアが開発の初期段階からしっかりとかかわり、開発チームと連携を深めていくことも、W字モデルを成功させるために押さえておくべきポイントです。

そうすることで、開発段階からテストの仕様書や課題を盛り込むことができ、その過程で設計書の不備を発見できます。

つまり、テストエンジニアがしっかりとプロジェクトにかかわることで、問題点を早期に解決でき、その後のプロジェクトの進行度を加速させることが可能です。

W字モデルを成功させるためにも、これらのポイントをしっかりと押さえておきましょう。

【まとめ】W字モデルとV字モデルを理解しよう

【まとめ】W字モデルとV字モデルを理解しよう

開発とテストを同時に進められるW字モデルであれば、設計段階から仕様書の問題点発見できるため、その後の開発やテスト工程を効率よく進められます。

しかし、プロジェクトの進行にかかわるデメリットも存在するため、W字モデルを導入する際はしっかりとポイントを押さえておかなければなりません。本記事のポイントは、下記のとおりです。

  1. W字モデルは開発とテストを同時並行でプロジェクトを進める開発モデル
  2. V字モデルは開発からテストいうように順に沿ってプロジェクトを進める開発モデル
  3. W字モデルを成功させるためにはテストエンジニアのスキルと積極性が大切

W字モデルは設計段階からテストエンジニアがかかわるため、仕様書の問題点を早期に見つけることができます。

仕様書の問題点を初期段階から見つけることで、上流工程から品質を向上させてテスト工程の負担を抑えることができ、プロジェクトのコストダウンと工数削減が可能です。

しかし、設計段階から問題点を見つけるためには、経験やスキルを持ったテストエンジニアが欠かせないため、V字モデルと比較すると難易度の高い開発モデルといえるでしょう。

テストエンジニアのスキルや開発状況次第ではW字モデルを成功させられない場合もあります。W字モデルとV字モデルの特徴を理解したうえで、最適な開発モデルを導入することが大切です。