ソフトウェアテストを効率よく進めるためには、目的やプロセス定義などの項目において明確にしたテスト設計仕様書が必要です。テスト設計仕様書は誰が見ても明確にすることが求められます。

プロジェクトは一般的にチームで行うため、誰が見てもわかる内容でなければ業務効率化にはつながりません。この記事では、テスト設計書を作成する方法や記載するべきソフトウェアテストの項目について説明していきます。

テスト設計仕様書とは何?

テスト設計仕様書とは何?

テスト設計仕様書とは、テスト基本設計プロセスの成果物でありどの部分をどのような内容でテストするのかを明確にすることが目的です。このため、テスト設計仕様書はテストの骨格や指針を定めています。

テスト設計仕様書は他にも、プロセスの定義やテストアプローチ、テスト環境などがあり、テストプロジェクトによって異なる変更や追加部分を詳しく説明している点が特徴です。

テスト計画書との違い

テスト計画書は、テストの目的やスケジュール、範囲、テストのゴールなどテストに関する要件が記載されています。そのため、テストをするための技法をはじめとした詳しいテスト内容は書かれていません。このような詳しい内容はテスト仕様書に記載します。

テストケースとの違い

テストケースとは、実際にテストを進めるために必要となる条件や期待される内容について記したものです。テストケースはテスト仕様書に書かれているテスト方法が基準となっています。

テスト設計仕様書に記載すべき7つの項目

テスト設計仕様書に記載すべき7つの項目

テスト設計仕様書に記載すべき点として次の7つの項目が挙げられます。

  • 目的・背景・重要項目
  • プロセス定義
  • テストアプローチ
  • 対象機能(要素)の一覧
  • テスト観点の一覧
  • 項目に応じた重要度
  • テストの環境や機材

1.目的・背景・重要項目

テスト設計仕様書はテストの目的は重要項目、目的などを整理します。テスト計画書で書かれている内容ですが、再度確認する目的があるのです。

この時点で重要なのは、機能や仕様書と同じ内容だけでテストするのではなく、プロジェクトにおける状況や要望などを反映させて指針を定めることが大切です。

2.プロセス定義

テスト設計仕様書は、テスト設計工程の手順を定義します。テストの工程はそれぞれプロジェクトによって異なる場合があり、文書ではっきりと明確化することがテスト設計仕様書において必要です。

テストの流れを明確化することによって、プロジェクトのテストに新しいメンバーが入ってもスムーズにテストを継続できます。

3.テストアプローチ

テスト設計仕様書では、どの部分をどのようにテストするのかを明確にすることが重要です。テストの対象や観点を一覧で記載することが一般的です。

4.対象機能(要素)の一覧

テスト設計仕様書には、テストの一環として対象機能を一覧で記載することが一般的です。機能ではなく、状態単位や画面単位、また概念的に分ける場合もあります。

テストによって異なるため、それぞれのテストにおいて対象を明確にしましょう。適切にどの部分をテストするのかを明確にすることによって、テストをスムーズに実施できるようにすることが目的です。

ソフトウェアは一般的に画面やモジュールなどが含まれる機能やサブシステムなどといった形で分割されています。あまりに細かく分けすぎるとテストの内容がわかりづらくなるため、テストしやすい規模で分けることが重要です。

5.テスト観点の一覧

テスト設計仕様書においてテスト観点における一覧を記載することが求められます。

テスト観点とは、テストの内容をテスト設計仕様書に明確に記載することです。画面のレイアウトや入力可能文字数などはテスト観点に含まれます。

6.項目に応じた重要度

テスト設計仕様書に記載する項目に応じた重要度とは、テスト観点や対象となる機能のうち重要度を設定することです。重要度を明確にすることで、テストの重点項目がわかりやすくなります。

テストを計画するプロセスにおいて重要度を決定することが一般的ですが、検討を進めていくうちに見直すべき可能性があります。状況によってはテスト計画から検討しなおす必要があるのです。

7. テストの環境や機材

テスト設計仕様書にはテストの環境や機材を記載する必要があります。実施段階において機材の数が十分でないといったことを防ぎます。

ほかにも、事前に動作確認をしたりテスト環境の設定をしたりなどテストをおこなうにはさまざまな準備が必要です。テスト設計仕様書には準備内容を明記することが一般的です。

テスト設計仕様書を作成する4つのメリット

テスト設計仕様書を作成する4つのメリット

テスト設計仕様書を作成すると次の4つのメリットが挙げられます。

  • テスト設計の統制を図れる
  • テスト実施の効率化を図れる
  • ステークホルダーと情報を共有できる
  • リリース後の開発資産として活用できる

1.テスト設計の統制を図れる

テスト設計仕様書を作成するとテスト設計の統制を図れます。テストプロジェクトは一般的にチームを組んで進めていきます。そのため、テスト設計がばらばらな状態だと方針がずれてしまう可能性があります。

そこで、テスト設計仕様書があることでテスト方針を明確にできるのです。さらに、設計作業を始めた後でも、テスト設計仕様書は開発仕様書とテストケースとのトレーサビリティをとるための資料として利用できます。

2.テスト実施の効率化を図れる

テスト設計仕様書を作成するとテスト実施の効率化を図れます。テスト設計仕様書を活用することでテストの目的や方向性が明確になり、スムーズにテストを進められるためです。

3.ステークホルダーと情報を共有できる

テスト設計仕様書を作成するとステークホルダーと情報を共有できます。そのため、ステークホルダーがどのようなテストを行っているのか判断しやすくなるのです。

4.リリース後の開発資産として活用できる

テスト設計仕様書を作成するとリリース後の開発資産として活用できます。

リリースした後に保守作業を行う場合、テストケースのどの部分を流用すればいいのか判断するための材料となります。テスト設計書でテスト全体を把握することにより、スムーズな派生開発や保守作業をしやすくなるのです。

良いテスト設計仕様書を作成するための4つのコツ

良いテスト設計仕様書を作成するための4つのコツ

良いテスト設計仕様書を作成するためには、次の4つのコツが挙げられます。

  • 表現の一つひとつに注釈をつける
  • テスト観点がまとまった時点でレビューする
  • テストすべき機能を事前に洗い出す
  • テストの道筋をわかりやすく示す

1.表現の一つひとつに注釈をつける

テストをするエンジニアがテスト観点を見て、どのようなテストケースを作るのかわからないようではテスト仕様書としての役割を果たしていません。

そのため、表現の一つひとつに注釈をつけることで、誰が見てもスムーズにイメージできることが重要です。パラメータや条件、数値などの項目を明確にすることが求められます。

2.テスト観点がまとまった時点でレビューする

テスト観点がまとまった時点で、要件定義書作成者にレビューをしてもらいましょう。レビューをしてもらうのは、テスト観点の漏れの防止やソフトウェアやシステムの品質向上が目的です。

レビューは必ずテストケースを作る前にしてもらいましょう。テスト観点の漏れ防止につながります。

3.テストすべき機能を事前に洗い出す

テスト設計ではテストケースの漏れを防ぐことが必要です。

過去に似たようなケースのソフトウェアのテストをした場合、理解していると勘違いしていることからテストケースの漏れが発生する場合があります。テストケースの漏れがないかどうか十分に確認しましょう。

4.テストの道筋をわかりやすく示す

テスト観点においてテストの道杉を明確に示すようにしましょう。

テストケースはテスト観点を基準として進めるため、テストの道筋が明確でなければどのようなテストをするのかエンジニアが理解できない場合があります。中にはテストをするだけのエンジニアもいるため、誰が見てもわかりやすいテスト仕様書を作成することが重要です。

ソフトウェアテスト設計・仕様書でよくある2つの質問

ソフトウェアテスト設計・仕様書でよくある2つの質問

ソフトウェアテスト設計・仕様書においてよくある次の質問を紹介します。

  • テスト設計仕様書を作成する際の注意点はありますか?
  • だめな設計仕様書の共通点はありますか?

質問1.テスト設計仕様書を作成する際の注意点はありますか?

テスト設計仕様書の内容によって、テスト設計のプロセス全体の品質に影響があると考えてください。そのため、具体的にどのようなテストをするのかを明確にして具体的に文章化するのです。

また、誰にでもわかりやすく分類し記載することが大切です。開発プロセスにおいてさまざまな担当者が参加しており、誰が見ても理解しやすいことが求められます。この点はテスト設計仕様書だけでなく、他の書類においても同じです。

質問2.だめな設計仕様書の共通点はありますか?

設計仕様書を作る上で次のようなものは避けることが重要です。

  • テスト観点が抜けている
  • テスト観点の説明が曖昧
  • テスト観点が目的とずれている

設計仕様書はテスト観点が漏れていたり目的とずれていたりしてはいけません。また、内容がしっかりとしたものでも説明が曖昧であれば、各担当者に伝わりづらくなります。目的とあったテスト観点が含まれており、なおかつ明確に表現することが大切です。

まとめ

まとめ

ソフトウェアテストをスムーズに進めるためには、テスト設計仕様書を作成することが一般的です。

テスト設計仕様書にはソフトウェアテストに必要な項目は全て含まれており、プロジェクトチームの誰が見てもテストの目的や内容などを把握できます。このため、テスト設計仕様書を作ることで効率的にソフトウェアテストを進められます。