製造業のマーケティングは、デジタル化の進展により大きく変化しています。
従来の展示会や訪問営業中心の手法から、WebサイトやSNSを活用したデジタルマーケティングへとシフトする企業が増えているのが実情です。
実際に「どのようなマーケティング手法が効果的なのか」「他社はどのような施策で成果を上げているのか」と悩んでいる製造業の方も多いのではないでしょうか。
本記事では、製造業15社のマーケティング成功事例を紹介し、さらにBtoBマーケティング大賞2024を受賞した企業の取り組みも合わせて解説します。
各社の具体的な施策と成果を通じて、製造業に適したマーケティング手法を探っていきましょう。
製造業のマーケティング事例15選
まずは製造業でマーケティングを成功させている企業事例をご紹介します。
コロナ禍での展示会中止を機にデジタルマーケティングを導入したケースや
Webサイトリニューアルで成果をあげた事例など、参考になる取り組みを行っている企業を厳選しました。
株式会社キーエンス

最初にご紹介するのは、センサーや測定器、画像処理機器などを製造している株式会社キーエンスで、Webサイトを活用した効果的なリード獲得で成果を上げた事例です。
同社は専門性の高いホワイトペーパーをWebサイトに掲載し、メールマガジンで定期的な情報配信を行っています。
また、問合せフォームから得られた顧客情報を詳細に分析することで、見込み度の高い企業を見極めている点がポイントです。
この施策により、Web経由での見込み客が大幅に増加しました。
とくにホワイトペーパーをダウンロードした企業の中から、質の高いリードを獲得することに成功しています。
ダウンロード履歴などの分析データを営業活動に活用し、新規顧客の開拓にもつなげています。
荒川技研株式会社

荒川技研株式会社は、Webサイトのリニューアルを通じて大きな成果を上げています。
同社は樹脂製造を専門とする企業で、とくに樹脂加工に特化した専門的なコンテンツを充実させるため、Webサイトを全面的にリニューアルしました。
アクセス解析に基づいて継続的な改善を行い、ユーザビリティの向上に努めています。
その結果、問合せ数が大幅に増加し、取引社数の拡大にも成功しています。
特筆すべきは、これまでアプローチできていなかった異業種からの引き合いも獲得できるようになったことです。
技術情報をわかりやすく解説したコンテンツが、新規顧客の開拓に大きく貢献しています。
株式会社山田製作所

自動車部品や半導体部品などの精密樹脂加工を手掛ける株式会社山田製作所は、材料に関する専門的な情報発信で成果を上げています。
同社は、材料に関する詳細なホワイトペーパーを作成し、Webサイトで提供しました。
資料のダウンロード後は丁寧なフォローを心がけ、技術的な質問にも対応することで長期的な関係構築を重視しています。
この取り組みにより、同社の技術力の高さを効果的にアピールすることに成功しました。
さらに、資料ダウンロード後の丁寧なフォローを通じて見込み顧客と信頼関係を築き、将来的な成約につながるケースが増えています。
株式会社共栄精機

精密板金加工を手掛ける株式会社共栄精機は、Webサイトのリニューアルに際して、近隣エリアでの認知度向上を重視した戦略を展開しています。
地域性を重視したキーワードでのコンテンツ制作と、地元企業のニーズに応える情報発信で大きな成果を上げました。
地域に特化したキーワードを意識的に使用し、地元企業の課題解決につながる情報を積極的に発信しています。
この施策により、現在では売上の8割がWebサイトからの問合せとなっています。
地域密着型のコンテンツ戦略が、確実な受注につながっている事例です。
株式会社サイトウ工機

歯車製図を手掛ける株式会社サイトウ工機は、Webサイトの全面リニューアルとSEOの徹底により、新規問合せの獲得に成功しています。
同社は、コンセプトを一から見直し、顧客目線での情報提供を重視したサイトを構築。技術力や製品の特徴をわかりやすく伝えることに注力しました。
その結果、以前はほとんどなかった問合せが、月5~10件程度まで増加し、新規顧客の開拓につながっています。
株式会社クラレ

コロナ禍でオフライン展示会が中止になったことを機に、オンライン展示会への転換を図り大きな成果を上げた事例です。
高機能樹脂や繊維製品を製造する株式会社クラレは、デジタルツールを活用した展示会を開催し、製品情報やセミナーをオンラインにて実施することで時間や場所に制約がない情報発信を行いました。
この施策により、7,000件以上の資料請求を獲得。従来の展示会以上の成果を上げることに成功しています。
株式会社神戸製鋼所

鉄鋼アルミや素材形成の製造、機械や電力などの幅広い事業を展開する株式会社神戸製鋼所は、特定の商材に焦点をあてたデジタルマーケティングを展開し、新規顧客の開拓に成功しています。
同社は、「PVDコーティング装置」に特化したマーケティング施策を実施し、まずは一つの商材で成功事例を創り、その後他の製品を横展開していく戦略を採用しました。
この取り組みにより、目標を上回るリード獲得を達成。とくに、これまで接点のなかった企業からもコンテンツを通じた問合せが増加し、新たな商機の創出につながっています。
三井化学株式会社

三井化学株式会社は、技術資料の効果的な活用により、見込み客の獲得に成功しています。
多種多様なプラスチック原料を提供する同社は、Webサイト内に「安全データシート」という専門的な資料を掲載しています。
製品の安全性や使用方法に関する詳細情報を提供することで、具体的な製品検討段階にある企業からの問合せ獲得を目指しました。
この施策により、問合せフォームを通じて質の高い見込み客の獲得に成功し、製品に関する具体的な相談や見積もり依頼などが増加しています。
株式会社アドレック

株式会社アドレックは、コロナ禍で展示イベントへの出展が難しくなったことを契機に、デジタルマーケティングを本格的に導入し、売上維持に成功しています。
トルクレンチメーカーである同社は、Webサイトのリニューアルとコンテンツマーケティングに注力し、製品の特徴や技術情報をわかりやすく解説したコンテンツを定期的に発信しました。
この取り組みにより、サイトのアクセス数が大幅に増加し、問合せ件数も上昇。結果として、展示会開催時と同等の売上を維持することに成功しています。
日本化工食品株式会社

粉末調味料などを製造・販売する日本化工食品株式会社は、サンプル請求に特化したページの充実により、問合せ数の増加を実現しています。
Webサイトのリニューアルに際して「サンプル請求」という新たな問合せ種別を追加し、製品サンプルの掲載ページを充実させ、顧客に視覚的な訴求ができる仕様にしました。
この施策により、Web経由の問合せ数が増加しています。
とくにサンプル請求から商談につながるケースが増え、新規取引の開拓に効果を上げた事例です。
旭製粉株式会社

小麦粉やミックス粉の製造を行う旭製粉株式会社は、メールマガジンでの情報発信と顧客データの効果的な活用により、営業機会の創出に成功しています。
幅広い製品提案ができることを周知するためメルマガ配信を開始し、反応した顧客情報をマーケティングオートメーションツールに蓄積しながら効率的なフォローを実現しました。
この取り組みにより、問合せ数が増加しています。
とくに新商品に関する情報発信後の反応が良く、具体的な商談につながるケースが増えています。
株式会社フコク

株式会社フコクは、企業の魅力を視覚的に伝えるWebサイトリニューアルで、受注と採用の両面で成果を上げています。
工業用ゴム製品の製造・販売を行う同社は、従業員が実際に働いている様子を画像で多用したWebサイトを制作し、製品情報だけでなく、企業としての強みや社風も伝わるコンテンツ作りに注力しました。
この施策により、製品に関する問合せが増加しただけでなく、採用面での反響も得られています。
企業の実態が伝わるサイト作りが、多面的な成果につながっている事例です。
東日本塗料株式会社

建築用塗料を開発・製造する東日本塗料株式会社は、更新しやすいツールの導入とSEOの実施により、サイトへの集客増加を実現しています。
同社は、更新が滞っていたWebサイトに簡単に情報を追加できるツールを導入しました。
同時にSEOも実施し、定期的な情報更新と検索エンジンでの露出向上を図っています。
さらに、メールマガジンの配信も開始し、継続的な情報発信を行っています。
この取り組みにより、サイトの閲覧数は300%、問合せも15%になり、新規顧客とのコンタクト機会が広がりました。
株式会社トヨックス

ホースと継手を製造する株式会社トヨックスは、顧客管理とマーケティングオートメーションの効果的な活用で、商品の売上を大幅に伸ばしています。
CRM(顧客管理ツール)を導入して顧客情報を一元管理し、そこから抽出した顧客ベネフィットをもとに、MA(マーケティングオートメーション)ツールを活用した情報発信の仕組みを構築しました。
この施策により、顧客ニーズに合わせた効果的な情報提供が可能になり、特定商品の売上は3倍に増加。データに基づいたマーケティング活動が、具体的な成果につながっています。
株式会社スペック・ジャパン

マグネットポンプのメーカーである株式会社スペック・ジャパンは、業界で役立つ実用的な情報発信と、製品検討段階に応じたコンテンツ提供で成果を上げています。
Webサイトのリニューアルを機に「具体的なポンプ名を挙げた専門的な情報」から「製品の仕様が決まっていない人向けの基礎知識」まで、幅広いコンテンツで情報発信を行いました。
この取り組みにより、Webサイトからの問合せ数が増加。業界内での認知度も向上し、ブランド価値の向上にもつながっています。
さらに、このような製造業のマーケティング活動への注目度の高まりを示す出来事として、2024年には「日経クロストレンド BtoBマーケティング大賞」が初開催されました。
「BtoBマーケ大賞2024」に選ばれた製造業の成功事例
日経クロストレンドが開催したBtoBマーケティングに特化した表彰制度「BtoBマーケティング大賞」は、革新的なマーケティング活動を行い、顕著な成果を上げた企業を表彰するものです。
約80社の応募の中から、とくに優れた成果をおさめた企業が選出されました。
ここでは、受賞企業の中から製造業3社の事例を紹介しますので参考にしてください。
出典:お知らせ|日経BP
山洋電気株式会社

ファンやモーターを製造・販売する山洋電気株式会社は「プロセス部門」の部門賞を受賞しました。
同社は、デジタルマーケティングを活用した資料ダウンロードの導線設計で、大きな成果を上げています。
同社は、製品情報や技術資料をダウンロードできる仕組みを整備しました。
さらに、ダウンロードに至るまでの導線を最適化し、効率的なコンバージョンの獲得を目指しています。
この施策により、資料ダウンロード数は従来の8~10倍に増加し、質の高い見込み客の獲得につながっています。
株式会社コプレック

精密板金加工を専門とする町工場である株式会社コプレックは、「ピープル部門(人材と組織)賞」の大賞に選ばれています。
同社は、リブランディングを通じた企業価値の向上により、急成長を実現しています。
新工場の建設を機に企業イメージを刷新し、技術力の高さと、地域に根差した企業としての魅力を効果的に発信することで、新たな顧客層の開拓に成功しました。
この取り組みにより、従来の3.5倍の受注増を達成しています。
町工場ならではの強みを活かしたブランディングが、具体的な成果を生み出しています。
雪ヶ谷化学工業株式会社

化粧品用スポンジ「ユキロン」シリーズをはじめとする特殊発泡体の製造・販売を行う雪ヶ谷化学工業株式会社は「審査員特別賞」に選ばれました。
同社は、SDGs(持続可能な開発目標)への積極的な取り組みが評価され第7回「ジャパンSDGsアワード」でも受賞しています。
SDGsの取組みは、ブランドイメージのアップにつながるマーケティング施策の一つです。
雪ヶ谷化学工業は、ジャパンSDGsアワードの受賞によってブランドイメージ、企業認知度を向上させています。
製造業におけるマーケティングの課題
製造業のマーケティングでは、デジタル化への対応や新規顧客の開拓など、いくつかの課題があります。
多くの製造業では、従来の展示会や訪問営業中心の営業スタイルからの転換を迫られているのが実情です。
とくに大きな課題として挙げられるのが、以下2つです。
- 新規顧客へのアプローチの難しさ
- マーケティング知識を持つ人材の不足
多くの製造業では、既存の取引先からの受注が中心であり、営業方法もパターン化しがちです。
昔からの付き合いを大切にする企業文化は素晴らしいですが、新規開拓の障壁となることがあります。
また、マーケティング担当者が他の部門と兼任していたり、そもそもマーケティングの専門知識を持つ人材が少なかったりする点も課題です。
この課題に対しては、社内での人材育成や外部への業務委託といった対応が考えられるでしょう。
以下の記事では、課題に対する具体的な解決策や効果的なアプローチ方法について詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
内部リンク:コンテンツマーケティング 製造業”
製造業に適したマーケティングの種類6選
製造業にとくに効果的なマーケティング手法は、以下の6つがあります。
- デジタルマーケティング
- Webマーケティング
- SNSマーケティング
- 動画マーケティング
- コンテンツマーケティング
- リアルマーケティング
それぞれの特徴と活用方法を以下で解説します。
デジタルマーケティング
デジタルマーケティングとは、Webサイトやアプリ、動画配信、SNSなどのデジタルツールを活用したマーケティング手法のことです。
製造業では特に、製品情報のデジタル化や技術資料のオンライン提供が効果を発揮しています。
デジタルツールを活用すれば、時間や場所の制約なく情報発信が可能になり、新規顧客との接点を増やせるでしょう。
以下の記事でも、詳しく解説しているので参考にしてください。
Webマーケティング
デジタルマーケティングの中でもとくにWebサイトを中心とした活動に焦点をあてた手法です。
SEOや使いやすいサイト設計により、自社Webサイトへの集客を増やし、問合せの獲得につなげます。
とくに技術情報や製品仕様など、専門的な情報のニーズが高い製造業では、Webサイトを通じた情報提供が重要な役割を果たします。
SNSマーケティング
InstagramやXなどのSNSを活用して、企業や製品の情報を発信するマーケティング手法です。
技術情報の発信や企業としての取り組みを紹介すれば、BtoB向けに効率的な情報を発信できます。
また、企業の雰囲気や社風をSNSで発信することで、採用活動にもつながります。
動画マーケティング
動画マーケティングは、製品の特徴や使用方法、製造工程などを動画でわかりやすく伝える手法です。
YouTubeやTikTokのショート動画を活用すれば、文字や写真だけでは伝わりにくい製品の動きや性能を効果的にアピールできます。
SNSマーケティングと連携して展開すれば、より効果的に情報発信ができるでしょう。
コンテンツマーケティング
有益なコンテンツをユーザーに提供し、ファンを増やすマーケティング手法です。
製造業では、技術資料やホワイトペーパー、事例集などが重要なコンテンツとなります。
コンテンツマーケティングの配信媒体は、デジタルに限らず印刷物など自由に選択できます。
以下の記事でも、コンテンツマーケティングについて詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
リアルマーケティング
展示会やイベント、工場見学など、実際の場での体験を重視したマーケティング手法です。
オンラインでの情報発信が主流となっている現在でも、製品を実際に見て触れる機会は依然として重要です。
とくに製造業では、製品の品質や技術力を直接感じてもらえ、信頼関係の構築に大きく貢献します。
また、顧客の生の声を聞ける貴重な機会としても活用できる方法です。
これらの6つのマーケティング手法は、それぞれ単独でも効果を発揮しますが、複数の手法を組み合わせると、より大きな成果につながります。
製造業がマーケティングを成功させる3つのポイント
製造業がマーケティングを成功させるには、以下3つのポイントを抑えておくとよいでしょう。
- ユーザーが求めている情報を分析する
- 自社ならではの強みをアピールする
- データ活用による効果測定と改善を繰り返す
順に解説していきます。
ユーザーが求めている情報の分析をする
まず、マーケティングを成功させるためには、ユーザーが求めている情報の分析が不可欠です。
そのためには、ターゲットを明確にしましょう。
とくに製造業では、特定の企業にアプローチする「アカウントベースドマーケティング(ABM)」が効果的です。
ターゲット企業のニーズや課題をもとに戦略を立て、それに合わせたコンテンツを提供する必要があります。
たとえば、技術的な課題を抱える企業には「詳細な技術資料」を、新規参入を検討している企業には「基礎的な情報」を提供するなど、状況に応じた情報発信が求められるでしょう。
自社ならではの強みをアピールする
競合他社との差別化を図り、マーケティングを成功させるためには、自社の独自性を打ち出す必要があります。
製品の特徴や技術力だけでなく、対応力の高さや納期の正確さなど、自社だからこその付加価値を具体的に示せば、競合他社と差別化を図れるでしょう。
強みをアピールする際は、具体的な数値や事例を交えてわかりやすく伝えるのが効果的です。
データ活用による効果測定と改善を繰り返す
マーケティング活動では、継続的な改善が成功のカギを握っています。
効果測定と改善は以下のステップで実施するのが一般的です。
- 具体的な目標を設定する
- アクセス数や問合せ数等のデータを収集する
- 収集したデータから傾向や課題を分析する
- 分析結果をレポートに整理する
- 目標達成度を確認するために効果測定を実施する
- 結果をもとに施策を改善する
このサイクルを繰り返せば、より効果的にマーケティング施策を実行できるでしょう。
まとめ
本記事で紹介した事例を見てもわかるように、製造業のマーケティングは大きく変化しています。
デジタル技術の活用や、コンテンツマーケティングの導入など、新しい手法を取り入れることで成果を上げている企業も増えているのが実情です。
重要なのは、自社の強みを活かしながら顧客のニーズに合わせた情報を発信することです。
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