ソフトウェアテストは、アプリケーションなどをリリースする前段階で欠かせない工程です。しかし、適切なテスト環境の構築には多くのリソースが欠かせません。

この記事では、自動テストツールのメリットやデメリット、導入手順について解説します。併せて、おすすめツールについても16種類ピックアップしてご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

自動テストツールとは?

自動テストツールとは?

ソフトウェアテストは、不具合がある製品をリリースしないように、問題を発見・修正するための作業です。人手で行うことが一般的ですが、自動テストツールを利用することによって、効率的に不具合の有無を確認できるようになります。

自動テストツールにはあらゆる種類のものがあり、ソフトウェアや目的に応じて使い分けると、テストの時短や不具合の早期発見が期待できるでしょう。

自動テストツールを使う5つのメリット

自動テストツールを使う5つのメリット

自動テストツールを使うメリットには、以下の5つが挙げられます。

  1. コストを抑えられる
  2. 不具合の早期発見につながる
  3. 人手がかからない
  4. テストの短時間化
  5. ヒューマンエラーの排除

ここではそれぞれに分けて解説しますので、詳しく見ていきましょう。

1.コストを抑えられる

手作業でテストをすることは、大きな労力とコストが必要です。そのため、品質保証の範囲を限定することが増えています。

しかし、テストが不十分だった場合は、システム障害や不具合が発生することもよくある話です。

自動テストツールを使用することで、コストを抑えながら品質向上を期待できます。また、手作業でテストする部分とツールを使用する範囲を分けるような運用方法も可能です。

2.不具合の早期発見につながる

自動テストツールを使用することにより、不具合の早期発見を期待できます。最適な自動テスト環境を構築することで、短いスパンでテストができるようになり、その結果として不具合を早期発見できるようになります。

さらに、不具合を早期に見つけられると、業務上の無駄や無理を取り除くことにもつながり、効率的な開発環境の整備にも期待できるでしょう。

3.人手がかからない

自動テストツールを導入すると、テストの実行に人手がかかりません。システムがコード通りにテストしてくれるため、もしも、リソースが不足した場合においてもテストを実行できます。

さらに、手動テストでは予算やリソースの都合で実現が難しい大規模テストや、大量のデータ比較などについても取り組むことができるでしょう。

4.テストの短時間化

自動テストツールを導入することで、テストの短時間化と正確性を担保することができます。また、浮いたリソースで異なる作業に取り組むことも可能です。テスト自体の短時間化に留まらず、全体の効率化を期待できます。

しかし、テストの実行速度については、内容や使用するツールによって大きく変化することに注意しましょう。

5.ヒューマンエラーの排除

人が行うテストには、ヒューマンエラーがつきものです。しかし、自動テストツールを導入した場合、システムがエラーの有無を判断するようになるため、ヒューマンエラーを排除できます。

しかし、自動テストを実行した場合、コードに記載された内容でしかテストできません。この点に留意したうえで自動テストツールを使うようにしましょう。

自動テストツールを使う4つのデメリット

自動テストツールを使う4つのデメリット

自動テストツールを使うデメリットには、以下の4つが挙げられます。

  1. 初期コストが高い
  2. 保守運用が欠かせない
  3. 自動化が最適な手段ではないことがある
  4. コードに従ったテストしか行えない

ここではそれぞれに分けて解説しますので、詳しく見ていきましょう。

1.初期コストが高い

自動テストツールを使用するには、テストコード作成のための学習が必要です。このほかにも、初期段階ではあらゆるコストが発生します。

テストの対象や実行頻度、自動テストに求める効果などを総合的に判断して導入しなければなりません。これらの点を加味せずに導入してしまうと、投じたコストに対して不釣り合いなリターンしか得られないおそれがあります。

2.保守運用が欠かせない

自動テストは、導入してもすぐに効率化が期待できるものではありません。長期間、保守運用することで費用対効果が高まります。

そのためには、自動化したテストの保守が必要となり、メンテナンスを行うリソースの確保も欠かせません。また、具体的に発生する保守作業としては、テストコードの修正や機能の追加などが挙げられます。

3.自動化が最適な手段ではないことがある

自動化には、あらゆるコストが発生します。そのため、自動化が適していない場合も考えられるでしょう。たとえば、繰り返し実行する必要がないテストは、自動化には適しておらず、手動で行う方が効率的だといえます。

また、テスト対象のソフトウェアが自動テストを想定していなければ、上手く実行されないおそれもあるでしょう。

4.コードに従ったテストしか行えない

自動テストツールを使用する場合、事前に設計したテストコードに従ったテストしかできません。たとえば、テスト画面のレイアウトが崩れ・仕様と異なる項目が表示されていたとしても、自動テストの確認対象に含んでいなければ、問題を検出することは不可能です。

つまり、事前に起こりうる不具合を予測し、自動テストで発見できるようにテストコードに反映させる必要があります。

自動テストツールを導入する3つの手順

自動テストツールを導入する3つの手順

自動テストツールを導入する手順は、以下の通りです。

  1. 目標設定
  2. 対象範囲を決める
  3. ツールを選ぶ

導入する前に自動化の目的について考え、目標を設定します。自動化することによって得られる効果や削減できるリソースなどから費用対効果に合うかを判断しましょう。

また、対象範囲を定めておくことも必要です。自動化の目的を元に、対象や範囲を絞り込みます。

最後に実装するツールを選びましょう。コスト面はもちろん、既存ツールと連携できるのかについても選定ポイントです。

自動化ツールには、トライアル期間が設けられているものもあるため、実際に試してみることもおすすめします。

おすすめ自動テストツール16選

ここではおすすめの自動テストツールを紹介します。

1.UiPath Test Suite

UiPath Test Suite

引用:UiPath Test Manager – テスト自動化ソフトウェア

UiPath Test Suiteは、世界中で利用されているRPAツール「UiPath」を自動テストに採用した、ソフトウェアテスト用プラットフォームです。RPAの技術メリットを活かすことにより、これまでのツールでは解決できなかった課題の解消を期待できます。

あらゆるソフトウェアのテストに加えて、基幹となるシステムやWebサイトなどのテストにも応用可能です。また、常時ソースコードと同期しているため、メンテナンスコストも最小限に抑えられるでしょう。

2.Autify

Autify

引用:Autify(オーティファイ), AIを用いたソフトウェアテスト自動化プラットフォーム

Autifyは、ノーコードでテストシナリオの作成ができる自動テストツールです。ノーコードで簡単にシナリオを作成・修正できるため、プログラミングの知識がなくても視覚的に自動化に取り組むことができます。

そのため、E2Eテストをスピーディーに自動化することが期待できるでしょう。注意点としては、公式サイト上には初期費用やランニングコストが明記されていないため、別途問い合わせる必要があります。

3.T-DASH

T-DASH

引用:T-DASH

T-DASHは、Webアプリケーションの動作確認から検証までできるテスト自動化ツールです。コードを書かずに簡単に動作確認・検証ができるため、非エンジニアでも活用できます。

また、テストの自動実行やテストケースの作成などの基本機能の利用は無料となっており、初めてテスト自動化ツールを使う人にとっても、取り入れやすいものだといえるでしょう。

4.MagicPod

MagicPod

引用:MagicPod

MagicPodは、Webアプリやスマホアプリのテストができるテスト自動化ツールです。エンジニアが必要な機能が実装されながら、非エンジニアでも使いやすいUIが特徴といえ、AIが日本語スクリプト作成のサポートをしてくれます。

また、クラウドやブラウザ上から操作できるため、どこからでもテストを行うことが可能です。

5.Selenium

Selenium

引用:Selenium

Seleniumは、オープンソースフレームワークとなり、UIテストで使用できるテスト自動化ツールです。無料で利用できますが、テストはコーディングが欠かせません。

オープンソースのツールを上手に活用するには、知識が必要な点に注意してください。この点だけ、クリアできれば、学習コストを抑えながらあらゆるプラットフォームに対応したツールを使いこなすことができます。

6.mabl

mabl

引用:アジャイルチームのためのインテリジェントなテスト自動化ソリューション | mabl

mablは、ローコードが採用された拡張性が高いテスト自動化ツールです。左上メニューの「挿入」から「ラベル」を選択することにより、簡単に補足説明を追加できます。

また、繰り返し処理のような複雑な分岐処理においても、プログラムの記述が必要なく、簡単に実装できることも特徴です。さらに、AIによるテスト自動修復も備えられており、低い運用コストで使うことができます。

7.Postman

Postman

引用:Postman

Postmanとは、APIを開発・テストできるプラットフォームです。設計からテスト、ドキュメント、APIの共有まで、テストの自動化に必要なツールが含まれています。

多くの機能拡張のラインナップがあり、現在ではAPIテストに関するすべての開発工程をサポートできるツールがそろっています。しかし、自動テストを開始するには、Postmanで環境設定をしなければなりません。

8.SOATest/Virtualize

SOATest/Virtualize

引用:APIのテスト自動化とサービス仮想化を1ツールで SOAtest/Virtualize | ソフトウェア品質保証 | テクマトリックス株式会社

SOATest/Virtualizeは、テスト自動化及びテスト環境の仮想化を1つのツールで実現可能なAPI向けテスト自動化ツールです。

APIのテストドライバーが提供されており、テストを自動化する機能と、APIを高性能なスタブとして仮想化する機能を併せ持っています。テスト工数を減らしながら、APIテスト自動化を簡単に実現できることが特徴です。

9.SonarQube

SonarQube

引用:SonarQube

SonarQubeは、オープンソースの品質管理プラットフォームとなり、脆弱性のあるコードを検出できるテスト自動化ツールです。

あらゆるプラグインが用意されており、複数のプログラミング言語に対応しています。脆弱性を発見すると、深刻度に応じて自動的にランクが付帯されるなど、使いやすさに優れており、投資対効果が高いことが特徴です。

10.Klocwork

Klocwork

引用:Klocwork | 丸紅情報システムズ | 開発者のための静的ソースコード解析

Klocworkは、C・Java・Pythonなど、あらゆるプログラミング言語に対応したテスト自動化ツールです。ソースコード静的解析や静的アプリケーションセキュリティテストに使われています。

プログラムコードのバグをスピーディーに発見できるため、テスト工数削減からセキュリティリスクの低減を実現可能です。

11.Ranorex

Ranorex

引用:Ranorex

Ranorexは、UIキャプチャ機能を搭載したテスト自動化ツールです。GDIとキャプチャを併せ持っていることにより、アプリ上のサードパーティーのコントロールを認識できます。

UIテストの効率性や網羅性、再利用性が高いため、コストを削減しながら品質向上が期待できるツールです。また、サポート体制が充実していることも特徴といえます。

12.Katalon Studio

Katalon Studio

引用:Katalon

Katalon Studioは、テスト自動化のフレームワークが網羅されたセットアップ用ツールです。自動テストの計画から作成、実行まで対応しているAI拡張プラットフォームが使用でき、ローコードが採用されていることで使いやすさとフルコードの柔軟性のバランスに優れていることが特徴といえます。

また、インストールに必要なものが全てZipファイルにまとめられているため、導入もスムーズにできるでしょう。

13.TestCafe

TestCafe

引用:TestCafe

TestCafeは、JavaScriptのEnd-to-Endテストを実行するためのフレームワークです。テストコードはJavaScriptにのみ対応していますが、Google ChromeやSafari、Edgeなど主要なブラウザから利用できます。

事前にNodeJsをインストールしておかなければなりませんが、コマンド一つでインストールできるため、導入のしやすさが特徴です。

14.Eggplant DAI

Eggplant DAI

引用:Keysight Eggplant Japanese Resources

Eggplant DAIは、AIによる探索的テストができる自動化ツールです。テストケースを自動的に識別・生成できるため、最適化されたテストを実行することによってシステムの欠陥を発見できます。

また、視覚化されたレポート機能によってテストケースの網羅性を一目で確認できることも特徴です。

15.Cypress

Cypress

引用:Cypress

Cypressは、フロントエンドに特化したテストツールとなり、E2Eテストやインテグレーションテストなどに対応しています。

JavaScriptでテストコードを記載でき、マルチブラウザに対応していることが特徴です。そのため、同じコードで違うブラウザにおいてもテスト作成できることも強みだといえます。また、導入もスムーズにできることもポイントです。

自動テストツールに関するよくある3つの質問

自動テストツールに関するよくある3つの質問

自動テストツールに関するよくある質問には、以下の3つが挙げられます。

  • 質問1.自動テストツールとは何ですか?
  • 質問2.UIテストとは何ですか?
  • 質問3.自動テストの効果は何ですか?

ここではそれぞれに分けて解説しますので、詳しく見ていきましょう。

質問1.自動テストツールとは何ですか?

自動テストツールとは、ソフトウェア・アプリの開発において、あらゆるテスト業務の自動化をアシストしてくれるツールです。

エンドユーザーが使用する環境下で、システムがきちんと稼働するのかをチェックするには、あらゆる工数がかかるため、エンジニアに大きな負担を与えてしまいます。しかし、自動テストツールを導入することで、工数を減らしながらソフトウェアのテスト環境を構築することが可能です。

質問2.UIテストとは何ですか?

UIテストとは、UIが期待したとおりに動作し、ユーザーが適切にアクセスできるかを判断するために行われるものです。ソフトウェアの視覚的要素をテストし、これらがパフォーマンス要件に沿って正常に動作しているか否かを確認する工程となり、バグがないことを確認します。

UIテストに含まれるものには、以下のようなものが挙げられるでしょう。

  • ビジュアルデザイン
  • パフォーマンス
  • ユーザビリティ

質問3.自動テストの効果は何ですか?

自動テストの効果は、問題点の早期発見やコスト削減、ヒューマンエラーの予防などが挙げられます。また、自動テスト環境が構築できれば、リソースがない状況でもテストを繰り返し実行可能です。

その結果、問題の早期発見につながり、無駄な業務を省くことができるようになるでしょう。全体効率が高まることにもなり、開発リードタイム全体が短縮することにも寄与します。

まとめ

まとめ

テスト自動化ツールに関することを解説しました。テスト自動化ツールを導入すると、コストを抑えながら不具合の早期発見につなげたり、人手をかけずにテストの短時間化を実現したりとあらゆるメリットを得られます。

しかし、上手に運用するまでは時間とコストを投じなければならないため、テストを実行したい対象によっては不向きなことも考えられます。現在のテスト環境を明確にし、テスト自動化を導入するか検討してみることがおすすめです。