BtoB ECは、一般消費者向けのECほど認知されていません。しかし、市場規模は年々増加し、EC化率も右肩上がりに成長しています。

この記事では、BtoB ECの現状やメリット・デメリット、今後の活用方法について詳しく解説します。BtoB取引におけるECサイト活用を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。

BtoB ECとは?

BtoB ECとは、企業間取引をデジタル化し、インターネット上のサイトから行うシステムを指します。このシステムを利用し、伝票作業の電子化や効率化ができるようになり、どこでも簡単に受発注業務が可能です。

BtoB ECは、従来のFAXや電話に代わる現代的な取引方法として普及しています。

BtoBにおけるECの取引形態は2つ

BtoBにおけるECの取引形態には、以下の2つが挙げられます。

  • EDI
  • ECサイト

ここではそれぞれに分けて解説しますので、詳しくみていきましょう。

1.EDI

EDI(Electronic Data Interchange)は、企業間取引を電子化するシステムです。しかし、取引先ごとにシステムが異なり、汎用性の低さやISDN回線の終了によって使用できなくなるなどの課題があります。

これに対し、BtoB ECはインターネットを活用した汎用性が高いため、より多機能なサービスを提供できるようになります。

2.ECサイト

BtoBにおけるECサイトは、商品やサービスの受発注だけでなく、マーケティング機能を有するシステムです。これにより、新規顧客獲得や売上アップなどの効果が期待できます。

1990年代後半に登場したBtoB ECサイトは、企業間取引をより開かれたものにし、多様な形態で進化を遂げており、現在では自社サイトから直接販売するタイプが登場しています。

BtoB ECの市場規模

経済産業省の2021年の報告によると、BtoB EC市場の規模は372兆7,073億円です。前年と比べると11.3%増加しました。この巨大な市場は、BtoCの18倍の規模を誇り、企業間取引の大規模なポテンシャルを示しています。

今後も市場規模の拡大が期待されており、企業間におけるECの利用は増加していくと考えられています。

参考:令和3年度電子商取引に関する市場調査

BtoB ECの市場規模が拡大している3つの背景

BtoB ECの市場規模が拡大している背景には、以下の3つが挙げられます。

  • ITインフラの整備が進んでいる
  • BCPの重要性が増している
  • 働き方改革が推進されている

ここではそれぞれに分けて解説しますので、詳しくみていきましょう。

1.ITインフラの整備が進んでいる

日本国内でITインフラが整備され、多くの企業がデジタル化を進めています。とくにBtoB取引において、旧来のペーパーを使用したアナログなやり取りをデジタル化する動きが加速しているようです。

また、ITインフラの整備を試みる企業が増えることで、業務効率が向上し、BtoB EC市場拡大への貢献が考えられます。

2.BCPの重要性が増している

近年、BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)策定の重要性が高まっています。BCPは、自然災害やテロ攻撃などの緊急事態が発生した際、企業が事業資産の損失を最小限に抑え、中核事業を継続または早期に復旧させるための計画です。

近年、新型コロナウイルスの感染拡大の影響によって、資材調達難や原材料の高騰など、さまざまな問題が発生しています。とくに、BtoB EC(Business-to-Business Electronic Commerce)を利用し、取引データをクラウド上で保管・管理することは、BCP策定の一環として適しているとされています。

3.働き方改革が推進されている

2019年4月1日から、働き方改革関連法が施行されました。この改革の目的は、長時間労働の是正と多様で柔軟な働き方の実現です。BtoB ECの導入は、アナログな業務プロセスの軽減に貢献し、限られたリソースを用いて生産性の向上を目指す企業の働き方改革を推進する手段として注目されています。

ECの導入によって、効率的な取引処理が可能なため、従業員の負担を軽減し、より柔軟で効率的な働き方を実現できるようになります。

BtoB ECのメリットは3つ

BtoB ECのメリットには、以下の3つが挙げられます。

  • 業務負担が軽減する
  • 新規顧客の獲得が期待できる
  • コストが削減できる

ここではそれぞれに分けて解説しますので、詳しくみていきましょう。

1.業務負担が軽減する

BtoB ECの導入は、従来のFAXや電話による手間のかかる業務フローから、大幅な業務効率化をもたらします。これにより、在庫照会や発注書処理などの手作業が削減され、業務負担が軽減可能です。

商品情報や在庫状況はECサイト上で管理され、受注情報も顧客が直接入力するシステムに変わります。これにより、問い合わせ対応の時間が削減され、データの正確性も向上が期待できます。

2.新規顧客の獲得が期待できる

新型コロナウイルスの影響により、テレワークが普及しました。従来の営業方法に制約が生じているなか、BtoB ECは新規顧客の獲得に大きな役割を果たしています。

BtoB ECは地理的な制約を超え、幅広い範囲の企業にアクセスできるため、これまで手が届かなかった潜在的な顧客層へのリーチが可能です。また、オープンサイト形式ならば、インターネット広告やSEO対策を活用することで、関連するキーワードで検索している見込み顧客を誘導し、商品情報の提供から購入へと導けます。

3.コストが削減できる

BtoB ECの導入により、従来のアナログな業務フローで発生していたコストが大幅に削減できます。電話やFAXを使った受注プロセスは、手間とコストがかかるうえ、誤入力や聞き間違いによるヒューマンエラーを否定できません。

しかし、ECサイトによるデジタル化を進めることで、これらの問題を大幅に解消し、効率的な業務運営が可能です。さらに、人件費や営業費用の削減、リソースの有効活用にもつながり、企業全体の生産性向上が期待できます。

BtoB ECのデメリットは3つ

BtoB ECのデメリットには、以下の3つが挙げられます。

  • 標準パッケージに業務フローが合わないケースがある
  • 既存顧客のフォローが必要になる
  • 基幹システムとの連携に手間やコストが発生する

ここではそれぞれに分けて解説しますので、詳しくみていきましょう。

1.標準パッケージに業務フローが合わないケースがある

BtoB ECサイトの構築やパッケージを導入する場合、初期費用は幅広く、数万円から数億円までさまざまです。

ただし、導入だけでなく、社内の業務フローを見直したり、新しいシステムの適応を確認する必要があります。そのため、導入コストを事前に十分検討し、業務フローが標準パッケージに合っているか確認が重要です。

2.既存顧客のフォローが必要になる

新しいECサイトへの移行時には、従来の方法に慣れた既存顧客のフォローが欠かせません。電話やFAX、メールでの発注に慣れた顧客は新システムに抵抗を示すことがあり、十分なフォローがなければ取引中止のリスクもあります。

そのため、マニュアル作成やデモサイトでの操作説明を通じて、顧客が新システムにスムーズに移行できるようなサポートが重要です。

3.基幹システムとの連携に手間やコストが発生する

BtoB ECサイトの構築には、基幹システムとの緊密な連携が必須です。たとえば、在庫管理や取引先管理などの機能をどのシステムに配置するか、データの連携方法などを細かく決定する必要があります。

この過程で、システム改修による追加コストが発生する場合があります。また、社内全体での業務フローの見直しや、関係部署間の調整、外部企業へのフォローなど、導入までに多くのコストがかかることを想定することが重要です。

BtoB ECに欠かせない3つの機能

BtoB ECに欠かせない機能には、以下の3つが挙げられます。

  • 自動見積もり機能
  • 承認機能
  • 与信取引機能

ここではそれぞれに分けて解説しますので、詳しくみていきましょう。

1.自動見積もり機能

BtoB ECでは、営業担当者が通常行う見積書の発行をショッピングサイト上で実現する機能が必要です。これには、部品構成に応じた正確な見積もり作成や企業ごとの販売価格管理など、複雑な処理が求められます。

しかし、自動見積もり機能が有効であれば、顧客は迅速に稟議申請できるようになり、双方にとって時間の効率化を図ることが可能です。この機能は、見積書や領収書の自動発行を含むため、BtoB取引の効率を大きく向上させるメリットがあります。

2.承認機能

BtoB ECサイトにおける承認フロー機能は、顧客企業の購買プロセスをスムーズに促進するために重要です。この機能により、複数決裁者が関与する購入プロセスが効率化され、商機の損失を防げるようになります。

また、承認機能は、担当者が独自判断による購入を制限し、上長などの承認を得てから購入を進める仕組みです。単純承認機能と段階別承認フロー機能の両方があり、顧客の利便性の向上が見込めます。

3.与信取引機能

BtoBの基本は与信取引であるため、ショッピングサイト上のカード決済などで都度お金のやり取りをするのではなく、掛け売りに対応する必要があります。

そのため、既存の売掛管理システムや管理台帳との連携を進めていくことが大切です。また、請求管理システムなどとの連携を配慮し、請求業務を含めた取引の大部分の自動化が可能となります。これにより、ビジネスを効率よく進められるようになります。

BtoB ECサイトを構築する3つの手法

BtoB ECサイトを構築する手法には、以下の3つが挙げられます。

  • パッケージシステム
  • フルスクラッチ
  • ASPカート

ここではそれぞれに分けて解説しますので、詳しくみていきましょう。

1.パッケージシステム

パッケージシステムを使用した場合、ECサイト運営に必要な機能を標準で利用でき、足りない部分はカスタマイズしながら構築できます。

このシステムは、在庫管理や商品管理など業務に必要な基本機能があらかじめ備わっており、ゼロから構築する必要がありません。

また、近年はBtoB取引に特化したプラットフォームも増えています。しかし、カスタマイズの範囲は限られているため、自社の要件に完全にマッチするかについては検討が必要です。

2.フルスクラッチ

フルスクラッチとは、ECサイト構築をオーダーメイドでゼロから開発する方法です。このアプローチでは、自社の要望や要件に完全に合ったECサイトを作成できますが、開発期間やコストがかかります。

また、サイトの改修やセキュリティ対策も自社で担わなければなりません。これには専門的な知見を持つ担当者が必要となるため、ハードルが高い選択肢といえます。

3.ASPカート

ASPカートは、クラウドシステム上で提供されるサービスを利用して、手軽にECサイトを立ち上げたい企業に適しています。低コストで導入でき、迅速に稼働させることが可能です。

また、システムのバージョンアップやセキュリティ対応は提供会社が担うため、運用が比較的容易にできます。しかし、カスタマイズの自由度が低く、独自のビジネスモデルや特殊な業務フローに対応するのは難しく、大規模なビジネスや独自性の高いECサイトには不向きかもしれません。

ECサイトの作り方に関する詳しい情報は、こちらの記事で解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
【初心者必見】ECサイトの主な作り方は5つ|選ぶ際のポイントや代表的なサービスを徹底解説!

BtoB ECでよくある3つの質問

BtoB ECでよくある質問には、以下の3つが挙げられます。

  • 質問1.BtoB ECにおける主な決済手段は?
  • 質問2.BtoC ECとBtoB ECの違いは?
  • 質問3.BtoB ECを成功させるポイントは?

ここではそれぞれに分けて解説しますので、詳しくみていきましょう。

質問1.BtoB ECにおける主な決済手段は?

BtoB ECにおける主な決済手段には、以下のようなものが挙げられます。

  • クレジットカード
  • 口座振替
  • 銀行振込
  • 代金引換
  • 掛売り

BtoBの場合、取引量と金額が大量かつ高額となるため、あらゆる決済手段に対応することが重要です。また、掛率管理(取引先ごとに異なる販売価格)や見積もりを基に発注するなど、BtoCとは異なる取引方法が一般的となることに注意しなければなりません。

質問3.BtoB ECを成功させるポイントは?

BtoB ECを成功させるポイントには、以下の3つが挙げられます。

  • 顧客からの十分な理解を得る
  • 高度なセキュリティを確保する
  • BtoB ECの効率化と新たな営業機会

BtoB EC導入時は、顧客理解と丁寧な説明が重要です。また、セキュリティ対策や業務効率化に注力し、営業担当者の戦略的活動の支援が欠かせません。

まとめ

BtoB EC市場は新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、着実に成長しています。企業はEC化に注力することで業務効率化と売上拡大を目指し、ウェブの活用により新しい顧客層へのアプローチが可能です。

また、遠方顧客との新たな接点を創出し、既存の取引だけでなく新しいビジネスチャンスを生み出せるようになります。

BtoB ECを推進したい方は、数多くの支援実績があるジャグーまでご相談ください。
ジャグー株式会社