「EC物流について知りたい」と考えても、EC物流には独自の特徴が多くあるため、わかりにくいと感じてしまうかもしれません。

この記事では、EC事業のサポート実績が豊富にあるジャグーがEC物流の特徴から実際の業務の流れ、課題を解決するための施策について解説します。

EC物流について知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

EC物流とは?

EC物流は、EC(Electronic Commerce)つまり電子商取引に関連する物流プロセスのことです。ECではインターネットを通じて商品やサービスの売買が行われますが、店頭販売と異なり、顧客に直接商品を手渡すことはありません。

代わりに、商品は保管、流通加工、梱包、配送という物流プロセスを経て顧客に届けられます。EC物流は、この一連のプロセスを指し、近年では代金引換決済などの商流の役割も担っています。このシステムにより、場所や時間に縛られず、便利に商品を購入可能です。

EC物流の5つの特徴

EC物流の課題を解決する施策には、以下の5つが挙げられます。

  • 配送量が少なく配送先が多い
  • 迅速な発送が求められる
  • 商品の受け取りやすさが重視されている
  • ギフトラッピングのニーズが高い
  • アフターフォローの体制が重要

ここではそれぞれに分けて解説しますので、詳しくみていきましょう。

1.配送量が少なく配送先が多い

EC物流におけるBtoC間の電子商取引は、一般消費者に向けており、1件あたりの商品数は少ないものの配送先が多くなります。保管や梱包などの配達までも流れは倉庫内で完結し、実店舗よりも品揃えを豊富にできるメリットがあります。しかし、対面接客がないため、サイトへの信頼を獲得するためには明確なサービス提供が必要です。

物流の各工程でのミスは避けなければなりません。対照的に、BtoB取引では1件あたりの商品量が多く配送先は少なく、業務用商品の大量納品が特徴です。

2.迅速な発送が求められる

オンラインショッピングでは、消費者は迅速な配送を強く求めており、翌日配送はECサイト選びの重要な指標です。これを実現するためには、効率的な在庫管理、配送ルートの最適化、配送パートナーとの連携強化が必要で、配送ステータスのリアルタイム共有による透明性の保持も信頼構築に役立ちます。

また、AIによる配送ルート最適化やドローン配送の活用も迅速配送の選択肢のひとつです。EC物流倉庫では、消費者からの注文後に商品の出荷作業がはじまり、使用するシステムやデータ管理方法によって効率化の取り組みが異なるため、これらの点の確認も欠かせません。

3.商品の受け取りやすさが重視されている

近年、単身や共働き世帯の増加に伴い、商品受け取りの利便性が重視されています。顧客は、配送状況の細かな把握や配達時間の詳細な指定が可能なサービスを望んでいます。

『ニールセンデジタル』の調査では、42%が「配送状況の細かな把握」を、40%が「配達時間の詳細な指定」を重要視しており、顧客からの配送状況に関する問い合わせは伝票番号で対応可能です。さらに、玄関や宅配ボックスへの置き配を希望する顧客も増加しており、これらの要望に応じた配送手続きで顧客満足度を高める必要があります。

4.ギフトラッピングのニーズが高い

EC物流における重要なトレンドの1つは、ギフトラッピングへの高い需要です。ネットショッピングでは、「プレゼント対応」に対する需要があります。

ギフト市場は10兆円超の規模に成長しており、ECサイトでもギフトラッピング、熨斗、メッセージカードの提供により需要を獲得できます。ただし、ギフト対応は受注後の個別対応が必要で、とくにご年配の方向けのギフトでは旧字体や変体仮名の印字など細かい要望に応えなければなりません。

5.アフターフォローの体制が重要

オンラインショッピングでは、消費者が画像や文章だけで商品を選ぶため、届いた商品が期待と異なる場合の返品や交換を求められることが珍しくありません。また、販売者側のミスによる返品・交換のおそれもあります。このため、EC物流倉庫には迅速なアフターフォロー体制が不可欠です。

商品の返品や交換に関する消費者からの連絡には迅速に対応する必要があり、処理が遅れるとブランドイメージの低下やクレームにつながるリスクがあります。効率的かつ素早いアフターフォロー体制を整えることで、消費者の満足度を高め、ブランドの信頼性を維持することが可能です。

EC物流の業務の流れ

EC物流の業務の流れには、以下の5つが挙げられます。

  • 入荷・検品
  • 保管
  • ピッキング
  • 梱包
  • 出荷

ここではそれぞれに分けて解説しますので、詳しくみていきましょう。

1.入荷・検品

ECサイトでの商品販売には、適切な商品の入荷と検品が欠かせません。多品種小ロットの商材が多いため、倉庫管理は複雑化しがちです。とくに入荷時には、ケース数の誤りや棚入れミスなど、デジタル管理が及ばないアナログ作業によるヒューマンエラーが発生しやすい傾向にあります。

検品では、数量確認のほか、商品の破損、汚れ、異物混入の有無を確認し、電子機器の作動確認も実施します。カスタマイズされたWMS(Warehouse Management System)を使用し、システム管理を徹底することで、検品の精度と生産性の向上を図ることが可能です。

2.保管

ECサイトの商品保管においては、適切な環境づくりが重要です。商品が劣化することなく状態をキープするため、倉庫内の気温や湿度を適切に管理する必要があります。とくにBtoC向けECサイトの入荷した商品の棚入れは、少量多品種のため効率化が必要です。

たとえば、配置を乱雑にしてしまうと、出荷時に商品を探す手間が増え、間違いが起きやすくなります。これを回避するため、商品と棚の位置を一目で分かるようにし、スタッフ間で共通のルールを設定することが大切です。適切な保管方法と効率的な棚入れが、商品の品質維持と物流効率を高める鍵といえます。

3.ピッキング

EC物流におけるピッキング作業は、注文が入ると出荷指示が倉庫現場に送られ、ペーパーレスでデータ管理されることが多い傾向です。実際の作業では、伝票やピッキングリストに基づいて倉庫から商品を取り出し、出荷検品します。

この検品作業では、商品の配送先、品番、数量が出荷指示どおりかを確認し、スピーディかつ正確な作業が求められます。多くのユーザーが迅速な配達を希望するため、配達遅延は避けなければなりません。したがって、EC物流においては効率的でミスのないピッキングと出荷検品が極めて重要です。

4.梱包

EC物流における梱包作業は、商品の内容を確認後に実施し、とくにギフト用商品の場合は季節やイベントに応じたラッピングが必要です。梱包時には、配送中の商品の安全を確保するため、緩衝材の使用や商品の配置に注意を払います。

また、ユーザーの購入履歴や会員ランクに合わせた同梱物のカスタマイズが、リピーター獲得に効果的です。ユーザーごとに適した商品の提供方法を意識することが、効率的な梱包作業と顧客満足度の向上につながります。そのため、機械的な作業ではなく、顧客のニーズに合わせた梱包を心がけることが重要です。

5.出荷

EC物流の出荷プロセスでは、梱包完了後の商品を注文者ごとに登録し、配送業者に引き渡します。即日出荷を求める市場の拡大に伴い、小ロットで多品種・多頻度の即時対応が必要です。しかし、出荷ミスや遅延が発生することもあります。

顧客の名前や住所、日時指定の正確な確認が重要で、手違いはクレームの原因になるため、丁寧な処理が求められます。また、返品対応も珍しくなく、顧客の不満に応じた迅速で誠実な対応が必要です。そのため、効果的なマニュアル整備がスムーズな出荷と顧客満足度向上につながります。

EC物流が抱える3つの課題

EC物流が抱える課題には、以下の3つが挙げられます。

  • 急なキャンセルへの対応が必要
  • 人手不足に陥っている
  • 物流コストが高い

ここではそれぞれに分けて解説しますので、詳しくみていきましょう。

1.急なキャンセルへの対応が必要

EC物流では、顧客からの急なキャンセルや返品が頻繁に発生します。これらの対応は、倉庫スタッフの作業負担を増加させる要因となります。キャンセルされた商品の再出庫や返品された商品の再入庫作業は、EC物流の効率性と生産性に影響を与えるため、これらの対応をスムーズに行う体制の整備が必要です。

キャンセルやサイズ・カラーの変更への柔軟な対応は顧客満足度を高める重要な要素ですが、倉庫運営の効率化とスタッフの負担軽減のバランスをとることがEC物流においては欠かせません。

2.人手不足に陥っている

EC物流業界は深刻な人手不足に直面しています。労働人口の減少により、物流業界においてもデジタルやロボット技術の導入が急務となっていますが、現場の多機能化に対応できているとはいえません。

さらに、新型コロナウイルスの影響によるEC需要の急増により、宅配便の取扱件数は過去5年間で6億件以上増加しました。しかし、物流・運送業の人材確保は困難であり、給与の低さ、労働時間の長さが主な要因です。

人手不足は出荷遅延やミス、新商品の棚入れ遅れ、サービス品質の低下など、ブランドイメージや売上に悪影響を及ぼします。単に人手を増やすだけではなく、人的コストの増加が懸念されるため、根本的な解決策が必要です。

3.物流コストが高い

EC物流においては、物流コストの高騰が大きな課題となっています。商品を大量に保管するための倉庫スペースや特別な保管環境が必要な商品の管理には、相応の費用が発生します。

また、商品の出し入れに関わる荷役費用や、特別なデザインの梱包資材にかかるコストも加わり、手作業による業務は時間と費用の面で非効率になりがちです。さらに、運送業界の人手不足、再配達問題、建築費用の上昇、働き方改革、最低賃金の上昇などにより、運送費用、人件費、保管費用、システム運用費が増加しています。

これらのコスト増加が、EC販売による利益を相殺し、売上が伸びても利益が少ない状況を課題としている経営者は少なくありません。

EC物流の課題を解決する3つの施策

EC物流の課題を解決する施策には、以下の3つが挙げられます。

  • アウトソーシングを活用する
  • システムを導入する
  • 業務フローを改善する

ここではそれぞれに分けて解説しますので、詳しくみていきましょう。

1.アウトソーシングを活用する

EC物流における課題解決の1つとして、アウトソーシング(外部委託)の利用が有効です。とくに、自社でEC物流の運用ノウハウや人手が不足している場合には、外部の配送代行業者に業務を委託することが適しています。

この方法は、物流コストの削減と従業員の作業負担軽減に貢献するとともに、専門知識を持った代行業者による物流品質の向上が期待できます。さらに、アパレル物流など特定分野に特化した代行業者も存在し、それぞれのニーズに合わせたサービス提供が可能です。

また、ECサイトの運営代行については、こちらの記事で詳しく解説しています。
【2023年最新】ECサイトの運営代行でおすすめの会社15選|種類や選ぶ際のポイントも徹底解説!

2.システムを導入する

EC物流の問題を解決する主要な手段として、物流システムの導入をおすすめします。倉庫管理システム(WMS)、配送管理システム(TMS)、運送管理システムの導入により、業務コストの削減、業務の透明化、サービス品質の向上といった複数のメリットがあります。

これらはEC物流の特徴である出庫小口化や高頻度化への対応にも役立ち、EC物流を効率化し最適化するためには、システムの導入が重要です。

3.業務フローを改善する

物流システム導入の準備段階として、既存の業務フローの見直しと改善をおすすめします。物流拠点内の作業を洗い出し、現場スタッフへヒアリングし、効率化のための具体的な改善策を検討することが重要です。

また、共同輸配送の導入を検討することで、複数企業が同一ルートを共有し、物流効率を高められます。これらの取り組みにより、業務の整理が進んだ後に物流システムの導入を進めると、より効果的な物流システム運用が可能です。

ECコンサルタントについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
【担当者向け】ECコンサルタントとは?種類やメリット、依頼時の注意点についてわかりやすく解説!

EC物流でよくある3つの質問

EC物流でよくある質問には、以下の3つが挙げられます。

  • EC物流をアウトソーシングするメリットは?
  • EC物流をアウトソーシングするデメリットは?
  • EC物流のアウトソーシングを検討すべきタイミングは?

ここではそれぞれに分けて解説しますので、詳しくみていきましょう。

1.EC物流をアウトソーシングするメリットは?

EC物流を外部にアウトソーシングするメリットには、以下のようなものが挙げられます。

  • 人的ミスの減少
  • 物流品質の向上
  • リソースをほかの事業に振り分けられる

さらに、注文数や顧客数の増加に柔軟に対応できる点も大きなメリットです。とくに、繁忙期や閑散期がある企業の場合、倉庫業務のアウトソーシングにより、人件費の削減も実現できます。

2.EC物流をアウトソーシングするデメリットは?

EC物流をアウトソーシングする際のデメリットには、以下のようなものが挙げられます。

  • 物流ノウハウの蓄積が困難となる
  • 発送先に合わせた柔軟な対応が難しくなることがある
  • 情報の伝達にタイムラグが生じる

また、自社で倉庫を運用している場合に比べて、トラブル発生時の対応が遅れるおそれがあります。トラブルが起きた際の責任所在を明確にするためにも、アウトソーシング先の運用体制を確認しておくことが重要です。

3.EC物流のアウトソーシングを検討すべきタイミングは?

EC物流のアウトソーシングを検討する適切なタイミングは、以下の3つの状況が重なるときです。

  • 現場のオペレーションが滞り始めている
  • コア業務にリソースを振り分けたい
  • 安定的な売上増加が見込める

これらのタイミングでアウトソーシングすることで、そのメリットを最大化し、デメリットを抑えられます。

ただし、アウトソーシング先を選ぶ際には慎重な検討が必要です。自社が解決したい課題とアウトソーシングサービス内容がマッチしているか、導入後のサポート体制が充実しているか、信頼できる実績があるかといった点を考慮し、自社に最適なアウトソーシング先を選ぶことが重要です。

まとめ

EC物流の特徴について解説しました。ECでは実店舗と異なり、サイト運営者が直接荷物を購入者に届けることはありません。そのため、入荷から梱包、出荷までのフローを構築することが重要です。

数多くの課題がありますが、アウトソーシングを活用したり、システムを導入したりすることによって効率化を実現できます。

しかし、物流の効率化にはノウハウが欠かせません。社内に物流に関する知見がない場合、数多くのEC物流をサポートしてきたジャグーまでご相談ください。
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