業務効率化のために、チャットボットの導入を検討している企業も多いのではないでしょうか。しかし、はじめてチャットボットを導入する場合は、効果的な活用方法がわかりにくいかもしれません。
そこで、この記事では、チャットボットの概要や導入するメリット、導入する際のポイントについて解説します。また、成功事例についても紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
チャットボットとは?
チャットボットは、会話形式で情報を提供するシステムです。一般に、テキスト入力に対して自動で応答するイメージが強いですが、音声会話に対応するAIスピーカーのような形態も増えています。
主に、AIを活用したタイプと事前に定められたシナリオに沿って応答するタイプの二種類があります。
AI型チャットボット
AI型チャットボットは、人工知能技術を駆使したシステムです。これらは機械学習の原理を基に構築され、ユーザーの入力した文章の意味を理解し、適切な回答を生成する能力を持っています。
とくに注目すべき点は、経験に基づく学習機能です。これにより、過去の対話データを分析し、継続的に学習することで、応答の精度と適切性を時間とともに高めていきます。
この進化する能力により、AI型チャットボットはユーザーとの対話においてより自然で有用な体験の提供が可能です。
シナリオ型チャットボット
シナリオ型チャットボットは、事前に設定された選択肢に基づいてユーザーとの対話を進めるタイプのシステムです。ユーザーが提示された選択肢のなかから適切なものを選ぶことで、会話が展開されます。
この方式の大きな特徴は、事前に定められたシナリオに沿って安定した対話が可能な点です。選択肢ごとに特定の応答が設定されているため、ユーザーには予測可能でわかりやすい対話体験が提供されます。
シナリオ型チャットボットは、とくに顧客サポートやFAQなど、限定された範囲の問い合わせに対応する際に効果的です。
ECサイトにチャットボットを導入する3つのメリット
次に、ECサイトにチャットボットを導入するメリットについて解説します。
- 業務効率化が可能になる
- 顧客ニーズの解析に役立つ
- CVR向上が期待できる
それぞれについて詳しくみていきましょう。
1.業務効率化が可能になる
ECサイトでチャットボットを導入すると、顧客からの一般的な問い合わせを自動化し、オペレーターの負担が軽減可能です。たとえば、ECサイトに共通する商品の詳細や配送に関する問い合わせは、チャットボットによって効率的に処理できます。
この結果、オペレーターはより複雑で緊急性の高い問題に集中できるようになり、顧客サービスの質の向上とともに、業務の効率化が実現します。
2.顧客ニーズの解析に役立つ
顧客がチャットボットで問い合わせをするたびに会話データが蓄積されます。これにより、顧客の関心事やどのような人々が利用しているかなど、顧客の特徴や属性が把握できます。
この顧客分析をマーケティングに応用すれば、製品企画や開発への貢献が可能です。さらに、顧客の疑問点を改善点と捉え、今後の施策をどう進めるべきか考察することもできます。
このように、顧客の声を取り入れ、継続的な改善を実施することは、ECサイトを利用し続けてもらうために重要です。
3.CVR向上が期待できる
従来の電話やメールによるサポートでは、レスポンスに時間がかかり、その間に顧客の購買意欲が減退するリスクがありました。しかし、チャットボットによる対応により、このような問題が解消できます。
チャットボットでは、顧客が抱える問題を迅速に解決できるため、購買プロセスがスムーズになり、結果的に商品購入やサービス申し込みへとつながりやすくなります。これは、顧客の満足度を保ちながら、売上の向上に寄与する重要な要素です。
なお、ECサイトにおけるCVR向上については、こちらの記事で詳しく解説しています。
⇒【2023年最新】ECサイトのCVR(コンバージョン率)とは?低くなる原因や改善施策を徹底解説!
ECサイトにチャットボットを導入する際の5つのポイント
次に、ECサイトにチャットボットを導入する際のポイントを解説します。
- 過去の問い合わせ内容を反映させる
- 使いやすさを重視して選ぶ
- チャットボットが苦手な分野の対策を考えておく
- データの記録や分析ができるものを選ぶ
- 定期的なメンテナンスを実施する
それぞれについて詳しくみていきましょう。
1.過去の問い合わせ内容を反映させる
適切な回答を提供するためには、さまざまな問い合わせに対応できるようにシナリオを事前に設計する必要があります。これを実現するためには、過去にどのような問い合わせがあったか把握しなければなりません。
過去の問い合わせ履歴がデータとして蓄積されている場合は、これらのデータを分析し、どのような問い合わせが多く寄せられているか詳細に調査します。この情報は、チャットボットの応答シナリオの設計や改善に役立ち、顧客にとってより満足度の高い対話体験を提供するための基盤です。
2.使いやすさを重視して選ぶ
操作が簡単で直感的なユーザーインターフェースを備えたチャットボットを選定するようにしましょう。また、FAQは簡潔でわかりやすい言葉を使って作成し、よくある質問に迅速に回答できるようにします。
さらに、チャットボットをサイト上の目立つ場所に設置し、使い方やメリットを明確に伝えることで、その存在と有用性を顧客にアナウンスできます。これらの工夫により、チャットボットの効果的な活用が促進され、結果的に顧客満足度の向上が可能です。
3.チャットボットが苦手な分野の対策を考えておく
チャットボットは複雑なクレーム処理や、詳細な個別相談のような高度な対話には向いていません。したがって、このようなケースに備え、人間のオペレーターにスムーズに引き継ぐ体制を整えましょう。
たとえば、チャットボットには、ユーザーの問い合わせが特定の閾値を超えた場合、自動的に人間のオペレーターに接続する機能を設定するなどの工夫が可能です。これにより、顧客満足度を損なうことなく、サービスの質を向上できます。
4.データの記録や分析ができるものを選ぶ
データの記録と分析機能により、問い合わせ履歴や回答率、解決率などの重要な指標を追跡し、チャットボットの性能を継続的に改善することが可能です。市場には多くのチャットボット製品があり、それぞれ異なるデータ分析機能を提供しています。
チャットボットを選択する際には、機能の有無だけでなく、どのようなデータを記録・分析できるのか詳しく確認することが大切です。詳細なデータ分析は、チャットボットのパフォーマンスを最適化し、ユーザーエクスペリエンスを向上させるうえで不可欠となります。
5.定期的なメンテナンスを実施する
商品規格の変更や送料の更新など、サイト情報が変わるたびにチャットボットも合わせて更新する必要があります。古い情報を提供してしまうと、混乱を招きかねません。
また、運用中に「わかりやすい回答は何か」といった改善点が見つかる場合も多いです。こうした点を定期的に見直し、適宜修正を加えることで、チャットボットは常に最新の情報を提供し、顧客の疑問や問題に効果的な対応ができます。
ECサイトにおけるチャットボット成功事例7選
次に、ECサイトにおけるチャットボット成功事例を紹介します。それぞれについて詳しくみていきましょう。
1.UNIQLO
参考:ユニクロ
ユニクロは「UNIQLO IQ」という革新的なチャットボットを採用し、ECサイトのユーザー体験を大幅に向上させました。このチャットボットは、注文やキャンセルなどの基本的な問い合わせに迅速かつ自動で対応し、ユーザーに即時のサポートを提供しています。
UNIQLO IQの特筆すべき機能は、商品検索やコーディネートの提案能力です。これにより、ユーザーは自分の好みやニーズに合わせた商品やスタイルの提案を受けることができ、より効果的で満足度の高いショッピング体験が可能になります。
2.アダストリア
参考:アダストリア
アダストリア社は、「グローバルワーク」や「ニコアンド」などのブランドを展開しており、AI搭載のチャットボットやメールを活用して、問い合わせ対応しています。とくに、注目されるのが、りらいあデジタル株式会社が提供する「バーチャルエージェント(R)」のチャットボット「コトヨさん」の導入です。
このチャットボットの導入により、アダストリア社は、店舗およびECサイトのユーザーからの問い合わせに24時間体制で対応が可能になりました。これによって、顧客サービスの質が向上し、ユーザーの満足度を高めることに成功しています。
3.LOHACO
参考:LOHACO
LOHACOは、アスクル株式会社によって運営されており、チャットボット「マナミ」を導入しています。とくに効果的なのが、チャットボットのページに「よくあるお問い合わせ・質問」の一覧を併設している点です。
ユーザーはこの一覧を参照して、必要な情報を得ることができ、同時にチャットボットを活用してさらに詳しい質問も可能です。この一元化されたアプローチは、ユーザーの問い合わせ対応を効率化し、顧客体験の向上に大きく貢献しています。
4.H&M
参考:H&M
アパレル大手のH&Mは、ECサイトにチャットボットを採用しており、ユーザーとのやり取りを通じて、ユーザーの興味に合わせた商品を提案しています。このシステムでは、チャットボットが出す質問に対して回答すると、その回答を基にAIがユーザーの好みに適したアイテムを推薦します。
このプロセスでは、文字入力がほとんど不要で、表示された選択肢をタップするだけです。以前は、顧客が商品に関する情報を得るために電話での問い合わせや実店舗への訪問が必要でしたが、チャットボットの導入により、気軽にチャットで質問できるようになっています。
5.FANCL
参考:FANCL
FANCLは、化粧品や健康食品を提供するECサイトでチャットボットを導入しています。このチャットボットは、可愛らしいキャラクター「ワンケル」として知られ、ユーザーとの対話を通じて親しみやすさを演出しています。
ワンケルは、問い合わせに対する迅速な対応だけでなく、キャンペーン情報やおすすめ商品の情報も提供しており、ユーザーの購買体験向上に成功している事例の1つです。
6.モノタロウ
参考:モノタロウ
モノタロウは事業者向け工業資材のECサイトで、ユーザーサポートにチャットボットを導入しています。このチャットボットは、ご利用ガイドから選ぶスタンダードな選択式と、チャットボックスにフリーワードを打ち込む方法の両方が利用可能です。
さらに、チャットボックス右上には人間のオペレーターに接続するボタンも設置されており、ユーザーにとって便利なサポート体制が整えられています。
7.花キューピット
参考:花キューピット
花キューピット株式会社は、フラワーギフトの受注事業を展開するブランドです。商品の特性上、繁閑の差が激しく、カスタマーセンターのオペレーターだけでは繁忙期の問い合わせに対応できないという課題がありました。
この問題に対処するため、花キューピットは既存のQAデータを活用し「さっとFAQ」という自己解決ツールを導入しています。
EC チャットボットでよくある3つの質問
最後に、EC チャットボットでよくある質問について紹介します。
- 質問1.チャットボットを利用する際の注意点は?
- 質問2.チャットボットはどこに設置するのがいい?
- 質問3.チャットボット導入にかかる費用は?
それぞれについて詳しくみていきましょう。
質問1.チャットボットを利用する際の注意点は?
チャットボットの導入にはメリットがある一方で、注意が必要な点も存在します。以下に、チャットボットを利用する際に留意すべき2つのポイントを紹介します。
- 初期コストがかかる
チャットボットの導入には初期コストがかかる。導入前に初期費用と運用コストを計画に組み込み、費用対効果を確認しなければならない
- プラットフォームの仕様変更に対応が必要
LINEなどの特定プラットフォームでチャットボットを使用する場合、プラットフォームの仕様変更への対応が必要。仕様変更が頻繁に起こると、改修が継続的に必要になり、追加のコストがかかる可能性がある
質問2.チャットボットはどこに設置するのがいい?
チャットボットの設置場所によって、得られる効果が異なります。設置場所におけるメリットは以下のとおりです。
- 商品詳細ページ
商品詳細ページにチャットボットを設置することで、ユーザーの商品に関する疑問を即座に解消できる
- 決済ページ
決済ページにチャットボットを配置すると、はじめてECサイトを利用する顧客へサポートの提供が可能になる
- サイトトップページ
ECサイトのトップページにチャットボットを配置した場合、個別の問い合わせを減少させる効果がある
質問3.チャットボット導入にかかる費用は?
チャットボットは、クラウド型での提供が主流で月額費用が発生します。費用はAIの有無とカスタマイズ性に依存して大きく変動します。
AI非搭載の基本的なチャットボットは月額5万円以下が一般的で、AI搭載かつカスタマイズ性が限られる場合は10〜30万円程度です。
一方、高度なカスタマイズ性とAI機能を備えたチャットボットは、月額30〜50万円程度と高額です。導入前にランニングコストを計算し、ビジネスのニーズに適したチャットボットを検討しましょう。
まとめ
この記事では、チャットボットの概要、導入するメリットや導入する際のポイント、成功事例について紹介しました。
チャットボットには、AI型とシナリオ型の2種類があり、それぞれの機能が異なります。しかし、これらを適切に活用できれば、業務効率化やCVR向上が期待できます。ぜひ、この記事を参考にチャットボットの導入を検討してみてください。
なお、チャットボットシステムの比較や導入でお困りの場合は、ECサイトの支援実績が豊富なジャグーまでお気軽にご相談ください。
⇒ジャグー株式会社