「ECサイトの売上を安定させたい」このように考える方は少なくありません。このような課題を抱えている方は、カゴ落ち対策について理解を深めることをおすすめします。

この記事では、カゴ落ちが発生する原因から具体的な対策、おすすめツールについて解説します。ECサイトの売上を伸ばしたい・安定させたいと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。

カゴ落ちとは?

「カゴ落ち」または「カート放棄」と呼ばれる現象は、ネットショップにおける重要な問題です。これは、訪問客が商品をカートに入れながらも最終的に購入せずにサイトを離れることを意味します。

ネットショップの売上に大きな影響を与える要因であり、購入率(CVR)を改善するための重要なポイントです。この問題に対処しない場合、サイトへのアクセスはあっても売上に結びつかないという状況に陥りかねません。

そのためカゴ落ち対策を講じることはネットショップの売上を伸ばすうえで重要な要素です。

カゴ落ち率の計算式

ECサイトの運営において、カゴ落ち率は重要な指標です。サイト訪問者がどれだけの割合で商品をカートに入れたあと、購入せずにサイトを離れているかを示します。

カゴ落ち率の計算式は、以下のとおりです。

  • (カートに商品を入れた人数-実際に購入した人数)÷カートに商品を入れた人数

カゴ落ち率を把握することによって、ECサイトの状況を正しく評価し、改善策を考えられるようになります。

カゴ落ちが発生する10の理由

カゴ落ちが発生する主な理由を10点ピックアップして解説します。

1.送料や手数料が高い

カゴ落ちの主な原因の1つは、送料や手数料が予想より高いことです。顧客は商品ページを閲覧している際、これらの追加費用を意識しにくく、購入時に表示される総額が予想を超えると、購入を見送ることが多い傾向にあります。

一方、ECサイトの運営者は、一定の購入額を超えると送料を無料にする「送料無料ライン」を設けることがありますが、低価格商品では送料がかかるため、顧客には高く感じられることがあります。送料は、顧客にとっても事業者にとっても悩みの種であり、このバランスをどのように取るかがECサイト運営の重要な課題です。

2.合計金額が決済画面までわからない

ECサイトでのカゴ落ちを防ぐためには、カートページでの透明性が重要です。顧客がカートページにて送料や追加費用を含めた合計金額を把握できるのが理想です。

配送情報の入力後や決済画面に進んでから予想外の追加費用が発生すると、顧客が購入を見送る可能性を高めてしまいかねません。

また、購入フローの長さやカートページ以降での編集不可もカゴ落ちの原因となります。これらの問題を解決し、できるだけ早い段階で顧客に情報を提供することで、カゴ落ちの発生を減らせます。

3.決済手段が少ない

ユーザーはそれぞれが好む決済方法で購入を希望するため、ECサイトではさまざまな決済手段を導入することをおすすめします。実際、利用できる決済手段が限られている場合、40%のユーザーはほかの決済方法を使って同じサイトで購入することを選ぶようです。

しかし、残りの60%以上のユーザーは別のECサイトで同じ商品を探す傾向にあるとされています。これは、限定された決済手段がカゴ落ちの一因となっていることを示しており、幅広い決済オプションの提供が売上増加に直結することを意味します。

4.返信ポリシーに不満がある

ECサイトで重要なページとして挙げられるのが、返品ポリシー、運営者情報、よくある質問、購入ガイドです。これらのページは一度作成されると、更新をおろそかにしてしまいがちです。

しかし、これらのページは購入を考えているユーザーにとっては重要な情報源であり、注意深く読まれます。

そのため、返品ポリシーに関する不満やページ内の誤字脱字が信頼性を損なう原因となることがあります。また、読みにくいページデザインはユーザーの離脱を引き起こす可能性があるため、これらのページは定期的に見直し、改善することが重要です。

5.購入までのプロセスが長い

買い物カゴに商品を入れて決済に進む際、ユーザーは指示に従って必要項目を入力します。たとえば、男女の区別、年齢、勤務先など、購入に必要でないと感じられる情報を求められると、不信感や面倒くささを感じさせ、カゴ落ちの原因になります。

多くのカートASPでは、購入完了までのフローが明示される機能を提供していますが、カートページから購入完了ページまでのページ遷移は編集できないことが多い傾向です。そのため、ECサイト運営者は自サイトのページ遷移を確認し、購入完了までのフローが不明瞭な場合は、別のカートASPへの乗り換えを検討した方がよいかもしれません。

6.商品情報が不足している

キャンペーンや割引により一時的に購入意欲が高まるものの、商品に関する詳細な情報が不足している場合、顧客は購入をためらうことがよくあります。

特に、商品の魅力やほかの顧客による評価が明確でないと、購買意欲が減退しかねません。たとえば、アパレル商品の場合、サイズや質感がはっきりしなければ自分に合うかどうかが不確かです。これが購入の不安につながり、結果的に購入を断念するケースがあります。

7.クレジットカード情報を入力したくない

商品をカートに入れた後、ECサイトの信頼性に不安を感じることがカゴ落ちの原因となることがあります。特に、クレジットカードを使った決済の際、サイトのセキュリティレベルや完成度が低いと感じると、カード情報の入力を躊躇してしまいます。

ユーザーが個人情報の漏洩や不正利用を心配するため、決済方法の多様化が重要です。コンビニ決済や代金引換、Amazon Payや楽天ペイのような大手企業が提供する決済方法を導入することで、ユーザーの不安を軽減し、カゴ落ちを減らせます。

8.ショッピング中にエラーが発生する

ECサイトでの購入プロセス中に表示の遅延やエラーが発生すると、顧客が購入を断念し、サイトに戻らなくなるケースが多いです。

また、エラーが原因不明のままであると、顧客に不安を与え、カゴ落ちの一因となります。しかし、エラーの原因がアクセス過多やサーバーメンテナンスなどと特定できる場合は、その内容を迅速かつ明瞭に顧客に伝えることにより、カゴ落ちのリスクを減らせます。

そのため、適切な情報提供により、顧客の不安を軽減し、購入プロセスの進行を支援することが重要です。

9.配送までに時間がかかる

ECサイトで商品を購入する際、ユーザーはできるだけ早く商品を手に入れたいと考えています。特に、アパレル系のECサイトで見られる「予約販売」や海外からの直接発送などのオペレーションでは、商品の到着が1〜2ヶ月後になるケースがあります。

そのため、発送まで日数を要する場合や、到着まで10日以上かかる海外便では、キャンセルして別のECサイトを利用することも多いようです。

この問題に対する有効な対策としては、商品到着までの日数を明記することが挙げられます。さらに、「即納」であることや国内発送であることを明記することも、ユーザーにとっての購入決定要因となります。

これらの情報は、ユーザーが購入する際の不安を軽減し、ECサイトの信頼性を高めるために重要な要素です。

10.クレジットカード決済時に拒否される

クレジットカード決済時に拒否される問題は消費者に起因しています。たとえば、クレジットカード番号の入力ミスや残高不足が原因で決済が完了しないケースがあります。このような状況に対処するため、事業者は決済プロセスを改善しなければなりません。

効果的な対策として、まず決済方法の選択肢を増やすことが考えられます。これにより、消費者は自分に適した決済方法を選べるようになり、トランザクションの成功率が高まります。

また、決済ができない原因を消費者に明確に伝えることも重要です。これによって、消費者は問題を迅速に解決し、購入を諦めることなく取引を完了させられます。

カゴ落ちを防ぐための7つの施策

カゴ落ちを防ぐための具体的な施策を7つ挙げて紹介します。

1.追加費用をできるだけ下げる

EC事業者は、送料などの追加費用が原因で起こるカゴ落ち問題に対処する必要があります。特に、安価な商品に対する送料の負担は、事業者にとって大きな課題です。完全な解決策は存在しないものの、特定の商品に限定して送料を無料にすることは有効な戦略だといえます。

このアプローチでは、送料無料の商品を戦略的に選び、商品ページで積極的にアピールすることが重要です。この方法には、送料無料の商品のみが注文されるというリスクが伴いますが、顧客がほかの商品も「ついでに」購入することを促せれば、売上の増加が期待できます。

2.商品到着までの日数を明確にする

ECサイトにおいては、商品の配送時期に関する情報の明確化が重要です。購入者は、商品がいつ手元に届くかを知りたいと考えています。国内発送の場合、一般的には1〜3日での到着が求められます。

しかし、配送方法や繁忙によっては、期間が前後することが考えられるかもしれません。また、天候による配送遅延のおそれもあります。

このため、ECサイトでは、商品がいつ頃届くかについておおよその日数をサイト上で明記することが重要です。さらに、配送の遅延が予想される場合は随時サイト上で更新し、購入者に知らせるように心がけてください。これにより、購入者の不安を緩和し、信頼性の向上につながります。

3.決済手段を充実させる

ECサイトでのカゴ落ちは、選択できる決済手段が限られている場合によく発生します。顧客が好みの決済方法を見つけられないと、購入を断念しかねません。そのため、さまざまな決済オプションを提供することが、顧客の取りこぼしを減らすためのポイントです。

クレジットカード決済は一般的であり、多くの顧客にとって便利な選択肢ですが、すべての顧客がクレジットカードを利用するわけではありません。クレジットカードの使用を好まない人や、若年層などクレジットカードを持てない層に対しても、コンビニ決済、キャリア決済、ID決済、後払い決済などの代替手段を用意します。これにより、より多くの顧客にとって使いやすい決済環境を提供し、カゴ落ちのリスクを低減させることが可能です。

4.商品ページを魅力的にする

waculによる「ECのCVR改善に寄与する特集ページのベストプラクティス研究」レポートでは、アパレルECサイトにおける特集ページの重要性を明らかにしています。この研究では、16のアパレルECサイトで商品一覧ページのCVRと特集ページのCVRを比較しており、特集ページを利用することでCVRが高まることが示されました。

特集ページは、単に商品を規則正しく並べるだけでなく、商品に優劣をつけたり、雑誌のように情報量を充実させたりすることが重要です。特に、「セール」や「福袋」のような値引きを伴う特集ページや、「雑誌掲載」や「コラボ」など信頼性を高める内容のページでは、CVRが高くなる傾向があります。

なお、楽天市場の商品ページ作成に関する詳しい情報は、こちらの記事で詳しく解説しています。
【2023年最新】楽天で売れる商品ページを作る8つのコツ|手順や構成もわかりやすく解説します!

参考:ECのCVR改善に寄与する特集ページのベストプラクティス研究 |WACUL TECHNOLOGY & MARKETING LAB

5.会員登録の手間を減らす

ECサイトにおけるカゴ落ちは、会員登録の手間に起因することがあります。対処するためには、登録プロセスを簡素化することが効果的です。具体的には、入力フォームの数を減らすことにより、顧客の会員登録に対する抵抗感を軽減できます。

また、会員登録せずに購入が可能なシステムの導入も有効な手段です。会員登録自体を希望しない顧客もいます。そのため、登録不要で購入できる選択肢を提供することは、購入過程の離脱を防ぐうえで重要です。

このようなアプローチにより、ECサイトはより多くの顧客にとって使いやすい環境を提供し、カゴ落ちを減少させることが期待できます。

6.EFOツールを導入する

EFO(Entry Form Optimization)とは、顧客のフォーム入力プロセスを簡素化し、効率的にするためのツールです。このツールは、顧客がフォーム入力中に感じる手間や不便を減らすために設計されています。

具体的には、残りの入力項目数を表示したり、必須項目を漏れなく入力するためのアラート機能を提供したりします。また、EFOの導入により、購入プロセス中の顧客の行動を分析することが可能です。

たとえば、「どの項目で購入を諦めたか」などの情報が得られるため、入力ステップの数を減らしたり、フォームの項目を再検討したりすることで、具体的な数値に基づいた改善策を実施できます。

7.決済前に合計金額を確認できるようにする

ECサイトのユーザビリティを向上させるためには、決済前に送料を含む合計金額を明確に表示することが重要です。これにより、顧客は購入時の総コストを事前に理解でき、サイトの利便性を高められます。

特に、送料やラッピング料などの追加費用が発生する場合、これらを商品ページに明記することをおすすめします。さらに、顧客が商品をカートに追加する際に、合計金額をリアルタイムで表示することも効果的です。これらのアプローチは、顧客の満足度を高め、カゴ落ちを減少させる効果が期待できます。

おすすめのカゴ落ち対策ツール3選

おすすめのカゴ落ち対策ツールには、以下の3つが挙げられます。

  • カゴ落ちメール
  • 決済フォーム改善ツール
  • Web接客ツール

ここではそれぞれに分けて解説しますので、詳しくみていきましょう。

1.カゴ落ちメール

カゴ落ちメールは、ECサイトの利用者がカートに商品を残した状態でサイトを離れた際に送信されるリマインダーメールです。このメールは、顧客にカート内の商品を思い出させ、サイトへの再訪を促すことを目的としています。

顧客が一度カートに商品を加える行為は、その商品に対する関心の表れです。カゴ落ちメールを送信することによって、顧客をECサイトへ再度呼び戻す手段となります。

メール送信のタイミングは自由に設定でき、「1時間後」「在庫減少時」「価格割引時」などから選択可能です。

2.決済フォーム改善ツール

決済フォーム改善ツールは、商品購入画面への移動プロセスを効率化するために重要です。このツールを選定する際の基準には、以下のようなものが挙げられます。

  • 入力補助機能、エラー表示、必須項目の強調表示の可否
  • ユーザーがどの段階で離脱したかを追跡できる分析ツールの有無
  • 利用可能な決済手段の種類
  • 料金体系
  • 決済フォームの修正に伴う追加料金

これらのなかで重要となるのは分析ツールの有無です。これにより、顧客がどの段階で離脱したかを特定できるため、決済フォームの改善に役立ちます。適切なツールを選ぶことで、決済プロセスの効率化と顧客満足度の向上を図ることが可能です。

3.Web接客ツール

Web接客ツールは、顧客がサイト上で遭遇する不便や不安を解消するために使用されるツールです。このツールの選定にあたっては、以下のような要素を考慮してください。

  • 顧客へのお知らせ機能の有無
  • チャット機能の有無
  • チャットがAIによるものか、人手によるものか
  • サポートサービスの質と範囲

特に注目すべき点は、チャット機能がAIか有人かという選択です。こちらは、運営の負担とサポートの質に大きく影響します。

より詳細かつ個別のサポートを提供したい場合は、有人のチャットが適しています。しかし、一般的な疑問への迅速な対応を目指すならば、AIチャットの導入が効果的です。

カゴ落ちでよくある3つの質問

カゴ落ちでよくある質問には、以下の3つが挙げられます。

  • 質問1.カゴ落ちメールを送るコツは?
  • 質問2.カゴ落ち対策で導入すべき決済手段は?
  • 質問3.カゴ落ち率の平均値は?

ここではそれぞれに分けて解説しますので、詳しくみていきましょう。

質問1.カゴ落ちメールを送るコツは?

カゴ落ちメールを送るコツは、以下の3つが挙げられます。

  • なるべく早い段階でメールを配信する
  • ビジュアルも交えて訴求する
  • 同じユーザーへの連続配信はしない

カゴ落ちユーザーに対し、購買意欲を喚起するため「3時間後、24時間後、7日後」という3回のステップメール配信が効果的です。また、HTMLメールで商品を視覚的に示すことで購買を促しますが、過度なリマインドは反感を招くため配信頻度に注意しなければなりません。

質問2.カゴ落ち対策で導入すべき決済手段は?

ECサイトでの売上向上には、顧客が希望する決済手段の提供が重要です。希望する決済手段がないと、約70%の顧客が購入を見送るとされています。

特に、クレジットカード決済や後払い決済、代引き決済の3つは利用率が高いため、これらの導入はサイトの離脱率を減少させるには効果的です。

そのため、初期段階ではこれらの決済方法を導入し、顧客のニーズに応じて追加のキャッシュレス決済オプションを検討することをおすすめします。

質問3.カゴ落ち率の平均値は?

ネットショップの売上向上において、カゴ落ち率は避けて通れない重要な指標です。この率は、訪問者のうちどれだけがカートを放棄しサイトから離脱しているかを示します。Baymard Instituteの研究によると、世界のECサイトの平均カゴ落ち率は69.99%で、ほぼ7割の訪問者が購入せずに離脱していることが明らかになりました。

このデータを踏まえ、自店のカゴ落ち率を把握し、市場平均と比較することが重要です。これにより、カゴ落ちの改善策を効果的に立てられます。

参考:49 Cart Abandonment Rate Statistics 2024 – Cart & Checkout – Baymard Institute

まとめ

ECサイトにおけるカゴ落ち率の改善は売上向上に直結します。そのため、カゴ落ち率を正確に測定し、効果的な改善策を実施することが欠かせません。

この記事で解説した内容を参考にしてカゴ落ちの原因を特定し、具体的な改善策に取り組むことをおすすめします。

また、自社内に専門知識が不足している場合は、ECサイトの支援実績が豊富にあるジャグーまでご相談ください。
ジャグー株式会社