ECサイトの立ち上げや運営には多大なコストや労力がかかります。しかし、補助金を活用することによって、負担を大きく軽減可能です。
この記事では、負担軽減に役立つ「IT導入補助金」の申請手順や注意点について詳しく解説します。
これからECサイトを構築しようと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
ECサイト構築に利用できる「IT導入補助金」とは?
参考:IT導入補助金
「IT導入補助金」は、中小企業や小規模事業者がITツールを導入する際の経費を国がサポートする制度です。経済産業省が実施しており、通常枠(A・B類型)と低感染リスク型ビジネス枠(C・D類型)の2つに分類されています。
それぞれ目的や適用要件が異なり、通常枠は業務効率化や売上アップを目指す事業者を対象にしていますが、低感染リスク型ビジネス枠はテレワークの推進や業務の非対面化を促進するための枠組みです。
特に、C類型はECサイト構築などの非対面業務効率化をサポートし、D類型はテレワーク環境の整備を目的としています。2023年度もこれらの補助金を活用できるため、要件をしっかりと把握し、適切なITツール導入を検討するとよいかもしれません。
対象となる業種
IT導入補助金2023では、飲食業、宿泊業、卸売業、小売業、運輸業、サービス業、製造業、建設業、医療、介護など幅広い業種が対象となっています。
しかし、この補助金の対象となるのは、「中小企業」や「小規模事業者」に限られており、それぞれの業種ごとに資本金や従業員数によってその定義が異なります。
公募要項に記載されている定義を確認し、自社が補助金の対象となるかどうかを把握することが重要です。
対象となる類型と金額
2021年度のIT導入補助金では、「通常枠(A・B類型)」と「低感染リスク型ビジネス枠(特別枠:C・D類型)」に分かれ、類型ごとに上限補助額、下限補助額、補助率が設定されていました。
続いて、2022年度から類型が再構成され、「デジタル化基盤導入類型」と「複数社連携IT導入類型」が新設され、2023年度ではこれらの類型に加え、「セキュリティ対策推進枠」と「デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)」が利用可能です。
特に新規でECサイトを立ち上げる際には「デジタル化基盤導入枠」が活用できます。
導入する内容によって補助額や補助率が変わるので、それぞれの内容を確認し適切な枠を選ぶことが大切です。
デジタル化基盤導入類型
ECサイトをはじめとするITツール、PC、タブレット、会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフトがIT導入補助金の対象です。
これらは導入内容に応じて定められた補助額と補助率で支援を受けられます。
2021年度からインボイス制度の導入に向けて取引データのデジタル化推進が進められており、ITツールの補助率が引き上げられたことで、2023年度もより多くの補助金を利用できます。
また、補助額と補助率は以下の通りです。
- ~50万円以下で3/4
- 50万円超~350万円で2/3
- ~10万円以下で1/2
- ~20万円以下で1/2
たとえば、ECサイト構築に300万円かかると仮定した場合、補助率2/3が適用され、200万円が補助されます。つまり、実質100万円で300万円のコストをかけたECサイト構築が可能です。
複数社連携IT導入類型
2022年度に大きく変更された複数社連携IT導入類型では、デジタル化基盤導入類型のITツールのみならず、キャッシュレスシステムや生体認証決済システム、AIカメラ、デジタルサイネージ、専門家への相談料などもIT導入補助金の活用ができるようになりました。
ただし、「10者以上」の事業者が連携することが条件とされています。また、補助額と補助率は以下の通りです。
- デジタル化基盤導入類型と同様
- 「50万円×参加事業者数」で2/3
- (1+2)×10%で2/3
1事業あたりの上限額は3,000万円とされています。
ECサイト制作を検討中の場合、複数社連携IT導入類型はハードルが高いため、デジタル化基盤導入類型のIT導入補助金を活用して、コストを抑えながらECサイトを制作することがおすすめです。
採択の条件
ECサイトの非対面化を推進し、C・D類型で補助金を利用できる点は明確であり、特に新規構築や既存サイトのリニューアルにおいて電子決済機能の導入が必須とされています。
セキュリティ対策としてのHTTPS通信の実装も欠かせません。また、ショッピングモールへの新規出店も対象とされており、それに伴うショップサイトの制作が求められます。
さらに、これらのプロセスと実績報告における成果物の提出をする必要があります。
注意点としては、契約前の着手や制作途中のものは対象外となっていることに気をつけてください。
これらのガイドラインを理解し、適切に申請を進めることが求められます。
採択までのスケジュール
2023年度のデジタル化基盤導入類型における採択スケジュールは、前期と後期事務局が担当する時期によって分かれています。
そのため、それぞれの時期に合わせて情報をチェックしなければなりません。前期事務局は7月31日以前の交付申請を、後期事務局は8月1日以降の申請を担当します。
今後の採択スケジュールは、例年通り段階的に公表されるため、最新情報をご確認ください。直近の例を挙げると、10次締切分の交付決定日は2023年11月20日、事業実施期間はその日から2024年5月31日までとされています。
ECサイト構築でIT導入補助金を申請する手順は7ステップ
ECサイト構築でIT導入補助金を申請する手順は、以下の7つのステップです。
- 導入するツールとIT導入支援事業者を選ぶ
- 「gBbizIDプライム」のアカウントを取得する
- 交付申請する
- ITツールの契約や支払いを行う
- 事業実績を報告する
- 補助金の交付を受ける
- 実施効果を報告する
ここではそれぞれに分けて解説しますので、詳しく見ていきましょう。
ステップ1.導入するツールとIT導入支援事業者を選ぶ
補助金申請の際は、自社の業種や事業規模、経営課題を考慮してIT導入支援事業者と一緒に進めるようにしてください。まずは、導入したいITツールとIT導入支援事業者を選定し、ともに最適なツールの提案や導入のサポートを受けるとよいかもしれません。
IT導入支援事業者は、申請サポートや課題解決のためのパートナーだといえます。
ステップ2.「gBbizIDプライム」のアカウントを取得する
補助金の申請には「gBizIDプライム」のアカウント取得が欠かせません。取得には約2週間かかることから、事前に「gBbizID公式サイト」から手続きを済ませておくことをおすすめします。
申請に際して、中小企業庁が推進する「みらデジ」での経営チェック受講と「SECURITY ACTION」の宣言も必要です。
「みらデジ」は中小企業・小規模事業者の経営課題解決をサポートし、情報セキュリティ対策を自己宣言する「SECURITY ACTION」では「一つ星」または「二つ星」の宣言が要件とされています。
ステップ3.交付申請する
IT導入支援事業者の支援を受け、商談を進めながら交付申請の事業計画を策定することが重要です。申請者(中小企業・小規模事業者)は、申請マイページを利用して以下のステップで申請プロセスを進めます。
- 申請マイページにアクセスし、代表者氏名などの基本情報を入力
- 交付申請に必要な追加情報と必要書類を添付
- IT導入支援事業者がITツールの情報や事業計画値を入力
- 申請者が入力内容を最終確認
- 宣誓をして、事務局へ提出して申請完了
申請にはEC事業者だけではなくIT導入支援事業者と協力することが絶対に必要であり、事業計画や書類の準備には充分な時間が必要です。早めにIT導入支援事業者を選定し、プロセスをスムーズに進めることをおすすめします。
ステップ4.ITツールの契約や支払いを行う
申請完了後、IT導入補助金2023事務局から「交付決定」の連絡を受けるまで待ちます。その後、ITツールの発注・契約・支払いなどの手続きを進めていくことが重要です。
交付決定の連絡が届く前にこれらの手続きをしてしまうと、補助金を受け取れないおそれがあるため、注意してください。そのため、事務局からの指示に従い、手続きを正確に進めることでスムーズな支援を受けられます。
適切に手続きを進めることによって、ITツールの効果的な導入につながります。
ステップ5.事業実績を報告する
補助事業を完了したあと、実際にITツールの発注・契約・支払いをして、証明する証憑を提出します。この際、「申請マイページ」を利用して申請者自身が必要情報を入力し、事業実績報告を作成してください。
この際、IT導入支援事業者のサポートを受けて、必要な情報を補完してもらうことが重要です。
最終的に申請者が内容を確認し、事務局に提出することで申請プロセスが完了します。
ステップ6.補助金の交付を受ける
実績報告と証憑の提出を完了し、補助金額が確定したら、「申請マイページ」を活用して補助額を確認します。
補助額の確認は重要であり、内容を慎重にチェックすることが重要です。補助金の額に誤りがないことを確認したあとで、補助金が交付されるプロセスへと進みます。
一連の流れを正確に進めることによって、補助事業をスムーズに完了させられます。丁寧な確認作業を心がけ、補助金を最大限に活用してください。
ステップ7.実施効果を報告する
交付申請から受け取りまでの手続きを進める際には、ITツール導入後の効果を報告することが求められます。
定められた期間内に「申請マイページ」から必要な情報を入力し、その情報をIT導入支援事業者が「IT事業者ポータル」を通して確認してください。
情報入力と確認作業を終えたら、IT導入支援事業者に代理提出を依頼し、全ての手順が完了です。
ECサイト構築にIT導入補助金を利用する際の注意点は3つ
ECサイト構築にIT導入補助金を利用する際の注意点には、以下の3つが挙げられます。
- 複数枠への申請は減点になるケースもある
- 申請から交付までの時間がかかる
- 審査に必ず通るとは限らない
ここではそれぞれに分けて解説しますので、詳しく見ていきましょう。
1.複数枠への申請は減点になるケースもある
IT導入補助金の申請において、補助金の交付を受けられるのは、通常枠・セキュリティ対策推進枠・デジタル化基盤導入枠でそれぞれ1回ずつと定められています。
審査で不採用となった際、再度同じ枠への申請が可能です。しかし、複数の枠に申請する際には注意してください。
追加で申請した場合、審査が厳しくなり、減点対象となることがあります。特に、「デジタル化基盤導入枠」に申請後「通常枠」にも申請した場合、後者の審査が不利になることが想定できます。
2.申請から交付までの時間がかかる
IT導入補助金を申請しても、補助金を受け取るまでには時間がかかります。前年度のIT導入補助金2022のケースでは、申込み締切から交付決定まで約1カ月半がかかった事例があります。
さらに、交付が決定したあとでも、ITツールの導入と事業実績報告の完了が必要となり、これらのプロセスを経て初めて補助金を交付されるのが一連の流れです。
そのため、申請から交付まで数カ月程度の時間がかかると想定し、キャッシュフロー計画を立ててください。
3.審査に必ず通るとは限らない
時間をかけて準備や申請をしても、補助金の審査に必ず通る保証はありません。補助金は一定の採択枠が設けられており、競争が激しいことを想定してください。
補助金の受給を前提に事業計画を立ててしまうと、審査に通らなかった際に資金繰りが困難になるおそれがあります。また、補助金を受けられない状況も想定し、柔軟な事業計画を立てることが重要です。
申請準備に不安がある方は、ぜひジャグーへご相談ください。
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IT導入補助金以外でECサイト構築に使える補助金
IT導入補助金以外でECサイト構築に使える補助金には、以下のようなものが挙げられます。
制度名 | 目的 |
ものづくり補助金(中小企業庁) | 生産性向上に関する設備投資を支援する |
小規模事業者持続化補助金(日本商工会議所) | 地域雇用・産業を支える事業者の発展を図る |
事業再構築補助金(経済産業省) | 事業再構築に挑む企業を支援する |
非対面型サービス導入支援事業(東京都中小企業進行公社) | 感染拡大を防止するビジネスモデルへの転換を支援する |
BuyTOKYO推進活動支援事業補助金(東京都) | 都内の企業の販売およびPR活動を支援する |
また、ECサイトの補助金に関することはこちらの記事で詳しく解説しています。理解を深めたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
⇒【2023年最新版】ECサイトの構築に活用できる補助金は5つ|申請する際の注意点も徹底解説!
ECサイト構築におけるIT導入補助金でよくある3つの質
ECサイト構築におけるIT導入補助金でよくある質問には、以下の3つが挙げられます。
- 質問1.「SECURITY ACTION」とは?
- 質問2.持続化補助金との違いは何?
- 質問3.コーポレートサイト制作はIT導入補助金の対象となる?
ここではそれぞれに分けて解説しますので、詳しく見ていきましょう。
質問1.「SECURITY ACTION」とは?
「SECURITY ACTION」とは、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が提供している制度です。情報セキュリティ対策を自ら進めることを自己宣言するものとされています。
セキュリティの取り組み目標に応じ、「一つ星」または「二つ星」の宣言をする必要があります。この自己宣言を通じて、企業自身が情報セキュリティ対策に積極的に取り組む姿勢を示すことが目的です。
制度を利用することによって、企業は情報セキュリティ対策の向上を図るとともに、補助金申請の際の条件を満たせます。
質問2.持続化補助金との違いは何?
持続化補助金は、販路拡大を進める際にかかる費用の一部を補助する制度です。この補助金を利用することで、ECサイトやホームページの制作、チラシの制作・配布など、さまざまな方法で販路開拓を進められます。
ただし、この補助金の対象となるのは「小規模事業者」に限られており、たとえば、小売業を営む方の場合は従業員数が5名以下であることが条件です。
また、業種ごとに異なる制限が設けられているため、申請前に確認するようにしてください。
質問3.コーポレートサイト制作はIT導入補助金の対象となる?
IT導入補助金2023は、中小企業や個人事業主が売上を上げること、業務を効率化すること、そして企業間取引をデジタル化することを促進するための支援制度です。
情報を単純に告知することが目的のコーポレートサイト作成は、補助対象から除外されています。
2020年度からはホームページ作成全般が補助対象から外れましたが、売上アップや業務効率化に貢献する機能をホームページに組み込むことによって、補助金を活用できます。
まとめ
ECサイト構築における「IT導入補助金」について解説しました。IT導入補助金は、ECサイト構築時の負担を大幅に軽減できる制度だといえます。
申請時には、支援経験が豊富な事業者を選び、適切な手続きに沿うことが重要です。
また、注意点についても解説しましたので、事前にチェックしたうえで申請してください。
弊社、ジャグーでは補助金申請に関するサポート実績が豊富にありますので、支援事業者選びに迷っている方は、お気軽にご相談ください。
⇒ジャグー株式会社