「D2C」は、直接消費者に製品やサービスを提供するビジネスモデルです。近年、多くの業界で注目を集めており、ECにおいても無視できない存在といえます。
この記事では、D2Cモデルの成功事例と共通する特徴について解説します。これからD2Cモデルに取り組みたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
D2Cとは?
「D2C」は「Direct to Consumer」の略称となり、企業が直接消費者に製品を販売するビジネスモデルを指します。企業は商品の企画から販売までのプロセスを一貫して行います。また、インターネットやSNSの普及により、消費者は企業と直接のやり取りが可能です。
これらのことから、D2Cモデルは現代のビジネスにおいて強力な戦略となっています。
D2Cについて詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
⇒【初心者向け】D2Cの成功事例10選|D2Cが広まった背景とメリット・デメリットを詳しく解説!
D2Cが注目されている2つの背景
D2Cが注目されている背景には、以下の2つが挙げられます。
- SNSの普及
- 体験欲の向上
ここではそれぞれに分けて解説しますので、詳しくみていきましょう。
1.SNSの普及
D2Cが注目されている背景には、スマートフォンとSNSの普及が大きく影響しています。消費者の間ではInstagramやTwitter、YouTubeなどの利用が日常的です。
そのため、購買行動に影響を与えるKOL(Key Opinion Leader)と呼ばれるインフルエンサーが重要な役割を果たしています。
これにより、消費者は「ググる」から「タグる」へと情報収集の方法を変え、企業はSNSを通じてより効率的にブランドを展開し、D2Cモデルの成長を促進しています。
2.体験欲の向上
現代の消費者は、商品の機能以上にブランドの世界観やストーリーに価値を見いだしています。消費者は、ブランドの背後にある理念や制作過程に共感し、これが購入の決め手になっているのです。
この傾向は、D2Cモデルにおいてとくに顕著に現れており、ブランドが消費者との直接関わりにより、体験欲の向上が見込まれます。
D2Cの市場規模の動向
D2C市場は急速に成長しており、直接消費者に製品を提供する企業が増加しています。「売れるネット広告社」の調査では、2025年にはD2C市場が3兆円に達すると予測されています。
また、経済産業省の調査によると、2021年のB2C向けEC市場規模は約20.7兆円となり、前年比7.35%の成長を遂げました。
これらの調査結果から、D2Cモデルはビジネスを展開するうえで重要な販路のひとつです。
参考:『売れるネット広告社』が「デジタルD2C」の市場動向調査を実施 2025年には国内市場規模が3兆円に達すると予測
参考:電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました (METI/経済産業省)
D2Cの市場規模に関することをもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてみてください。
⇒国内におけるD2C市場の今後の動向|市場規模が拡大している理由や事業を成功させるための施策を徹底解説!
【ファッション】D2Cの成功事例5選
ファッション業界におけるD2Cの成功事例を5つ選んでご紹介します。
1.FABRIC TOKYO
引用:FABRIC TOKYO
FABRIC TOKYOはオーダーメイドスーツやシャツを販売するD2Cブランドです。顧客は店舗でサイズ測定をし、一部地域では出張採寸サービスも提供しています。
高価格帯のイメージがあるオーダースーツを、中間コストの削減により手頃な価格で提供しており、オンラインで商品の購入が可能です。
このブランドはD2Cモデルを活かし、顧客との直接的な関わりを大切にし、ECサイトや生産、顧客管理システムの最新技術を用いて効率化を図っています。また、市場のトレンドや顧客の声を商品開発に活かしています。
2.ALL YOURS
参考:ALL YOURS
ALL YOURSは、当時の流行に合わせた大量生産・大量商品のビジネスモデルに疑問を抱き、着飾らずに仕事やプライベートでも着回せるファッションを提供しているD2Cブランドです。
特徴として、着心地に重点を置いており、「ご自宅お試し制度」と呼ばれるサービスを展開しています。さらに情報発信のために、Instagram・TwitterなどのSNSを積極的に活用しており、直営店から離れた顧客に対しても商品に興味を持たせる環境を提供し続けています。
3.CRAFTCRAFTS
引用:【土屋鞄製造所】CRAFTCRAFTS – クラフトクラフツ
CRAFTCRAFTSは、古い土屋鞄製造所の鞄を無料で引き取り、修理して再販売するD2Cブランドです。この取り組みはサステナブルな活動として注目され、利用者の多くがサービスに「満足」と回答しています。
リユース品の購入者からも「状態が良い」「お得に購入できた」との声が多く、このようなアプローチは、環境への配慮と顧客への新たな価値提供に寄与しています。
4.土屋鞄製造所
引用:土屋鞄
土屋鞄製造所は、実店舗の運営と並行して、SNS、ブログ、ECサイトでの発信と販売を積極的にしているレザー製品の老舗ブランドです。工房を社内に持ち、製造過程を内製化しています。
このような取り組みは、職人の仕事に対する親近感を顧客に与え、ブランドの魅力を高めています。高品質な製品を提供しながら、品質向上とブランド構築に力を入れることで、D2Cで成功している事例です。
ランドセルや鞄、財布などの製品を取り扱い、ECサイトでの販売拡大により顧客層を広げています。
5.COHINA
引用:COHINA STORE
COHINAは、小柄な女性向けファッションを展開するアパレルブランドです。創設者は低身長であり、洋服選びの困難さから起業を決意しました。
2017年11月に初商品を自社ECサイトで販売開始し、Instagramフォロワーは初期の400人から22.9万人以上(2023年12月)に増加しています。この増加は、インスタライブを通じた日々の発信の成果といえ、広告や宣伝に頼らずに達成されている成功事例です。
【食品】D2Cの成功事例5選
食品業界におけるD2Cの成功事例を5つ選んでご紹介します。
1.nosh
引用:Nosh
noshは、冷凍宅配弁当のD2Cブランドです。専属シェフと管理栄養士が作るメニューは糖質と塩分を抑えつつ、ボリュームがある料理を提供しており、健康志向の女性や単身世帯の男性に支持されています。
また、YouTuberとのコラボ動画では、商品と関係ないジャンルでも80万回以上の再生を記録し、大きな反響を得ています。これにより、月間販売食数は18万食から150万食に大幅に増加しました。
2.Mr. CHEESECAKE
引用:ミスターチーズケーキ
Mr.CHEESECAKEは、フレンチレストラン出身の田村氏が立ち上げたチーズケーキブランドです。こだわりが反映されたチーズケーキは、冷凍・半解凍・全解凍の3通りの食べ方が楽しめます。
SNSを利用したマーケティングも成功し、Twitterでの投稿がインフルエンサーにリツイートされるなど、認知度を高めています。これにより、週2日の販売ながら、瞬く間に売り切れるほどの人気です。
3.THE ROAST BEEF
THE ROAST BEEFは、記念日や特別な日に高品質な「世界一アガるローストビーフ」を提供するD2Cブランドです。3週間熟成された肉、こだわりの調味料、正確な火入れ技術などに細心の注意を払っています。
高級品であることから、D2Cモデルの強みを活かして商品の魅力を伝えています。また、パッケージデザインから食事の終わりまで、顧客の期待を超える工夫もポイントのひとつです。
4.BASE FOOD
引用:ベースフード
BASE FOODは完全栄養の主食を提供するD2Cブランドとなり、収益の大部分は定期購入会員によるものです。2022年5月末時点で会員数は30万人を超えました。
BASE BREADやBASE PASTAなどは、シンプルでアレンジしやすい食材となっており、アンバサダーマーケティングに成功しています。
ECサイトでは栄養素の重要性や健康的な食事のメリット、おすすめの食べ方をわかりやすく紹介し、スムーズに購入できるプロセスを実現しています。また、SNSに投稿された写真付きのコメントやユーザーレビューも積極的に掲載し、消費者の信頼を獲得しているブランドです。
参考:ベースフード|STARTUP DB(スタートアップデータベース)
5.ZENB
引用:ZENB
ZENBは、ミツカンが展開するウェルビーイングな食生活を提案するD2Cブランドです。野菜ペーストの新技術開発がブランド立ち上げのきっかけとなり、とくに注目されているのは、黄えんどう豆を100%使用した「ZENBヌードル」です。
2022年1月には累計250万食を超える販売実績があります。既存ブランドや販路を使わず、新しい技術とEC中心の販売戦略を採用しました。消費者に「食の未来を変える」というビジョンを伝え、前年比で約8倍の売上増を達成しています。
【化粧品・コスメ】D2Cの成功事例5選
化粧品・コスメ業界におけるD2Cの成功事例を5つ選んでご紹介します。
1.BOTANIST
引用:BOTANIST
BOTANISTは累計販売数が1.5億以上に達し、国内ヘアケア市場で2位のシェアを誇るD2Cブランドです。オフラインからオンラインへの移行に力を入れており、営業組織と卸のコーディネーター機能の強化、棚割りのための商談やアテンションポップの充実を図っています。
植物由来成分と最先端のテクノロジーを融合したシャンプーにより、市場をリードするブランドに成長しました。スマートフォン向けのデジタルプロモーションに注力し、ボタニカルライフスタイルとSNS映えにこだわったデザインを採用し、現在の地位を築きました。
2.BULK HOMME
引用:BULK HOMME
BULK HOMMEは、男性用化粧品を取り扱うブランドです。化粧水や乳液などさまざまな商品を提供しています。ブランドの核となる「中身で勝負する」というコンセプトと背後にあるストーリーを通じたマーケティングが、強みです。
また、ECサイトや商品パッケージ、SNS、モデルに至るまで、イメージを洗練させ、統一感を持たせています。主なターゲットは20代から30代の男性となり、デジタルコンテンツに馴染みのある世代が、ブランドの認知を後押しています。
2020年の売上は前年比で1.5倍に達しました。日々の生活で使われる商品を中心に、サブスクリプション型ビジネスモデルを採用し、収益性を高めています。
3.オルビスユー
オルビスユーはORBISのリブランディングによって誕生したD2Cブランドです。「肌が本来持つ力を信じ、引き出す」というコンセプトに基づいています。
発売から2ヶ月で67万個を売り上げ、これまでのスキンケアシリーズの最高売上記録を更新しました。この成功は、企業の根本的なコンセプトへの回帰と、顧客との深い関係構築によるものです。オルビスユーは、高品質な製品を通じて、消費者の肌の健康を支えることに焦点を当てています。
4.Glossier
引用:Glossier
Glossierは、アメリカ発のD2C化粧品ブランドです。創業者はVOGUE誌のスタイリスト兼ファッションブロガーでした。コンセプトである「less is more」は、市場にある豪華で鮮やかな発色のコスメとは一線を画しています。
Glossierの製品は、女性の自然な美しさを引き出す透明感のある商品で知られており、プロモーションでは過剰な手法を避け、広告は主にInstagramやYouTubeを活用しています。
また、売上の約90%はオンラインショッピングが占めており、D2Cモデルとして成功している事例です。
5.PHOEBE BEAUTY UP
PHOEBE BEAUTY UPは、まつげ美容液のD2Cブランドです。商品の改善や使い方のサポートに力を入れています。
とくに、サブスクリプション解約の多かった理由「効果がわかりにくい」に応え、「ウィンクカード」を導入し、使用前後の比較を可能にしました。
今後は目元周りの製品を拡大し、ファン獲得を目指しています。DINETTE社のプライベートブランドとして、Instagramを中心にSNSマーケティングを展開し、約40万人のフォロワーを有するオウンドメディアでさまざまな悩みを解決する商品開発に注力しています。
このアプローチは、オンラインを主戦場とするD2Cブランドの成功事例です。
D2Cの成功事例に共通する特徴は4つ
D2Cの成功事例に共通する特徴には、以下の4つが挙げられます。
- 市場のトレンドを反映している
- ブランドの世界観をユーザーと共有している
- SNSを積極的に活用している
- 自分に合った商品を選びやすい
ここではそれぞれに分けて解説しますので、詳しくみていきましょう。
1.市場のトレンドを反映している
D2Cブランドの強みは、販売からサポートまでを一貫して自社で賄えることです。これにより、ユーザーの声や市場のトレンドを素早く取り入れ、製品に反映させやすくなります。
成功したD2Cブランドの多くはこの柔軟性を活かし、既存の顧客だけでなく新規顧客の獲得にも成功しています。たとえば、顧客からのフィードバックに基づき、ECサイトの購入方法を改善する場合においても、スピーディーな対応が可能です。
外注するのではなく、自社対応することにより、効率的かつスピーディーに市場のニーズに応えられるようになります。
2.ブランドの世界観をユーザーと共有している
成功しているD2Cブランドは、独自のブランド世界観を確立し、ユーザーと共有しています。とくにSNSを活用し、ブランドのストーリーやコンセプトを伝えることによって、消費者との深いつながりを構築可能です。
この方法により、ブランドのイメージとアイデンティティが強化され、消費者に独自の価値を提供します。
また、確立されたブランドの世界観は、ECサイトのデザインやSNSの投稿にも反映され、ブランドと消費者の間に一貫性と共感を生み出します。
3.SNSを積極的に活用している
成功を収めているD2Cブランドは、SNSを通じて消費者と積極的にコミュニケーションを取り、商品開発や販売戦略に反映しています。
たとえば、新商品の情報を提供し、消費者の反応を見て調整を行い、製品開発に参加しているような親近感を持たせることが可能です。
また、インフルエンサーの活用により、ブランドの認知度を高め、新たなフォロワーや顧客を獲得しています。
これらのように消費者の意見を製品開発に活かして、より顧客に寄り添った製品提供がブランドのファンを増やしています。
4.自分に合った商品を選びやすい
D2Cブランドは一方向的な商品提供ではなく、顧客との双方向コミュニケーションが可能です。
成功しているD2Cブランドの特徴は、顧客に合わせた商品提供や顧客が商品をカスタマイズできる仕組みづくりです。また、一部のブランドでは、診断結果に基づいてパーソナライズされた製品を提供しています。
このことから、消費者は自分に合った商品を積極的に選べるようになりました。
まとめ
D2Cブランドが成功するには、市場トレンドを反映した製品開発や世界観の共有、顧客にとって選びやすい商品提供が求められます。
これらは、ご紹介した事例に共通する特徴であり、D2Cブランドが目指すべき方向性です。
D2Cモデルは、今後もさらなる発展と革新を遂げることが予想され、ECにおいても重要な役割を担います。
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⇒ジャグー株式会社