国内のD2C市場規模は、拡大傾向にあります。このような背景には、一体何が理由としてあるのでしょうか?
この記事では、国内のD2C市場の現状や拡大の背景、成功事例やD2C事業を成功させるための5つの施策についてご紹介します。D2Cの現状について知り、ビジネスとして取り入れたい方はぜひ参考にしてください。
D2Cの市場規模
D2C(Direct to Consumer)の市場は拡大しており、2025年には3兆円に達すると予測されています。これは消費者へ直接商品やサービスを販売する企業の増加によるものです。
経済産業省の調査によると、2021年のB2C向けEC市場規模は約20.7兆円であり、2020年から7.35%伸びたことがわかりました。D2Cの成長は、消費者の直販サイト利用傾向の高まりとともに顕著になっています。ブランドの直販サイトを利用する消費者が50%以上いることも、D2C市場の成長を示しています。
参考:「デジタルD2C」の市場動向調査|売れるネット広告社@Press
参考:電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました|経済産業省
参考:「D2C」に関する生活者の購買行動やブランドへの意識を徹底調査|ネオマーケティング
国内におけるD2C市場の今後の動向
国内におけるD2C市場の今後の動向は、以下の2つが挙げられます。
- D2Cでの新規事業の立ち上げが増加する
- インフルエンサ―によるD2Cブランドが増加する
ここではそれぞれに分けて解説しますので、詳しくみていきましょう。
1.D2Cでの新規事業の立ち上げが増加する
今後、D2C(Direct to Consumer)ブランドとして最初から立ち上がる企業が増えると考えられます。これらのD2Cネイティブ企業は、消費者に強力に訴求する魅力的な体験価値を提供することに長けており、SNSなどのマーケティング手法も得意です。
体験から商品を生み出すアプローチにより、消費者の心を掴む商品を生み出し、ファンを作りやすい特徴を持っています。
2.インフルエンサ―によるD2Cブランドが増加する
インフルエンサーによるD2Cブランド立ち上げの増加が見込まれています。人気のあるインフルエンサーは、自身が真に支持する商品をプロモートする能力に長けており、彼らが立ち上げるブランドは、本人の好みを反映した商品化により、ファンを得やすい傾向にあります。
企業にとっては、商品との相性が良いインフルエンサーを起用することが有効な戦略です。そのため、すでにファンを持つインフルエンサーは短期間で売上を伸ばす可能性が高いといえます。
D2Cの市場規模が拡大している4つの理由
D2Cの市場規模が拡大している理由には、以下の4つが挙げられます。
- インターネットやSNSの普及
- ECサイトの構築が容易になった
- 消費者が体験価値を重視する傾向に変化した
- 生活様式が変化した
ここではそれぞれに分けて解説しますので、詳しくみていきましょう。
1.インターネットやSNSの普及
インターネットとSNSの普及は企業と消費者間のコミュニケーションの変化に大きく寄与しました。日本では、スマートフォンの利用率が68.3%、SNSの利用率が73.8%に達しています。
デジタルネイティブ世代がECサイトでのショッピングに抵抗を持たず、X(旧Twitter)、Instagram、YouTubeなどのプラットフォームを通じて、企業と消費者が直接情報を交換できるようになりました。これにより、従来の一方向のマスメディアから、双方向のコミュニケーションが可能な環境へと変化しました。
2.ECサイトの構築が容易になった
ECサイトの構築が容易になったことで、D2C市場への参入がしやすくなりました。ShopifyやBASEなどのサービスを利用し、デザイン性が高く魅力的なECサイトを手軽に作成可能です。とくにこれらのサービスは低価格ではじめられ、月額数千円からECショップが構築できます。
これにより、以前は高コストだったECサイト運営が低コストで可能になり、消費者への直接販売がより手軽に実現できるようになりました。
3.消費者が体験価値を重視する傾向に変化した
現代消費者は商品の機能よりも体験価値を重視しています。スマートフォンやSNSの普及に伴い、「モノよりも体験」や「共感できるものへの投資」を望む傾向が強まっていきました。
D2Cブランドはこの変化に対応し、消費者が共感しやすい、事業主の原体験に基づいた商品を開発しています。これにより、高い体験価値を提供し、消費者との強いつながりを築いています。
4.生活様式が変化した
コロナ禍の影響で生活様式が変化し、非対面のサービス利用と通販の需要が高まりました。Amazonでは、四半期連続で過去最高益を達成したほどです。
これにより、多くの企業がD2Cマーケティングに注力しはじめ、EC市場の成長が加速しました。消費者はWebを通じた生活の楽しみ方を発見し、商品の体験価値を重視するようになりました。この変化は、パンデミック後も続いています。
D2C事業を成功させるための5つの施策
D2C事業を成功させるための施策には、以下の5つが挙げられます。
- 消費者が拡散したくなる商品を開発する
- WebとSNSを活用する
- ブランド力を向上させる
- サブスクリプションサービスを提供する
- 物流サービスの質を改善する
ここではそれぞれに分けて解説しますので、詳しくみていきましょう。
1.消費者が拡散したくなる商品を開発する
D2Cにおける商品開発は、消費者がSNSで拡散したくなるような魅力的な商品を作ることが重要です。高品質で思わずほかの人にシェアしたくなる商品は、自発的なSNSの投稿を促します。
また、高評価のレビューやインフルエンサーによる口コミはブランド認知と売上の向上に大きく貢献します。このため、独自性と機能性を兼ね備えた商品を企画することが効果的です。
2.WebとSNSを活用する
D2Cビジネス成功の鍵はWebとSNSの活用にあります。自社ECサイトを立ち上げたとしても、直ちにアクセスが増えるわけではないため、継続的な宣伝活動で顧客獲得を目指すことが大切です。
Web広告やSNS広告を利用し、商品やサービスへの関心を高める戦略が推奨されます。また、インフルエンサーを活用して商品認知を拡大することも重要です。
D2Cマーケティングについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
⇒D2Cマーケティングの5つの手法|ビジネスを成功させるためのマーケティング戦略について徹底解説!
3.ブランド力を向上させる
D2Cビジネスにおいて、ブランド力を高めるには、自社のコンセプトやストーリーを伝え共感を得ることが重要です。
商品開発の背景や思いをコンテンツ化し、ECサイトやSNSを通じて長期的に発信し続けることが効果的です。これにより、ブランドのイメージや世界観を顧客に届けられます。
Eコマースとは異なるアプローチで顧客を惹きつけ、ビジネスを拡大させられます。
4.サブスクリプションサービスを提供する
サブスクリプションサービスを提供することは、定期的な売上を確保する有効な手段です。サブスクリプションとは、月単位や年単位で料金を支払い継続して商品やサービスを受け取るシステムです。サービス内容には主に2つの種類があります。
- 消耗型サブスクリプション
- サプライズ型サブスクリプション
消耗型サブスクリプションは、定期的に商品が届くサービスです。サプライズ型サブスクリプションは、毎回異なる商品が届くサービスになります。このようなサービスを利用することで、企業は長期的な収入源を得られるため、顧客は定期的に必要な商品を受け取れます。
5.物流サービスの質を改善する
物流サービスの質向上は、D2Cビジネスでの顧客満足度を高めるうえで重要です。美しいラッピングや梱包にこだわることでブランドイメージを強化し、顧客体験を向上させられます。
また、クーポンやサンプルの同梱、配送日時指定や即日発送など、顧客の利便性を考慮したサービス提供がリピート購入を促進します。ただし、これらのサービスを提供するには、物流に関する専門知識やリソースが必要であり、場合によってはアウトソーシングの活用が効果的です。
D2Cの成功事例5選
D2Cの成功事例5選をピックアップしました。手法やプロセスなどをご紹介します。
1.Factelier
引用:Factelier
ファクトリエはメイドインジャパンの工場直結型ブランドです。日本製の高品質な商品を適正価格で提供しています。
ファクトリエのビジョンは「日本の工場から世界一流ブランドを作る」です。国内の指定工場で製造された品質の高い製品を展開しています。原価率は業界平均より高く、広告宣伝費をほとんど使わずに売上を伸ばしています。2012年の立ち上げから約4年で売上10億円に成長しました。今後も成長が期待されるブランドです。
2.CREDONA
引用:CREDONA
CREDONAは、アパレルブランド「Ungrid」で8年間店員を務めた後インフルエンサーとなったYURI氏を中心に立ち上げた会社です。
YURI氏は若い世代の女性たちから支持を集め、約5万人のフォロワーを持っています。CREDONAは広告費を一切かけずに、YURI氏のフォロワーをターゲットにして初日で4,000万円の売上を記録し、D2C戦略での成功事例となりました。
3.BASE FOOD
引用:BASE FOOD
BASE FOODは、1食で1日の栄養素の1/3を摂取できる完全栄養食ブランドです。2017年に「BASE PASTA」としてスタートし、自社ECや全国の卸販売を通じて販売しています。
定期購入が主な収益源です。顧客継続率は非常に高いといえます。マーケティング戦略は顧客の声に基づいており、定期購入の飽きを防ぐため、商品ラインナップを拡大しています。また、2022年には大規模な資金調達を実施し、東京証券取引所のグロース市場に上場しました。
4.BOTANIST
引用:BOTANIST
BOTANISTは、シャンプーブランドであり、Instagramを活用したUGC(ユーザー生成コンテンツ)に基づくマーケティング戦略を実施しています。
この戦略では、実際に商品を使用した顧客による投稿を促し、新規顧客に対して商品のメリットや体験を具体的にイメージさせています。この方法により、製品の試作開始から約一ヶ月でランディングページのコンバージョン率を1.73倍に増加させる成功を収めました。
5.FUJIMI
引用:FUJIMI
FUJIMIは、ユーザーの肌に合わせたサプリメントやフェイスマスクをサブスクリプション形式で提供するブランドです。美容診断サイトを通じて肌の状態を分析し、個々の肌悩みに合わせた製品を提供しています。
2019年の販売開始から2021年には売上高が1億7300万円から13億5,000万円へと大幅に伸び、約50万人が肌診断を体験しました。広告媒体の多様化と、ポーラ・オルビスホールディングスの子会社化により、更なる成長が見込まれています。
D2Cの成功事例については、こちらの記事で詳しく解説しています。
⇒D2Cの成功事例15選|D2Cが注目されている背景や成功事例に共通する特徴を詳しく解説します!
D2C市場規模でよくある3つの質問
D2C市場規模でよくある質問には、以下の3つが挙げられます。
- 質問1.海外のD2C市場規模は?
- 質問2.D2Cのメリットは?
- 質問3.D2Cのデメリットは?
ここではそれぞれに分けて解説しますので、詳しくみていきましょう。
質問1.海外のD2C市場規模は?
米国のD2C eコマース市場は過去6年で3倍以上に成長しています。2016年に約4兆9,000億円だった市場は、2021年に約17兆4,000億円に拡大しました。2024年末には約28兆9,000億円に達すると予想されています。
この市場規模の拡大は、経済産業省の報告によると、以下の背景が影響しているとされています。
- 百貨店やアパレル大手の倒産
- プライベートブランドの定着
百貨店やアパレル大手の倒産と店舗閉店があり、これにより製造者がB2BからD2Cへのシフトを余儀なくされました。また、小売事業者によるプライベートブランドの定着も、市場拡大を後押しています。
質問2.D2Cのメリットは?
D2Cの主なメリットは、以下の5点です。
- 販売方法の自由度が高い
- 自社のコンセプトを伝えやすい
- 費用を削減して利益率を高められる
- ダイレクトに顧客と接点を持てる
- 顧客データを集めやすい
今までのマーケティング方法と異なり、消費者との距離感が近く、顧客データを集めやすい点がメリットです。顧客と接点を増やしながら自社のコンセプトを伝え、オリジナリティを生み出しやすい要素が、D2Cの魅力となっています。
質問3.D2Cのデメリットは?
D2Cビジネスの主なデメリットは、以下の3点です。
- 初期費用の負担が大きい
- 売上が安定するまでに時間が必要
- 商品力・ブランド力が求められる
Web広告やSNS広告、インフルエンサーへの依頼など、認知度が上がるまで初期費用の負担は大きくなります。また、商品力とブランド力が重要です。競合との差別化を図るためには、魅力的な商品開発とブランド構築が欠かせません。
まとめ
国内のD2C市場の現状や拡大の背景、成功事例やD2C事業を成功させるための5つの施策についてご紹介しました。市場規模の拡大を見てもわかる通り、D2Cはこれからもますます拡大していく市場です。この記事を参考にして、D2Cマーケティングを取り入れてみてください。
しかし、D2Cビジネスに参入しても、知識やノウハウがないと結果を出すのは非常に難しい施策です。D2Cでお悩みの方は、弊社ジャグーにぜひ一度ご相談ください。
⇒ジャグー株式会社