EC市場への参入を検討している方で、市場規模や今後の動向について気になっている方も多いのではないでしょうか。

そこで、この記事では、日本国内におけるEC市場規模や越境ECの市場規模、EC市場の今後のトレンドについて解説します。また、 EC市場拡大における課題についても解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。

EC市場とは?

EC(electronic commerce)市場とは、インターネットを介して商品やサービスが売買されるビジネスの市場全体を表す用語です。日本では、「電子商取引」として知られ、その規模は年々拡大しています。

経済産業省の「電子商取引に関する市場調査(令和元年)」によると、ECは「インターネットを利用して、受発注がコンピュータネットワークシステム上で行われる」と定義されています。

参考:電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました (METI/経済産業省)

BtoC ECの定義

BtoC-EC(Business to Consumer Electronic Commerce)は、企業が消費者に向けて商品やサービスを販売する電子商取引の形態です。この取引方式は、私たちの日常生活で頻繁に利用されています。

たとえば、ネットスーパーやAmazon、楽天市場などの大手モール型ECサイトでの購入は、すべてBtoC-ECに分類されます。BtoC-ECにより、消費者は簡単に商品をオンラインで購入できるようになりました。

BtoB ECの定義

BtoB EC(Business to Business Electronic Commerce)とは、企業間の電子商取引を意味します。この形態では、企業がほかの企業に製品やサービスを提供します。

BtoB ECでは、主に業務用部品や原材料、事務用品などが取引されるケースが多いです。また、BtoB ECは、取引過程のデジタル化により、コスト削減や業務の効率化に寄与しており、企業間の関係を強化する役割も果たしています。

CtoC ECの定義

CtoC-EC(Consumer to Consumer Electronic Commerce)は、消費者同士がインターネットを介して商品やサービスを売買する形態の電子商取引です。ネットオークションやフリマアプリを通じた取引が、このCtoC-EC市場の代表例として挙げられます。

  • CtoC-EC市場は主に以下のカテゴリに分類されます。
  • 総合プラットフォーム事業者
  • 特定カテゴリーのアニメ、本、ブランド品、チケット、家電
  • ハンドメイドマーケット

前二者ではリユース品(二次流通品)も取引されます。それに対し、ハンドメイドマーケットでは個人のクリエイターが自ら作った商品を販売するため、新品のみの取引となります。

日本国内におけるEC市場規模

次に、日本国内におけるEC市場規模について解説します。

  • BtoC ECの市場規模
  • BtoB ECの市場規模
  • CtoC ECの市場規模

それぞれについて詳しくみていきましょう。

BtoC ECの市場規模

2022年の日本国内におけるBtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模は、前年と比較して顕著な増加を見せ、22兆7,449億円に達しています。この数値は、2021年の20兆6,950億円から9.91%の増加です。

とくに、コロナ禍の影響が顕著だった2020年の19兆2,779億円からの回復は目覚ましく、市場の成長傾向が明確になっています。また、BtoC-ECにおけるEC化率は9.13%に上昇し、前年比0.35ポイントの増加を記録しました。

これは、日本における商取引のデジタル化が着実に進行していることを示しています。

参考:令和4年度 電子商取引に関する市場調査|経済産業省

物販系分野のEC市場規模

2022年における日本の物販系分野のBtoC-EC市場規模は、13兆9,997億円に達し、2021年と比較して5.37%の増加を遂げました。この成長は、新型コロナウイルスの影響で変化した消費者の行動が大きく影響しています。

物販系分野におけるEC化率は8.78%で、これは前年比で0.7ポイントの上昇です。この数値から、物販系の消費の大部分、約91%以上が実店舗で実施されている現状が浮き彫りになります。

参考:令和4年度 電子商取引に関する市場調査|経済産業省

デジタル系分野のEC市場規模

2022年の日本におけるデジタル系BtoC-EC市場規模は2兆5,974億円で、前年2兆4,614億円から成長しています。なかでもオンラインゲームが市場最大の1兆3,097億円を占めるものの、前年比で18.79%と減少傾向です。

一方、有料動画配信は4,359億円、有料音楽配信は1,023億円、電子出版は6,253億円と、いずれも順調な伸びを見せています。とくに電子出版市場はスマートフォンの普及により拡大し、電子コミックが市場を牽引しています。

参考:令和4年度 電子商取引に関する市場調査|経済産業省

サービス系分野のEC市場規模

2022年の日本のサービス系BtoC-EC市場規模は6兆1,477億円で、前年比で32.43%の大幅な増加を遂げました。新型コロナウイルスの影響により、とくに旅行や飲食サービス、チケット販売が大きく影響を受け、市場全体としては前年よりわずかに伸びました。

旅行サービスは依然として市場規模が最大で、2兆3,518億円ですが、前年比で67.95%の増加です。一方で、フードデリバリーサービスは新型コロナウイルス感染症拡大を契機に急成長し、2022年の市場規模は5,300億円となっています。

このように、サービス系BtoC-EC市場では、新型コロナウイルスの影響がさまざまな形で現れ、市場の動向に差が出ています。

参考:令和4年度 電子商取引に関する市場調査|経済産業省

BtoB ECの市場規模

2022年のBtoB-EC(企業間電子商取引)市場規模は、420兆2,354億円に達し、前年比で12.8%増加しました。また、EC化率は前年から1.9ポイント増の37.5%です。

BtoB-EC市場に関連する重要なトピックとしては以下の二点があります。

  • INSネット(デジタル通信モード)サービス終了に伴う変化
    2024年1月のINSネットサービスの終了に伴い、EDI(電子データ交換)のシステム更新が必要。NTTの固定電話網がIP網に移行することで、事業者は新しいデジタル通信モードや通信プロトコルの導入、業務プロセスや情報送受信方法の見直しが求められている
  • 適格請求書等保存方式(インボイス制度)の導入
    2023年10月からはじまった消費税の仕入税額控除の新方式である適格請求書等保存方式(インボイス制度)への対応も、BtoB-EC市場に影響を与えている。課税事業者は、適格請求書発行事業者としての登録、電子インボイスの作成、送受信、保存などに対応する必要がある

これらのトピックは、BtoB-EC市場の運営や発展において重要な役割を果たし、事業者には新たな挑戦と機会を提供しています。

参考:令和4年度 電子商取引に関する市場調査|経済産業省

CtoC ECの市場規模

2021年の2兆2,121億円から2022年には2兆3,630億円へと成長した日本のCtoC-EC市場規模は、6.8%の伸び率です。この市場の拡大にはフリマアプリ市場の成長が寄与しており、新型コロナウイルス感染症の流行に伴う外出自粛や在宅勤務の増加が、家の整理や出品の増加につながっています。

しかし、2022年には社会が沈静化し、外出機会の増加と外国人客の回帰により実店舗の需要が回復しています。とくに中古ブランド品の需要が高まり、リユース市場全体の顧客単価が増加傾向です。

また、2022年5月に施行された「取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律」により、CtoC-ECプラットフォーム事業者は不正出品の防止と安全な取引環境の提供に努めなければなりません。

参考:令和4年度 電子商取引に関する市場調査|経済産業省

越境ECの市場規模

越境EC市場は、とくにアメリカと中国を日本企業の主要取引相手として成長を続けています。中国からの日本商品購入額は2兆円を超え、さらなる商取引の増加が見込まれています。

この市場環境は、越境ECに参入する日本企業にとって大きなビジネスチャンスです。日本国内で越境ECへの参入は増加傾向にあり、ECサイトを開設し運用することで、海外の消費者をターゲットにできます。

また、国内に実店舗がある場合は、日本を訪れた外国人が店舗を訪れるきっかけにもなります。

参考:令和4年度 電子商取引に関する市場調査|経済産業省

EC市場の今後のトレンドは5つ

次に、EC市場の今後のトレンドについて解説します。

  • パーソナライゼーション
  • ライブコマース
  • オムニチャネル
  • サブスクリプションサービス
  • D2C

それぞれについて詳しくみていきましょう。

1.パーソナライゼーション

インターネットとスマートデバイスの普及により、消費者は多くのECサイトを比較し、商品やサービスを選択できます。そのため、EC事業者は価格競争のみならず、顧客体験の向上にも注力しなければなりません。

パーソナライゼーションは、消費者の属性や行動履歴を分析し、個々に合わせたコンテンツやサービスを提供することで、顧客一人ひとりに適した価値を提供します。これにより、顧客満足度の向上と競合との差別化が図れます

2.ライブコマース

ライブコマースは、EC市場における最新のトレンドのひとつで、SNSやECサイト上でリアルタイムに動画を配信し、商品やサービスを宣伝・販売する手法です。とくにインフルエンサーが商品を紹介する場合、これはインフルエンサーマーケティングの一形態となります。

ライブコマースのメリットは、実店舗のような直接的な商品説明が可能な点です。これにより、消費者は商品の形状やサイズ感を写真以上に理解でき、購入時におけるリスクを減らせます。

主に化粧品やアパレル業界で採用されているライブコマースは、今後さらに多くの業界へと広がると期待されています。

なお、ライブコマースについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。
ライブコマースにおすすめのアプリ・サービス10選|市場規模や始める際のステップついて詳しく解説します!

3.オムニチャネル

オムニチャネル戦略では、実店舗、ECサイト、アプリ、SNSなど複数のチャネルをシームレスに統合し、顧客体験の質を向上させることが目的です。スマートフォンやタブレットの普及に伴い、顧客の購買行動は多様化しており、従来の実店舗のみやECサイトのみのマーケティングでは限界があります。

オムニチャネル化により、消費者は複数のチャネル間をシームレスに移動でき、より快適な購買体験を得られます。事業者は、各チャネルのデータを統合し一元管理することで、顧客のニーズに合わせたサービスを提供し、効率的な運営が可能です。

4.サブスクリプションサービス

サブスクリプションサービスは、定額制でさまざまな商品やサービスを提供するビジネスモデルで、EC市場における重要なトレンドの1つです。このモデルは、従来のデジタルコンテンツに留まらず、食品の定期配送などの物理的な商品へも拡大しています。

初期費用が不要で経済的な点がメリットで、所有ではなく利用を重視する現代消費者の嗜好に合っている点が、トレンドの背景にあります。しかし、サブスクリプションサービスでは、解約方法が不明瞭であるなどのトラブルも多く、透明で誠実な信頼性の高いサービス提供が必要です。

5.D2C

D2C(Direct to Consumer)は、製造業者が外部のECモールを介さずに自社ECサイトで直接消費者に商品を販売するビジネスモデルです。EC市場において大手モールのシェアが大きい現状では、競合との差別化が困難な場合があります。

この問題への対応として、製品やサービスを直接消費者に提供し、ブランドの価値を高め、顧客との直接的な関係を築くことが可能です。最近のSNSやオウンドメディアの活用の広がりは、自社ECサイトの構築と運用を容易にし、顧客とのコミュニケーションを促進します。

また、自社ECサイトの開設と運用に必要なプラットフォームやツールの充実、決済システムの導入の簡便化により、D2Cモデルの採用は今後さらに加速すると予測されています。

なお、D2Cについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。
国内におけるD2C市場の今後の動向|市場規模が拡大している理由や事業を成功させるための施策を徹底解説!

EC市場拡大における3つの課題

次に、EC市場拡大における課題について解説します。

  • 物流体制の整備
  • セキュリティ対策
  • 専門知識のある人材の不足

それぞれについて詳しくみていきましょう。

1.物流体制の整備

消費者の増加に伴い、注文量が急増しているため、効率的で迅速な配送体制の構築が求められています。注文量に対応するためには、倉庫の容量拡大や配送ネットワークの強化が不可欠です。

また、配送中の商品の破損や盗難リスクの軽減も、消費者の信頼を維持するために重要なポイントです。商品の保護や追跡システムの強化、信頼できる配送業者との連携は、サービスの質を高めるために欠かせません。

2.セキュリティ対策

総務省「令和2年通信利用動向調査」によると、情報漏洩に対する消費者の不安は依然として高まっており、ECサイト運営者はこの問題に対処する必要があります。

個人情報の管理と保護はもちろん、消費者に対して「安心して利用できるECサイトである」というメッセージを効果的に伝える工夫が求められています。

参考:令和2年通信利用動向調査の結果(概要)|総務省

3.専門知識のある人材の不足

EC市場の拡大に伴い、運営やマーケティング、物流などの専門知識を持つ人材の需要が高まっています。ECサイトの利用者層が多様化していることから、幅広いニーズに対応できる人材が不足しているのが現状です。

そのため、企業は内部教育や外部研修を通じて従業員のスキルアップを図ると同時に、新しい技術やトレンドに対応できる人材の積極的な採用が求められています。EC市場での競争力を維持し、市場の変化に柔軟に対応するためには、適切な人材の確保と育成が重要です。

EC市場でよくある3つの質問

最後に、EC市場でよくある質問について解説します。

  • 質問1.国内ECモールの売上ランキングは?
  • 質問2.ECを成功させるコツは?
  • 質問3.EC市場規模が拡大している背景は?

それぞれについて詳しくみていきましょう。

質問1.国内ECモールの売上ランキングは?

国内ECモールの売上(流通金額の推定)ランキングは以下のとおりです。

順位モール名売上高
1Amazonジャパン6兆7,937億円
2楽天5兆6,301億円
3Yahoo!ショッピング1兆7,547億円

このように、Amazonジャパンと楽天がほかのECモールに大きな差をつけ、国内ECモールの1位と2位になっています。

質問2.ECを成功させるコツは?

ECの運営を成功させるコツは以下の3つです。

  • 質の高い商品の販売
    ECで売上を伸ばすためには、消費者のニーズに基づいた質の高い商品を提供することが重要。商品の価格設定にも注意を払い、競合他社の商品や価格を調査し、自社商品への適切な設定が求められる
  • ターゲットの明確化
    商品の販売対象となるターゲットを明確にすることで、効果的なマーケティング戦略を展開できる。ターゲットの年齢や性別、興味関心を考慮し、適切な広告やプロモーションを実施することで売上増加が見込める
  • 回遊しやすい導線の設計
    サイト上でスムーズな購入プロセスを提供するためには、回遊しやすい導線の設計が重要。直感的で使いやすいデザインや商品のカテゴリ分け、検索機能の最適化により、消費者の購入体験や購入率の向上につながる

質問3.EC市場規模が拡大している背景は?

EC市場規模の拡大の背景には次のような要因が挙げられます。

  • インターネットとスマートフォンの普及
    インターネットの普及とモバイル端末の利用拡大により、いつでもオンラインショッピングが楽しめるようになった
  • キャッシュレス決済の普及
    キャッシュレス決済の普及により、クレジットカードや電子マネーなどの非接触型決済が一般化し、ECでの支払いがスピーディーかつ容易になった
  • 巣ごもり需要の増加
    新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛に伴い、在宅でのオンラインショッピングが増加した

これらの要因が複合的に作用し、EC市場は急速に成長を遂げています。今後も市場の拡大が予想され、2025年には世界市場規模が7.9兆ドル(約930兆円)に達すると見込まれています。

まとめ

この記事では、日本国内におけるEC市場規模や越境ECの市場規模、EC市場の今後のトレンド、EC市場拡大における課題について解説しました。

日本国内におけるEC市場は拡大傾向にあり、今後も市場の拡大が期待されています。そのなかでも、今後はパーソナライゼーションやライブコマース、オムニチャネルなどの需要が増加する見込みがあるため、これらを戦略的に展開することで、ビジネスチャンスの獲得につながります。

ぜひ、この記事を参考にEC市場への参入を検討してみてはいかがでしょうか。

なお、ECサイトの立ち上げでお困りの場合は、ECサイトの支援実績が豊富なジャグーまでご相談ください。
ジャグー株式会社