ECサイトを運営するうえで、「カゴ落ち」に悩む方も少なくありません。カゴ落ちの背景にはユーザーのさまざまな心理や理由が隠されています。
本記事では、カゴ落ちが起こる具体的な理由や、それを解消するための施策、そして対策を強化するためのおすすめのツールを網羅的にご紹介します。ECサイトの売上を最大化するための一助として、ぜひこの情報を活用してください。
ECサイトの「カゴ落ち」とは?
カゴ落ちとは、ECサイトの利用者がショッピングカートに商品を追加したものの、購入を完了せずに離脱してしまう現象を指します。
この「商品をカートに入れた」という行動は、利用者がその商品に強い興味を持っている可能性を示しています。そのため、適切なアプローチで購入を促す「カゴ落ち対策」を施せば、購入の確率を高めることが可能です。
カゴ落ち率の計算方法
カゴ落ち率の算出方法について説明します。まず、算出に必要な数値は、特定期間にECサイトへ訪れた「ユーザー総数(アクセス総数)」と、同期間中に「CVに至ったユーザー数」です。
これらの数値からカゴ落ちとなったユーザー数を次の式で導きます。
- カゴ落ちユーザー数=アクセス総数-CVに至ったユーザー数
そして、このカゴ落ちユーザー数をアクセス総数で割ることで、特定の期間内のカゴ落ち率を得られます。
- カゴ落ち率=カゴ落ちユーザー数÷サイトへのアクセス総数
これにより、ECサイトの運営者はカゴ落ちの傾向や対策の必要性を具体的に把握することが可能です。
カゴ落ち率の平均値は「69.99%」
ネットショップの売上を向上させる際に、対策が欠かせないのが「カゴ落ち」問題です。この問題を数値で示す指標として「カゴ落ち率」があり、売上アップの鍵は「カゴ落ち率」をいかに低くするかにかかっています。
Baymard Institute社の2018年の調査によれば、世界のECサイトのカゴ落ち率の平均は69.99%という驚きの数字が明らかになっています。これは、訪問者の約7割が商品をカートに入れつつも購入を完了せず、サイトから離脱しているのです。
参考:49 Cart Abandonment Rate Statistics 2023 – Cart & Checkout – Baymard Institute
ECサイトでカゴ落ちが起こる主な理由
ジャストシステムの調査によれば、「送料や手数料が高かった」がカゴ落ちの主な理由とされています。
決済ページに移動した際、予期しない送料や手数料の発生に驚き、取引を中断するユーザーは多いようです。また、以下の点もカゴ落ちの原因として挙げられます。
- アカウント登録の必要性
- 複雑な手続き
- 不明瞭な合計金額
- 長い配送時間
- サイトの信頼性の不足
- エラーやクラッシュの発生
- 返品の難しさ
- 限られた決済方法
- クレジットカードの不使用
これらの問題点を改善することが、カゴ落ちを減少させる鍵となります。
参考:ECのカゴ落ち、理由は「送料・手数料の高さ」/10代のQR決済利用率は約3割【ジャストシステム調査】:MarkeZine(マーケジン)
ECサイトのカゴ落ちを防ぐ9つの施策
ECサイトのカゴ落ちを防ぐ施策には、以下の9つが挙げられます。
- 複数の配送方法を用意する
- 決済までのプロセスを短縮する
- 事前に合計金額が分かるようにする
- 返品・交換の条件を記載する
- 会員登録の方法を簡略化する
- カゴ落ちメールを送信する
- サーバーの強化を図る
- SSL証明書のロゴを掲示する
- 外部のコンサルに相談する
ここではそれぞれに分けて解説しますので、詳しく見ていきましょう。
1.複数の配送方法を用意する
一般的に、多くの顧客は配送のスピードよりも送料無料を重視しています。配送に時間がかかっても送料無料のプランを好む傾向です。
しかし、急ぎの顧客のなかには、配送日数が長いと購入を見送るケースも考えられます。そのため、急いで配送するオプションや配達日指定、コンビニ受け取りなど、複数の配送方法を提供することがおすすめです。
2.決済までのプロセスを短縮する
アカウント作成や入力フォームの手間が、商品の購入に至らないケースが多々あります。アカウント作成せずに購入する選択や、アカウント作成のメリットを明確にすることで、より多くの顧客情報を収集し、リピート層の獲得を目指すことが重要です。
また、入力フォームを効率的に整理し、UIの改善をしながら、操作のシンプルさを追求すれば、CVRの向上を期待できます。
一方、決済方法に関しても、利用者の多様なニーズに応えることが求められます。
たとえば、クレジットカード決済は多くの利用者に選ばれていますが、すべての人がそれを望むわけではありません。家族に購入履歴を知られたくない人もいます。そのため、多様な決済方法を取り入れることがおすすめです。
3.事前に合計金額が分かるようにする
ECサイトの利用者は、商品の価格だけでなく、送料や手数料、消費税などの追加コストにも敏感です。
実際に、多くの人がショッピングカートに商品を追加した後、「送料や手数料が高い」という理由で購入を控えることが知られています。
たとえば、ショッピングカートの時点で合計金額や追加費用がいくらかかるのかを明示してください。ECサイトを運営する際には、利用者の視点に立ち、予想以上のコストが発生しないようなサイト設計を心掛けることが必要です。
4.返品・交換の条件を記載する
サイズが合わないときや、思っていたものと違った場合、返品や交換の条件が明確であるかどうかが、購入の決め手の一つです。
衣服をECサイトで購入する際は、サイズの不安が伴います。そのため、返品可能かどうかが明示されていなければ、顧客は購入を躊躇する可能性が高まるのです。
返品の条件を分かりやすく、明確に記載することで、顧客は安心して商品の購入に進めます。
5.会員登録の方法を簡略化する
ネットショップでの購入の際、会員登録が求められる場面は多くあります。運営者は顧客に会員登録してもらい、次回の購入を期待するのです。
しかし、顧客はこの会員登録のステップで心理的ハードルを感じ、購入を断念することがあります。
そのため、会員登録不要での購入オプションを提供することがおすすめです。難しい場合は、少なくとも登録手続きの簡素化を検討し、顧客の利便性を向上させる方向で工夫が求められます。
6.カゴ落ちメールを送信する
カゴ落ちは、購入を断念するだけでなく、サイトを一時離脱したり、ほかのECサイトと比較したりするなど、さまざまなケースがあります。
カートに商品を入れたことを忘れがちな利用者に対しては、カートに商品が残っている状態をリマインドする「カゴ落ちメール」の送信が効果的です。
カゴ落ちメールには、再度の購入を促し、ほかのサイトへの流出を防ぐことが期待できます。また、メールアドレスが分かっているユーザーであれば、このアプローチはとくに有効であり、顧客の購買体験を向上させることにつながります。
7.サーバーの強化を図る
購入申し込みフォームでの入力中のエラーやクラッシュは、カゴ落ちの主な原因の1つです。
この問題を解決するためには、入力フォームのアシスト機能を活用してください。誤入力を赤文字で即座に指摘して修正を促すことが効果的です。
さらに、新製品の発売日やセールなど、多くのアクセスが集中するイベントがある場合には、サーバーのキャパシティを増強してクラッシュのリスクを最小限に抑える準備が必要です。スムーズな購入プロセスが提供でき、顧客満足度を高められます。
8.SSL証明書のロゴを掲示する
ECサイトを利用する際には、個人情報を入力する必要があります。しかし、安全性が確認できないサイトでは商品の購入をためらうのがほとんどです。
安全性が不安視されるサイトでは、カゴ落ちのみならずサイト自体からの離脱率も高まるため、運営者は注意が必要です。
安全性をアピールする手段として、SSL証明書のロゴをサイト上に表示する方法があります。このロゴがあると、「個人情報を保護しています」や「このサイトは安全です」といったメッセージが利用者に伝わり、信頼感を高められます。
9.外部のコンサルに相談する
ECコンサルタントは、ECサイト立ち上げとビジネス運営をサポートする専門家です。ECサイトでは店舗の構築だけでなく、集客、接客、顧客や売上の管理、在庫の調整など、多岐にわたる業務が必要とされます。
多様な業務をこなすためには、Webの知識だけではなく、事業全体を見渡し管理できるビジネススキルが求められます。ECビジネスを成功へと導くためには、ECコンサルタントのサポートが非常に有益です。
スキルや運営ノウハウを兼ね備えたECコンサルタントは、自社が運営するECサイトの課題の特定や、適切な方向性の提案を提供してくれます。
ジャグーなら、多彩な運営スキルや豊富なノウハウであなたのEC事業を強力にサポートします。まずはお気軽にご相談ください。
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カゴ落ち対策におすすめのツール4選
カゴ落ち対策におすすめしたいツールを4つ選んでご紹介します。
1.カゴ落ちメール(レコメンドメール)
カゴ落ちメールとは、カートに商品を入れたものの購入まで至らなかった顧客に対し、再購入を促すためにメールを送る手法です。メール内容のカスタマイズが可能かどうかは、非常に重要なポイントとなります。
選定基準としては、メールの送信頻度やタイミング、作成のしやすさ、顧客に対する提案の多角性、コスト面を検討してください。特に、顧客心理を理解し、適切なタイミングで適切な内容のメールを送信できるツールの選定が望まれます。
内容のカスタマイズが難しいと不自然なコミュニケーションとなり、効果が薄れてしまうので注意が必要です。
2.Web接客ツール
Web接客ツールは、サイト訪問者が抱える疑問や不安に対し、チャットなどを通じて解決するためのツールです。このツールを選ぶ際、注目すべきポイントは数多くあります。
お知らせ機能の有無や内容、チャット機能がAIか有人か、さらにサポートサービスの品質など、これらすべてがユーザー体験に直結します。特に、チャット機能がAIか有人かは、運営負担と提供できるサポートレベルを左右する重要な要素です。
手厚いサポートを提供したい場合は有人チャットを、効率的に基本的な問い合わせに対応したい場合はAIチャットの導入を検討してください。
3.決済フォーム改善ツール
決済フォーム改善ツールは、購入プロセスの効率化を図る重要なツールです。このツールを選定する際、入力補助、エラー表示、必須項目の強調表示の有無など、ユーザビリティ向上のための機能をチェックすることが重要です。
また、ユーザーの離脱ポイントを特定できる分析ツールの存在は欠かせません。ヒートマップ機能やABテストが可能なツールを選ぶことで、決済フォームの最適化を図れます。決済代行サービスとの連携のしやすさや、導入可能な決済手段の多様性も重要なポイントです。
料金体系については、事前にCV数に基づく変動か、固定制かを確認し、追加料金の有無にも注意を払う必要があります。分析ツールの充実度や、機能とコストのバランスを見極めて選択することが、決済フォームの最適化へとつながるといえます。
4.MAツール
カゴ落ちメールや決済フォーム改善など、複数の機能を統合しているMAツールは、ビジネスを効率化する上で非常におすすめです。MAツールは提供会社によって機能が多種多様です。シンプルなものから、分析や施策の実行までを幅広くカバーできるものまであります。
自社のニーズに合わせて最適なMAツールを選定することが重要です。ビジネスプロセスを効率的に改善し、より良い成果を得られます。MAツールを総合的に評価し、賢く活用していくことが、ビジネス成功への近道です。
ECサイトのカゴ落ちでよくある3つの質問
ECサイトのカゴ落ちでよくある質問には、以下の3つが挙げられます。
- 質問1.カゴ落ちメールを配信するには?
- 質問2.ECサイトにおける離脱率の平均値は?
- 質問3.EC運営代行とは?
ここではそれぞれに分けて解説しますので、詳しく見ていきましょう。
質問1.カゴ落ちメールを配信するには?
カゴ落ちメール施策を効果的に行うためには、顧客がどのタイミングで、どの商品をカートに入れたまま購入を完了しなかったかを正確に把握し、迅速に対応する必要があります。これには、カゴに残された商品情報を含むメールを素早く作成し、配信する作業が必須です。
一般的なメルマガ配信システムを利用することも可能です。しかし、集客から販売促進、顧客管理に至るまでのプロセスを自動化できるマーケティングオートメーション(MA)ツールの導入なら、一元的かつ効率的な運営が実現できます。
カゴ落ちメールに特化した専用ツールもありますが、総合的なビジネス運営を考慮した場合、MAツールの導入がよいかもしれません。
質問2.ECサイトにおける離脱率の平均値は?
ユーザーの行動パターンの多様性から、離脱率の平均値を算出するのは困難です。具体的な基準値が公開されているわけでもありません。
個々のWebサイトの状況を細かく分析し、自分のサイト内での離脱率の推移を比較検討することが重要です。ほかのサイトと比べるよりも、自社サイトのページ同士で相対的な評価をしてください。
離脱率が以前は75%前後で推移していたものが、急に70%後半や80%台に変動した場合、それはWebサイトやページの改善タイミングかもしれません。そして、これらの変動を見逃さないためにも、離脱率を定期的にモニタリングし続ける必要があります。
ECサイトの平均的な離脱率に関しては、こちらの記事で詳しく紹介しています。
⇒【担当者向け】ECサイトにおける離脱率の平均値|改善する8つの対策について徹底解説!
質問3.EC運営代行とは?
EC運営代行は、インターネット上での商品やサービスの取引をサポートするサービスです。商品企画、ページ作成、広告出稿、在庫や物流の管理、カスタマーサポート、SNS運用など、ECサイト運営に関わる幅広い業務をサポートします。
運営代行を利用することで、専門的な知識を要する多岐にわたる業務から解放され、効果的なコンサルティングを受けながら、業務を進められます。
EC運営代行を活用することは、とくに知識やリソースが限られている場合におすすめです。専門的な業務をプロフェッショナルに任せることで、効率良くECサイトを運営し、ビジネスを成長させられます。
ECサイトの運営代行に関しては、こちらの記事で詳しく紹介しています。
⇒【2023年最新版】楽天市場における成功事例8選|成功している店舗の特徴も徹底解説します!
まとめ
「カゴ落ち」は、ECサイト運営者にとって避けられない問題ともいえます。その原因や背後にあるユーザーの心理を理解することで、有効な対策が打てることを紹介しました。
ユーザーの購買経路やサイト内の操作性、価格設定や支払い方法など、さまざまな要因がカゴ落ちに影響を与えています。
今回ご紹介した施策やツールを適切に組み合わせて実践することで、カゴ落ち率を低減し、売上向上への道が開けます。
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