この記事の監修者

鈴木 将太 |CMO

大手メーカーでの企画職や個人事業の経験を持つ。現在は大手企業からベンチャー企業まで、幅広い企業のマーケティング伴走支援やWebディレクションを担当。
BtoBマーケティングを幅広く網羅し、サイト設計に深い理解を持つ。トレンドを取り入れたデザインから業界特化型のデザインまで柔軟に対応しています。

BtoBマーケティングに取り組む企業が増えるなかで、「良かれと思ってやったことが成果につながらなかった」という経験を持つ担当者は少なくありません。

ここで紹介するPENGINの3つの事例では、対象の絞り方、リソースの配分、工程の増やし方に問題がありました。そこから、着手する順序と、やめる条件を先に決めておくことの重要性を学んでいます。

この記事の結論
紹介する3つは、いずれもPENGINが実際にやってしまった失敗です。どれも施策としては正しく見えるもので、間違っていたのは順序でした。最後に、失敗に気づいたときにどこから確認するかもまとめています。

BtoBマーケティング全体の進め方はBtoBマーケティングとは?、戦略の立て方はBtoBマーケティング戦略の立て方で解説しています。

PENGINが自社運用で経験した3つの失敗を並べた図。ターゲットを狭めすぎてリード数が減った例、保有リードを優先して新規開拓が鈍った例、ファネルを細かく分けすぎて工程ごとに人が減った例を、何をしたか・何が起きたかで整理しています。
PENGINの自社運用での経験。業種・商材単価・営業体制が異なれば結果は変わります。

失敗例①:量より質を優先しすぎる

BtoBマーケティングでは、営業部門から「もっと質の高いリードを」と求められることがよくあります。しかし、これに応える形でターゲットを狭めすぎると、かえって成果が出ないことがあります。

PENGINでも、社員数100名以上・事業部長以上に限定して施策を実行したことがあります。リードの質そのものは向上しましたが、リード数が大きく減少しました。結果として相談数も減り、商談にはつながりませんでした。

なぜ起きるのか

BtoBでは、1件の受注に至るまでに複数の商談が必要になります。そのため、入口の母数が小さくなると、率を改善しても件数が増えにくくなります。

また、「質が高いリード」の定義が、実際の受注データではなく営業の印象で決まっていることもあります。この場合、絞り込んだ条件が本当に受注につながる条件とは限りません。

どう修正するか

PENGINでは、最初から質で絞るのではなく、一定の量を確保したうえで営業と連携して有望な見込み客を見極める流れを基本にしています。

絞り込む条件を決めるときは、印象ではなく実際に受注した企業の共通点から逆算します。絞る前後で、リード数・商談数・受注数のどれが増えて、どれが減ったかを必ず並べて確認します。

失敗例②:新規リードよりも保有リードを優先しすぎる

「既存リードからならコストをかけずに成果が出るのでは」と考え、保有リードの掘り起こしに注力しすぎるのも、よくある落とし穴です。

理論上は効率的に見えますが、掘り起こしにも営業リソースは必要です。PENGINの運用では、保有リードからの商談化率は0.1%未満にとどまることが多く、新規リードと比べて費用対効果は低くなりました。

一方、新規リードからの商談化率は、獲得した接点の種類によって次のように分かれました。

接点の種類PENGINの運用での商談化率
見積もり依頼・無料相談50〜80%
資料請求(サービス・プロダクト)約30%
ホワイトペーパーテーマによっては10%以上

この数値の読み方
これはPENGINが自社のマーケティングを運用するなかで得た経験値です。集計期間・母数の定義は社内運用上のもので、業界平均でも、他社に当てはまる基準値でもありません。接点の種類ごとに商談化率が大きく違うという点が、ここで確認したいことです。

接点別の商談化率をふまえたリード獲得の進め方はBtoBのリード獲得にまとめています。

なぜ起きるのか

保有リードは、獲得した時点と現在で検討状況が変わっています。担当者が異動している、すでに他社で導入済み、そもそも検討していなかった、といったケースが混ざるため、接触あたりの成果は下がりやすくなります。

どう修正するか

保有リードの活用をやめる必要はありません。ただし、手作業での掘り起こしに営業リソースを使い続けるのではなく、仕組み化・自動化で効率を上げつつ、新規開拓の手を緩めないことが重要です。

どちらに投資するかは、保有リード件数、獲得からの経過期間、営業体制、商材単価によって変わります。「新規が常に有利」と一般化せず、自社の数値で比較してください。

失敗例③:ファネル設計を細かくしすぎる

マーケティングに力を入れる企業ほど、ファネルを細かく分けて、各ステージに対応するコンテンツを作ろうとします。

たとえば「一般的なウェビナー」→「製品説明ウェビナー」→「個別相談」と段階を分ける設計です。理論上は理想的に見えますが、実際には工数の割に成果が出ないことがあります。

PENGINの運用では、一般的なウェビナーで50名を集客できても、製品ウェビナーに進むのは1〜5名ほどでした。そこから商談化するのは0〜1件という結果です。

この数値の読み方
これはPENGINが自社のマーケティングを運用するなかで得た経験値です。集計期間・母数の定義は社内運用上のもので、業界平均でも、他社に当てはまる基準値でもありません。段階を増やすほど、各工程の歩留まりが掛け算で効いてくるという点が要点です。

なぜ起きるのか

同じ対象者が順番に進む設計では、各段階に離脱があれば人数は減っていきます。歩留まりは掛け算で効くため、工程を増やすほど最後まで残る人数は少なくなりやすいと言えます。ただし、追加した工程が後段の理解度や商談化率を上げる場合もあるため、最終的な商談数・受注と工数で判断します。

さらに、段階ごとにコンテンツを作る工数も増えます。「理想的な設計」を作ったつもりが、工数だけが増えている状態になりやすくなります。

どう修正するか

PENGINでは、最初のコンテンツで相談化まで一気通貫で完結させることを重視しています。

一般的な課題テーマに触れつつ、製品の魅力も伝えられるウェビナーやホワイトペーパーを用意すると、コンテンツ一本あたりの成果は高まりやすくなります。

ただし、検討期間が長い商材や、社内稟議に複数人が関わる商材では、段階を分けることが有効な場合もあります。工程数は、自社の検討プロセスの実態に合わせて決めてください。

BtoBサイトでよくある失敗例

マーケティング施策そのものではなく、受け皿であるBtoBサイト側で失敗していることもあります。せっかく流入を増やしても、サイトで止まっていれば商談は増えません。

PENGINが相談を受けるなかで多いのは、次のようなケースです。

よくある失敗起きていること確認する場所
デザイン刷新だけで終わる見た目は新しくなったが、載っている情報は変わっていない比較検討に必要な情報が足りているか
ページを増やすことが目的になるサイトマップは大きいが、判断材料が見つからない誰が何を判断するために見るか
問い合わせフォームだけを増やすCTAは増えたが、押す理由が説明されていない読者の検討段階と提示する行動が合っているか
リニューアルでSEO資産を失うURL変更・ページ削除で既存の検索流入が消えた301・canonical・内部リンクの移行設計
公開をゴールにする公開後に数値を見る運用体制がない問い合わせ内容と商談化まで追えているか

デザインの決め方はBtoBサイトのデザイン、既存サイトの見直し手順はBtoBサイトリニューアルの進め方、他社の構成を確認したい場合はBtoBサイトの成功事例で整理しています。

問い合わせが増えない原因の切り分けは、BtoBサイトのCVR改善方法で5層に分けて解説しています。

失敗に気づいたら、この順序で確認する

成果が出ないとき、新しい施策を足したくなります。しかしPENGINでは、先にどこで落ちているかを決めます。

BtoBマーケティングがうまくいかないときに確認する順序を、計測、母数、対象、段階、撤退条件の5段階で示した図。新しい施策を足す前に、どこで落ちているかを先に決める考え方を表しています。
PENGIN整理。外部で確立された標準フレームではありません。
  1. 計測:そもそも正しく数えられているか。フォーム送信が計測されていない、テスト送信が混ざっている、といった不備を先に潰します。
  2. 母数:対象が少なすぎて率が振れていないか。数件の増減を施策の効果と読み違えていないかを確認します。
  3. 対象:狙う相手を絞りすぎていないか。絞り込み条件が、実際に受注した企業の共通点から作られているかを見ます。
  4. 段階:工程を分けすぎて落ちていないか。各工程の歩留まりを並べ、掛け算でどれだけ残るかを確認します。
  5. 撤退条件:やめる基準を決めてあるか。いつまでに何がどうなっていなければやめるかを、着手前に決めます。

施策が動き出さない、続かないという状態そのものについては、BtoBマーケティング施策が進まない3つの原因で扱っています。

失敗を減らすために、着手前に決めておくこと

PENGINでは、施策に着手する前に次の4点を書き出します。

  • この施策で増やしたいのは、リード数・商談数・受注数のどれか
  • 成果が出たと判断する基準はどの数値か
  • いつまでに、どの水準に届かなければやめるか
  • 同時期に変更する他の施策は何か

特に4点目は見落とされがちです。広告とサイトとコンテンツを同時に変えると、結果が出ても出なくても、何が効いたのか説明できなくなります。

実際にどの施策から着手するかの判断は、BtoBマーケティングの手法とBtoBマーケティングの成功事例も参考にしてください。

よくある質問

Q.ターゲットは絞らない方がよいのですか?

A.

絞ること自体が問題ではありません。問題は、実際に受注した企業の共通点ではなく営業の印象で絞り込み条件を決めてしまうことと、絞った後にリード数・商談数・受注数を並べて確認していないことです。

Q.保有リストの掘り起こしはやめるべきですか?

A.

やめる必要はありません。ただし手作業での掘り起こしに営業リソースを使い続けるのではなく、仕組み化・自動化で効率を上げることをおすすめします。どちらに投資するかは、保有件数、獲得からの経過期間、営業体制、商材単価によって変わります。

Q.ウェビナーは段階を分けない方がよいのですか?

A.

商材によります。検討期間が長い商材や、社内稟議に複数人が関わる商材では段階を分けることが有効な場合もあります。工程を増やすと歩留まりが掛け算で効くことを踏まえ、自社の検討プロセスの実態に合わせて決めてください。

Q.記事にある商談化率は自社の目標にしてよいですか?

A.

おすすめしません。記事の数値はPENGINが自社運用で得た経験値で、集計期間や母数の定義は社内運用上のものです。業界平均でも他社の基準値でもありません。自社の接点別の実測値を並べて比較してください。

まとめ|失敗の多くは、施策ではなく順序で起きる

この記事で紹介した3つは、いずれもPENGINが実際にやってしまった失敗です。ターゲットを絞ること、保有リードを活用すること、ファネルを設計することは、どれも施策としては正しく見えます。

間違っていたのは、どの順序で着手し、どこまでやったらやめるかを決めていなかったことでした。

成果が出ないときは、施策を足す前に、計測・母数・対象・段階・撤退条件の順で確認してください。

PENGINの支援事例はPENGINの実績・事例で公開しています。

PENGINでは、戦略設計からコンテンツ制作、サイト改善、運用まで一気通貫で支援しています。施策を形だけで終わらせず、商談につながる仕組みをつくりたい方はマーケティング伴走支援をご覧ください。受け皿となるサイト側から見直したい場合はBtoBサイト制作もあわせてご確認ください。
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