複数のストリートブランドを展開するyutoriは、若年層向けアパレル企業として急成長を続けています。
2026年3月期の連結売上高は約142.3億円で、2025年3月期の約83.1億円から大きく伸長しました。経常利益も約6.5億円から約10.2億円へ増加しています。
この記事では、過去の成長率だけを切り取るのではなく、最新の決算数値とPENGINのマーケティング視点を分けながら、yutoriの成長構造を考察します。
yutoriの現在地
株式会社yutoriは2018年設立。複数のアパレルブランドを企画・運営し、2026年3月末時点の連結従業員数は261名です。
公式IRによると、2026年3月期の売上高は142億3,467.8万円、経常利益は10億1,566.8万円。2025年3月期から売上高は約71%増加しています。
ここまでの道のり
yutoriは最初から現在の形だったわけではありません。
創業当初は、Instagram上の古着コミュニティの潮流を捉えたUGCメディアとしてスタートしました。そこから古着の仕入れ・EC販売へ進みますが、一点物は撮影・出品の工数がかかるうえ、売れてしまえば同じ商品を再度扱えないという構造的な壁に突き当たります。
転機はオリジナルTシャツの即完売でした。ここで自社ブランドへ集中する判断を下し、量産可能で、かつ世界観を作り込めるブランド事業へ舵を切ります。
BtoBに置き換えると、「受注できるが再現性のない案件」を続けるか、型を作って積み上がる事業へ転換するかという判断に近い局面です。
成長要因1:単一ブランドではなくブランド群を経営する
yutoriの特徴は、一つの巨大ブランドに依存せず、複数ブランドを束ねて成長する点です。市場トレンドや顧客層が変化しても、ブランドポートフォリオ全体で成長機会を取りにいけます。
これはBtoB企業でいえば、「一つの集客チャネル」「一つのサービス」に依存しない事業ポートフォリオ設計に近い考え方です。
yutoriがこれを運用できているのは、仕組みがあるからです。
ブランドの立ち上げ方に型があります。 最初にブランドの象徴となるアイコン商品を一点集中で作り、熱量を最大化する。次にコラボレーションで認知とラインナップを広げる。ファンが育った段階でポップアップや店舗展開へ進む、という順序です。
投資配分と撤退基準が決まっています。 多ブランド展開を前提に「Yリーグ」という枠組みを設け、どのブランドにどれだけ投資するか、どの条件で撤退するかを管理しています。ブランドを増やすこと自体ではなく、増やしても崩れない管理の仕組みが成長を支えています。
BtoB企業がサービスラインを増やすときも同じで、立ち上げの型と撤退基準がないまま数だけ増やすと、どれも中途半端になります。
成長要因2:顧客理解をブランド表現へ直結させる
若年層向けのブランドでは、機能的な差だけでなく、世界観や所属感が選択理由になります。商品、SNS、モデル、クリエイティブ、店舗・ECを分断せず、一つのブランド体験として設計している点が強みです。
組織構成もこれを後押ししています。社員の平均年齢がターゲット層と近く、EC起点であるため営業中心ではなくクリエイティブ中心の体制になっています。企画会議でアイデアが重複するほど感覚が近いという状態は、顧客解像度の高さの裏返しです。
BtoBで同じ解像度を得るには、意図的に接点を作る必要があります。顧客インタビューや営業同席といったリアルな接点と、SNS・検索クエリ・サイト内行動ログなどのデジタルデータ。どちらか一方では、顧客が「何に、なぜ反応するのか」までは見えません。
成長要因3:デジタル接点を販売チャネルだけにしない
SNSやECは単なる購入導線ではなく、顧客理解、ブランド認知、コミュニティ形成の接点です。
BtoBでも同様に、Webサイトやオウンドメディアを「問い合わせを取る場所」だけでなく、比較候補に入り続ける情報接点として設計する必要があります。
成長要因4:成長に合わせて組織と資本を拡張する
2026年3月期には総資産・純資産も拡大しています。急成長企業ではマーケティング施策単体より、ブランド追加、採用、在庫、資本、組織運営を連動させる必要があります。
「施策が当たったから成長した」と単純化せず、事業システム全体として見るべきです。
BtoB企業が学べる3つのこと
1. 顧客セグメントごとに価値提案を明確にする
全員に同じメッセージを届けるより、顧客の文脈に合わせてサービス・コンテンツを分けます。
2. ブランドと獲得を分離しすぎない
短期CVだけでなく、継続的な接触と想起形成を設計します。
3. Webサイトをブランドのデータベースにする
会社、サービス、実績、思想、顧客の声が一貫して確認できる状態は、人間だけでなくAI検索時代の情報探索にも重要です。
まとめ
yutoriの成長を「SNSがうまい会社」とだけ捉えると、本質を見誤ります。複数ブランドの運営、顧客理解、デジタル接点、組織・資本の拡張が連動している点に注目すべきです。
BtoB企業でも、個別施策の最適化だけでなく、どの顧客にどの価値を届け、どの接点で理解を積み上げるかを統合的に設計する必要があります。
出典
関連サービス
自社の顧客理解を起点に、サイト・コンテンツ・CV導線まで一貫して設計したい企業向けに、PENGINではマーケティング伴走支援を提供しています。
関連記事
よくある質問
-
Q.アパレル企業の事例は、BtoB企業でも参考になりますか?
-
Q.記事内の決算数値はいつ時点のものですか?