BtoBマーケティングの戦略を考えるとき、「SEOをやるべきか」「広告を増やすべきか」「展示会に出るべきか」と、施策から考え始めてしまうことがあります。
しかし、SEOや広告を選ぶこと自体は戦略ではありません。
PENGINでは、戦略とは「有限なリソースを、目標達成のためにどう配分するかが明確になり、言語化されている状態」だと考えています。
企業には達成したい売上や利益、事業目標があります。一方で、予算、人員、時間は有限です。すべての施策を同時に、同じ強度で実行することはできません。
だからこそ、どこに集中し、何を後回しにし、何をやらないのかを決める必要があります。
この記事では、BtoBマーケティング戦略を、一般的なフレームワークの紹介だけではなく、事業成果から逆算して実際に何を判断すればよいのかという実務視点で解説します。BtoBマーケティング全体の基本から確認したい方は、BtoBマーケティングとは?もあわせてご覧ください。
この記事の結論
BtoBマーケティング戦略とは、SEOや広告などの施策を選ぶことではありません。事業目標と有限なリソースという制約の中で、「誰が・なぜ買うのか」を理解し、現在の最大のボトルネックを見つけ、最も成果につながる場所へ予算・人・時間を配分することです。
BtoBマーケティング戦略とは
BtoBマーケティング戦略とは、企業間取引を行う企業がマーケティング目標を達成するために、誰を狙い、どのような価値を提供し、限られた資源をどこへ配分するのかを決めることです。
ここで重要なのは、「戦略」と「戦術」「計画」を分けることです。
- 戦略:どこに資源を集中するか、何を優先し何を捨てるか
- 戦術:SEO、広告、SNS、展示会、メールなど具体的に使う手段
- 計画:KPI、予算、担当者、スケジュールなど実行方法
例えば、「SEO記事を月10本作る」は戦略ではなく計画です。
その前に、
- なぜSEOへ投資するのか
- 誰からのアクセスを増やしたいのか
- そのアクセスは商談・受注につながるのか
- 広告や営業施策よりSEOを優先する理由は何か
まで説明できて、初めて戦略になります。
なぜ戦略が必要なのか
戦略が必要になるのは、目標があり、リソースが有限だからです。
予算も人員も時間も無限なのであれば、考えられる施策をすべて実行すればよいかもしれません。しかし、実際の企業活動ではそうはいきません。
限られた条件の中で成果を最大化するには、優先順位が必要です。
「何をするか」だけでなく、何をしないかを決めることも戦略です。
BtoBマーケティング戦略に「万人共通の正解」はない
BtoBマーケティングには、すべての企業に当てはまる唯一の正解はありません。
同じBtoB企業でも、少なくとも次の条件によって戦略は大きく変わります。
ターゲット
大企業の経営層を狙うサービスと、中小企業の実務担当者を狙うサービスでは、有効な接点も意思決定プロセスも異なります。
事業フェーズ
立ち上げ直後の事業と、すでに受注パターンが確立している成熟事業では、必要な投資が違います。
商材
単価、粗利、契約期間、継続率、購買頻度、検討期間によって、許容できるCACや適切なチャネルは変わります。
投資余力
十分な予算と人員を持つ企業と、短期間で投資回収しなければ次の予算を確保できない企業では、同じ施策でも優先順位が変わります。
例えば、赤字を許容してでも市場シェアやトップラインを伸ばす局面もあります。一方で、多くの企業では、小さく投資して早めに回収し、その利益を次のマーケティング投資へ回す方が持続的です。
したがって、「SEOは必ずやるべき」「CPAは○円以下であるべき」といった前提条件のない一般論だけでは、戦略は作れません。
既存事業と新規事業では戦略の作り方が違う
戦略策定の方法は、既存事業と新規事業でも異なります。
既存事業は、すでに存在するデータから考える
既存事業では、すでに顧客や商談、問い合わせ、Webアクセスなどのデータがあります。
確認できるものはできるだけ確認します。
- どの企業が受注しているか
- どの案件が失注しているか
- 何が受注理由・失注理由になっているか
- どこから問い合わせが発生しているか
- 問い合わせ後にどれだけ商談化しているか
- MA上でどのような行動をしているか
- 継続率やアップセル率はどうか
既存事業では、ゼロから理想的なペルソナを作るよりも、実際に起きている事実から勝ち筋とボトルネックを探す方が有効です。
新規事業は「Will × Can × Needs」から仮説を組み立てる
一方、新規事業には十分な顧客データがありません。
そのためPENGINでは、少なくとも次の3つを確認します。
- Will:本当にやりたい事業なのか。熱意を持って長期間続けられるか
- Can:その事業で勝てる能力・優位性・リソースがあるか
- Needs:顧客ニーズがあり、十分な市場が存在するか
市場が大きくても、自社に勝てる理由がなければ難しい。逆に、自社が得意でも市場ニーズがなければ事業にはなりません。
新規事業では、この3つが重なる場所を仮説として見つけ、小さく検証しながら精度を高めていきます。
戦略策定の前に「誰が・なんで買うの?」を明確にする
BtoBマーケティング戦略を考える際に、最も重要な問いの一つが、
「誰が・なんで買うの?」
です。
ここでいう「誰」は、企業属性だけではありません。
- どのような企業の
- どの部署・役職の人が
- どのような状況で課題を感じ
- 何をきっかけに情報収集を始め
- どの選択肢と比較し
- なぜ最終的に自社を選ぶのか
まで理解する必要があります。
ペルソナを作ること自体を目的にしない
年齢や性格を細かく書いたペルソナシートを作っても、それだけで戦略は良くなりません。
重要なのは、実際の購買行動を理解することです。
そのため、可能であれば、
- 顧客インタビュー
- 受注・失注分析
- 商談録
- 営業担当者へのヒアリング
- 問い合わせ内容
- MAデータ
- 検索クエリやWebアクセス
など、使える情報は組み合わせて確認します。
定量データと定性情報の両方を見ることで、「誰が・なぜ買うのか」の解像度を高められます。
PENGINが考えるBtoBマーケティング戦略の7ステップ
ここから、実際に戦略を組み立てる流れを7つに整理します。
1. 事業目標と制約条件を明確にする
最初に決めるのはマーケティング施策ではなく、事業として何を達成したいのかです。
例えば、
- 売上を伸ばす
- 粗利を増やす
- 特定市場でシェアを取る
- 新規顧客数を増やす
- 継続率を高める
では、取るべき戦略が異なります。
同時に、
- 予算
- 人員
- 時間
- 営業キャパシティ
- 制作・供給能力
などの制約も確認します。
事業目標だけ決めて、実行可能なリソースを見なければ、戦略ではなく願望になってしまいます。
2. 顧客と「買う理由」を理解する
次に、誰がなぜ買うのかを整理します。
既存事業であれば受注実績や商談データ、新規事業であれば顧客インタビューや仮説検証を使います。
この段階で、
- 顧客が抱える課題
- 購買トリガー
- 競合・代替手段
- 自社を選ぶ理由
を言語化します。
検討がどの段階で進み、誰が関わるかはBtoBの購買プロセスにまとめています。
3. 事業成果からファネルを逆算する
マーケティング目標は、事業目標から逆算します。
例えば、
売上・粗利
→ 受注数
→ 商談数
→ 有効リード数
→ CV数
→ 必要な接点・流入
という順番です。
月10件リードを増やすことが目的なのではなく、必要な受注数を生むために何件の商談・リードが必要なのかを考えます。
ここではマーケティング部門だけを見るのではなく、インサイドセールスやフィールドセールスまで含めます。
リード数だけ増やして商談化率が落ちれば、事業成果は伸びないからです。
逆算の計算式と、指標を分ける単位はBtoBマーケティングのKPIで解説しています。
4. ボトルネックを特定する
ファネルを確認し、どこが現在の成長を最も妨げているかを考えます。
例えば、
- 認知されていない
- アクセスが少ない
- サイトには来るがCVしない
- リード品質が低い
- ナーチャリングが機能していない
- ISのアプローチに課題がある
- 商談はあるが受注しない
などです。
ただし、ファネルだけを見るのも十分ではありません。
商品・価格・事業計画・営業データ管理など、ファネルの外に根本原因がある場合もあります。
顧客から「SEOをしたい」「Webサイトを作りたい」と相談されたとしても、その施策をそのまま実行する前に、本当にそれが事業成果を阻害している課題なのかを確認します。
5. 限られたリソースの配分を決める
ここで初めて施策の優先順位を決めます。
SEO、広告、SNS、展示会、Webサイト改善、メール、インサイドセールスなどの選択肢から、現在のボトルネックを解消するために有効なものを選びます。各施策の特徴を比較したい場合は、BtoBマーケティングの具体的な手法も参考にしてください。
すべてを同時にやるのではなく、
- 予算
- 人員
- 時間
- 成果までの速度
- 成功確度
- 資産性
などを見ながら配分します。
重要なのは、「どの施策をやるか」ではなく、「どこへどれだけ資源を振るか」です。
6. KPI・検証条件・撤退条件を決める
戦略は一度作って終わりではありません。
特に、新規事業や新しいチャネルでは、最初から正解を当てることは困難です。
そのため、
- 何を仮説として置くか
- どの先行指標を見るか
- どの期間検証するか
- どの状態になれば追加投資するか
- どの状態なら撤退・変更するか
を決めます。
「うまくいかなかったら考える」のではなく、事前に反証条件を決めておくことで、都合の悪いデータを無視しにくくなります。
7. 実行し、学習結果を次の資源配分へ反映する
施策を実行したら、結果を次の戦略判断へ戻します。
重要なのは、施策単位の勝ち負けだけではありません。
「広告CPAは改善したが商談化しなかった」のであれば、次に改善すべき場所は広告とは限りません。
「SEO流入は増えたが受注につながらない」のであれば、狙うテーマやCVポイント、ナーチャリングなど別の問題を疑います。
戦略とは固定された計画書ではなく、学習に応じて資源配分を変え続けるための判断基準でもあります。
BtoBマーケティング戦略に使える代表的なフレームワーク
フレームワークは戦略そのものではありませんが、情報を整理し、議論の抜け漏れを減らすための道具として有効です。
- PEST分析・3C分析:市場環境、顧客、競合、自社の状況を整理するとき
- STP分析:市場を分け、狙う顧客と自社の立ち位置を決めるとき
- カスタマージャーニー:顧客が課題を認識してから比較・検討・購入するまでの行動や接点を整理するとき
- ファネル・ユニットエコノミクス:売上・粗利から必要な受注、商談、リード、投資額を逆算するとき
重要なのは、フレームワークを埋めること自体を目的にしないことです。必要な問いに答えるために、必要なフレームワークだけを使います。
より多くの型を確認したい場合は、BtoBマーケティングで重要となるフレームワークも参考にしてください。
短期施策と中長期施策をどう配分するか
BtoBマーケティングでは、短期で成果を出す施策と、中長期で効く資産性の高い施策をどう配分するかも重要です。
ここにも万人共通の比率はありません。
大企業や大規模ブランドで十分な投資余力がある場合は、ブランド、独自研究、コンテンツ、PRなど、中長期施策へ余裕を持って投資できます。
一方、投資余力が限られる企業では、短期施策で少しずつ投資を回収し、その利益や学習を使って資産性の高い施策を増やす方が現実的です。
例えば、
広告・既存顧客掘り起こし・CVR改善などで短期成果を作る
→ 生まれた利益と顧客理解を事例、SEO、PR、ブランドへ再投資する
という形です。
短期施策か長期施策かの二択ではなく、短期で資金と学習を生み、中長期の競争力へ再投資するポートフォリオとして考えます。
「相談内容」と「本当の課題」が違った3つの事例
PENGINの支援では、相談時に提示された施策と、本当に優先すべき課題が異なることがあります。
「リードを増やしたい」→事業計画・KPI・予算設計を見直す
ある企業から「リードを増やしたい」と相談をいただきました。
しかし数字を確認すると、そもそもの事業計画に無理があり、マーケティングだけで必要リード数を供給しても達成が難しい設計でした。
そこで単純なリード増加施策に入るのではなく、KGI・KPI、必要商談数、予算配分など、計画自体の見直しから検討しました。
「集客のためにWebサイトを作りたい」→保有顧客データの整備を優先する
レガシーな製造業では、「新規顧客を増やすためにWebサイトを作りたい」という相談がありました。
一方で、社内を見ると過去の名刺や顧客情報が紙で管理され、営業活動に活用できていませんでした。
この状態では、新規流入を増やす前に既存資産を活用する余地があります。
まず名寄せ・デジタル化を進め、保有リードの掘り起こしから支援する方が、短期間で成果につながる可能性が高いと判断しました。
「SEO記事を作りたい」→商談獲得までのファネル全体を設計する
「SEO記事を作ってアクセスを増やしたい」という相談でも、アクセス増加だけでは成果につながらないケースがあります。
そこで、
SEOによるアクセス
→ 低ハードルなCVポイントでリード獲得
→ メルマガによるナーチャリング
→ ISアプローチ
→ 商談
までを一つのファネルとして設計しました。
重要なのは、顧客が希望する施策をそのまま実行することではなく、その施策が事業成果へどう接続するのかを見ることです。
公開可能な支援事例は、PENGINの実績・事例にも掲載しています。課題からボトルネック特定、施策選定までの判断プロセスは、BtoBマーケティングの成功事例で詳しく解説しています。
戦略設計から相談したい方へ
PENGINでは、施策を決める前に事業目標・顧客・ファネル・ボトルネックを整理し、限られたリソースの配分から設計します。マーケティング戦略設計をご覧ください。
BtoBマーケティング戦略でよくある失敗
施策一覧を作って「戦略」と呼ぶ
SEO、広告、SNS、展示会を一覧化しただけでは、優先順位や資源配分が分かりません。
何を優先し、なぜそれを選び、何をやらないのかまで決めます。
目標と予算がつながっていない
売上目標だけ高く設定し、それに必要な商談数・リード数・投資額が現実的か確認していないケースがあります。
目標とファネル、予算を一緒に設計しましょう。
ペルソナを作ることが目的になる
詳細なプロフィールを作っても、実際の購買理由や比較行動が分からなければ役立ちません。
実際の顧客・商談データへ戻ることが重要です。
マーケティングだけを部分最適する
リード獲得数だけ増やしても、ISや営業が処理できなければ成果は伸びません。
マーケティングから受注まで一つのファネルとして考えます。
ファネルの数字だけを見て、ファネル外の問題を疑わない
事業計画、価格、商品、データ管理などが原因の場合もあります。
数字を見ながらも、必要に応じてファネルの外へ思考を広げます。
他社の成功事例をそのまま真似する
競合がSEOで成功したから、自社でもSEOが正解とは限りません。
ターゲット、商材、事業フェーズ、投資余力など前提条件が違えば、適切な資源配分も変わります。
AI時代にBtoBマーケティング戦略はどう変わるか
AIの普及によって、BtoB顧客が企業やサービスを発見・比較するプロセスは変わり始めています。
一方で、戦略の原則そのものが変わるわけではありません。
引き続き、
- 誰が買うのか
- なぜ買うのか
- 自社が選ばれる理由は何か
- どこに有限なリソースを配分するか
を考える必要があります。
変わるのは、顧客の情報収集方法と、それに伴うチャネルの重要度です。
PENGINでは今後、特に次のような投資の重要性が高まると考えています。
デジタルPR
AIや検索エンジンが自社サイト以外の情報も参照する環境では、PENGINでは第三者からの言及や、自社にしかない根拠情報の重要性が高まると考えています。
導入事例・実績
AIが候補企業を比較するときも、人間が最終判断するときも、「実際に誰をどう支援し、どのような成果が出たか」は重要な判断材料です。
独自研究・一次情報
どこにでもある一般論ではなく、自社だから提供できるデータや知見は、検索・AIの双方で引用される理由になります。Googleも生成AI検索向けの公式ガイドで、一般論の再編集ではなく、独自の視点や経験を含む価値ある非コモディティコンテンツを重視するよう案内しています。Google Search Central:生成AI検索向け最適化ガイド
そのためPENGINでは、商材から遠く、検索ボリュームだけが大きいKnowクエリを量産する施策の優先度を相対的に下げています。これはKnow記事そのものが不要という意味ではありません。事業や顧客の購買行動に近いテーマ、実績、独自情報、比較・意思決定を支援する情報へ、より多くのリソースを配分するという判断です。
AI検索時代の比較行動については、AI検索時代にBtoB企業が比較候補に入る方法で詳しく解説しています。
戦略が悪いのか、実行が悪いのかをどう判断するか
成果が出ないとき、「戦略が悪い」と結論づけるのも早すぎます。
まず、
- 必要な実行量を確保したか
- 品質を担保したか
- 十分な母数があるか
- 適切な期間を検証したか
- 想定した先行KPIが動いたか
を確認します。
そのうえで、実行を高い品質でやり切っているにもかかわらず、商談・受注・売上など本来の成果につながらない状態が続くのであれば、戦略仮説そのものを疑う必要があります。
ただし、「3ヶ月成果が出なかったから戦略失敗」のように一律の判断はできません。
施策特性や購買期間、事業フェーズによって適切な検証期間は異なるため、戦略策定時に反証条件まで決めておくことが重要です。
まとめ|戦略とは「何をやるか」より「どこへ資源を配分するか」
BtoBマーケティング戦略とは、施策一覧を作ることではありません。
達成したい目標があり、使えるリソースが有限だからこそ、どこへ予算・人・時間を配分するかを決める必要があります。
そのためには、
- 事業目標と制約条件を確認する
- 「誰が・なんで買うのか」を理解する
- 事業成果からファネルを逆算する
- 現在のボトルネックを特定する
- 最も重要な場所へリソースを集中する
- KPIと反証条件を決める
- 実行結果から次の配分を変える
という流れで考えることが重要です。
マーケティング施策を増やすことより、限られた資源をどこに集中すれば事業成果が最大化するのかを考えること。それが、PENGINが考えるBtoBマーケティング戦略です。
PENGINでは、Webサイト、SEO・AI検索最適化、広告、CVR改善など個別施策を販売する前に、事業目標やファネルを確認し、現在のボトルネックから必要な支援を整理しています。
BtoBマーケティング戦略について無料で相談できます
「何から手をつけるべきか分からない」「施策は実行しているが事業成果につながらない」といった段階でも問題ありません。まず現状と目標を整理し、優先すべきボトルネックを一緒に確認します。
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