BtoBマーケティングのKPI設計|受注から逆算し、打ち手まで決まる指標の置き方

BtoBマーケティングのKPI設計|受注から逆算し、打ち手まで決まる指標の置き方

この記事の監修者

鈴木 将太 |CMO

大手メーカーでの企画職や個人事業の経験を持つ。現在は大手企業からベンチャー企業まで、幅広い企業のマーケティング伴走支援やWebディレクションを担当。
BtoBマーケティングを幅広く網羅し、サイト設計に深い理解を持つ。トレンドを取り入れたデザインから業界特化型のデザインまで柔軟に対応しています。

BtoBマーケティングのKPIは、指標を知らないことが問題になるケースは多くありません。流入数・CVR・リード件数・商談化率といった指標は、どこにでも載っています。

受注から逆算してKPIを置く、という考え方も広く知られています。それでも数値は動いているのに次の打ち手が決まらない、という状態は起きます。

PENGINが実務で効くと考えているのは、逆算そのものより次の2つです。

  1. どの単位で分けて置くか:リード件数は接点別に、CVRはページ別・流入元別に分ける
  2. 指標と一緒に、運用ルールまで決めるか:集計定義・確認頻度・判断する人・やめる条件・記録の残し方

この記事では、逆算の手順を確認したうえで、この2つをどう決めるかを中心に解説します。

この記事の位置づけ|BtoB受注設計モデルの第4段階

PENGINでは、BtoBの受注につながる仕組みを4つの問いに分けて考えています。この記事はそのうち第4段階「どう数字で管理するか」を扱います。他の段階は、それぞれの記事で解説しています。

BtoB受注設計モデルの4段階を横並びで示した図。顧客はどう動くか、各段階に何を用意するか、どの接点から商談を作るか、どう数字で管理するか
BtoB受注設計モデル(PENGIN整理)
段階問い記事そこで決めること
1顧客はどう動くかBtoBの購買プロセス検討の段階を分け、どこで止まっているかを特定する
2各段階に何を用意するかBtoBのコンテンツマーケティング段階ごとに必要なコンテンツと、社内で使える材料を決める
3どの接点から商談を作るかBtoBのリード獲得接点によって商談化率が変わるため、接点を決めてから手法を選ぶ
4どう数字で管理するかこの記事接点別に指標を分け、集計定義とやめる条件まで決める

1つでも飛ばすと、数値は動いても次の打ち手が決まらなくなります。順番に決めることを前提にした体系です。

KPIは受注から逆算して降ろす(ここは前提)

流入数から積み上げてKPIを置くと、達成しても受注につながらないことがあります。先にKGI(受注額または受注件数)を決め、そこから割り算で降ろします。

KGIの受注額から受注率で割って商談数、接点ごとの商談化率で割ってリード件数、CVRで割って流入数を出す縦方向のフロー図
受注から逆算してKPIを降ろす(PENGIN整理)

計算の順番

  1. KGI:必要な受注額(または受注件数)を置く
  2. 必要商談数=必要受注数 ÷ 受注率
  3. 必要リード件数=必要商談数 ÷ 接点ごとの商談化率
  4. 必要流入数=必要リード件数 ÷ CVR

この順で降ろすと、どこが足りないのかが一目で分かります。たとえば流入数が目標どおりでも、CVRが想定より低ければリード件数は届きません。

受注率や商談化率が分からない場合

実績が少ない段階では、正確な率は出せません。その場合も仮の数値を置いて計算します。重要なのは精度ではなく、どこがボトルネックか比較できる状態にすることです。

数ヶ月運用したら、実績値に置き換えます。仮置きのまま1年運用すると、目標そのものが現実と合わなくなります。

ここまでは、KPI設計の一般的な考え方です。実際に打ち手が決まるかどうかは、この先の「どの単位で分けるか」と「運用ルールをどこまで決めるか」で変わります。

率ではなく件数で置く指標がある

BtoBのKPIで起きやすいのが、率だけを目標にしてしまうことです。率は分母が変わると動くため、それだけでは事業が伸びているか分かりません。

商談化率が下がっても、商談数は増えることがある

100件のリードから商談化率20%で20商談。リードが200件に増えて商談化率が15%に下がっても、商談数は30件です。率は下がっていますが、事業としては前進しています。

率と件数のどちらか一方では判断できないため、掛け合わせた商談数を必ず出します。そのうえで、率が下がった理由(獲得した接点の構成が変わったのか、対応が追いついていないのか)を見ます。

CVRだけを最大化すると、CV数が減ることがある

CVRを上げるために流入を絞ると、率は上がってもCV数が減ることがあります。CVRは目的ではなく、どこを改善するかを判断するための指標です。考え方はCVR改善の方法にまとめています。

分けずに置いた指標は、動いても理由が分からない

同じ指標でも、どの単位で置くかで判断できるかどうかが変わります。

判断材料にならない置き方と打ち手が決まる置き方を2列で比較した図。サイト全体の数値ではなく接点別・流入元別に分ける
指標の置き方の違い(PENGIN整理)

リード件数は接点別に分ける

見積もり依頼・無料相談、資料請求、ホワイトペーパーでは商談化率が大きく違います。これをまとめて「商談化率15%」と置くと、平均に埋もれて増やす場所も止める場所も決められません。

PENGINの自社運用での接点別の数値と、その読み方はBtoBのリード獲得にまとめています。ここでは、KPIを置く時点で接点を分けておくという点だけ押さえてください。あとから分けようとしても、分けられる形で記録されていないことがほとんどです。

流入数は「発注を検討しうる層」に限って置く

サイト全体のセッション数を目標にすると、事業につながらない流入でも達成できてしまいます。BtoBでは、同じキーワードでも検索している人の立場が違うことがあります。

PENGINでも、流入の多い記事が必ずしも問い合わせにつながっていないことがありました。流入数を置くなら、対象を絞った単位にします。

リード件数から営業メールを除く

BtoBサイトの問い合わせフォームには、営業目的のメールが届きます。これを件数に含めたままだと、商談化率が実態より低く見え、判断を誤ります。

集計の前に、対象外とするものの定義を決めておきます。あとから除外すると、期間ごとに基準が変わってしまいます。

CVRはページ別・流入元別に見る

サイト全体のCVRは、ページ構成や流入構成が変わるだけで動きます。主要ページ別・流入元別に分けて見ます。計測の設定はGA4でCVRを計測する設定を参照してください。

KPIとセットで決めておくこと

決めること内容決めていないと起きること
集計の定義CVに何を含めるか、何を除外するか期間ごとに基準が変わり、前後比較ができなくなる
確認の頻度週次で見るもの、月次で見るものを分ける母数の少ない指標を毎週見て、偶然の上下に反応してしまう
判断する人数値を見て打ち手を決める人報告はされるが、何も変わらない状態になる
やめる条件いつまでに何がなければ止めるか成果の出ない施策を続ける判断を繰り返す
記録の残し方何を変えて、そのとき何が動いたか翌期に同じ検討を最初からやり直すことになる

KPIを置くこと自体より、この5つを決めていないことで運用が止まるケースのほうが多くあります。構造的な理由はBtoBマーケティングが停滞する理由で解説しています。

運用ルールは、KPIを置くのと同じ日に決める

あとから決めようとすると、数値が出たあとになるため「今回は様子を見よう」という判断に流れやすくなります。

目標値を書いたドキュメントに、次の5行を並べて書いておくだけでも変わります。

  • CVに含めるもの/除外するもの(例:営業目的のメールは除外する)
  • 週次で見る指標/月次で見る指標
  • この数値を見て打ち手を決める人
  • いつまでに何がなければ止めるか
  • 変更したことと、そのとき動いた数値を残す場所

数値が動いたときの確認順序

  1. 計測が変わっていないか確認する:タグ、フォーム、ページ構成の変更がなかったか
  2. 母数を確認する:件数が少ない指標は、短期間の上下が偶然で動く
  3. 分解する:接点別・流入元別・ページ別に分けて、どこが動いたかを特定する
  4. 下流まで追う:リードが増えたなら、商談数と受注まで動いたかを見る
  5. 記録する:何を変えたとき、何が動いたかを残す

最初に計測を疑うのは、施策の効果だと判断したあとで計測の問題だったと分かると、その期間の判断がすべてやり直しになるためです。

前後比較だけでは効果を確定できない

施策の前後で数値が変わっても、それだけでは施策の効果だと確定はできません。季節要因、他施策、流入構成の変化が同時に起きていることがあります。

前後で比べる場合も、流入元・デバイス・CV定義・計測方法が変わっていないかを確認します。

PENGIN自身がKPIの置き方で失敗したこと

自社のBtoBマーケティングでの失敗はBtoBマーケティングでPENGINが実際にやってしまった失敗で公開しています。KPIに関わる部分は次の2つです。

保有リード数を成果として見ていた

保有しているリード全体へ一斉にアプローチしたときの商談化率は0.1%未満でした。リードを持っていること自体は成果ではなく、そこから商談が生まれて初めて意味を持ちます。

やめる条件を決めずに複数施策を並行させた

どれにも十分な工数を割けず、何が効いたのかも分からなくなりました。KPIを置くときに、同時に「いつまでに何がなければ止めるか」まで決めておく必要があります。

この記事で触れている数値は、PENGINの自社運用での経験値です。業界平均や一般的なベンチマークではありません。媒体別の費用と受注額は比較メディア3社を実際に使って検証で公開しています。

BtoBマーケティングのKPIでよくある質問

Q.KPIはいくつ置けばよいですか?

A.

数に決まりはありませんが、受注から逆算して降ろすと自然に4段階程度になります。指標を増やすより、それぞれをどの単位で分けて見るかを決めるほうが重要です。

Q.KGIとKPIの違いは何ですか?

A.

KGIは最終的に達成したい成果、KPIはそこに至る過程の指標です。BtoBマーケティングでは、KGIを受注額または受注件数に置き、商談数・リード件数・流入数をKPIとして降ろす形が扱いやすくなります。

Q.受注率や商談化率の目安はありますか?

A.

商材、単価、獲得している接点によって変わるため、一律の目安は置きにくい指標です。他社の数値と比べるより、自社の過去実績を同じ定義で比較するほうが判断に使えます。

Q.MQLやSQLといった区分は必要ですか?

A.

組織の規模によります。マーケティングと営業が分かれていて、引き渡しの基準を決める必要がある場合には有効です。少人数で運用している段階では、区分を増やすより「商談になったかどうか」で見たほうが判断しやすくなります。

Q.KPIはどれくらいの頻度で見直せばよいですか?

A.

数値自体は週次・月次で確認し、目標値そのものは実績が溜まった時点で見直します。仮置きの率を使っている場合は、数ヶ月分の実績が出たら必ず置き換えてください。

まとめ|KPIは指標選びではなく置き方で決まる

  1. KGI(受注)から割り算で降ろす。流入数から積み上げない
  2. 率ではなく、掛け合わせた商談数まで出す
  3. リード件数は接点別に、CVRはページ別・流入元別に分けて置く
  4. 集計の定義・確認頻度・判断する人・やめる条件・記録の残し方をセットで決める
  5. 数値が動いたら、計測 → 母数 → 分解 → 下流の順に確認する

BtoBマーケティング全体の考え方はBtoBマーケティングとは、進め方の手順はBtoBマーケティング戦略の立て方、手法の選び方はBtoBマーケティングの手法にまとめています。サイト側の改善はBtoBサイト改善の進め方、コンテンツの設計はBtoBのコンテンツマーケティングを参照してください。

「数値は見ているが、次に何をすべきか決まらない」「KPIをどう置けばよいか分からない」という場合は、PENGINのBtoBマーケティング伴走支援をご覧ください。