売上低迷が続いていたサンリオは、2022年以降業績を大きく回復させ、注目を集めるV字回復を実現しました。かつてはハローキティへの依存度が高く、国内物販や海外事業の不振によって成長が鈍化していましたが、経営体制の刷新を起点に、事業構造・マーケティング戦略の抜本的な見直しが進められました。
これらの施策は単発のマーケティング施策ではなく、利益を生み出し、その利益を再投資するという持続的な成長モデルを構築した点に大きな特徴があります。
本記事では、サンリオがどのようにしてV字回復を成し遂げたのかを、経営改革・海外戦略・ライセンスビジネス・SNS活用といった観点から整理します。キャラクターIPを軸にしたマーケティング戦略の全体像を紐解きながら、BtoB・BtoCを問わず、企業が成長を取り戻すために活かせるヒントをチェックしていきましょう。
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サンリオがV字回復するまでの背景
サンリオは、2010年代の低迷期から驚異的な売上回復を実現しています。まずは、売上低迷の原因や当時の状況について振り返っていきましょう。
2013〜2019年に続いた売上低迷
サンリオは長年、国内外で高い知名度を誇るキャラクター企業として成長してきました。しかし、2013年以降は国内物販事業の縮小や海外売上の落ち込みが続き、業績は右肩下がりの状況に陥ります。
特に海外事業の不振は影響が大きく、成長ドライバーであったはずの市場が足かせとなっていました。
ハローキティ依存による事業リスク
売上低迷の大きな要因のひとつが、ハローキティへの過度な依存です。一時期は売上の7割以上をハローキティが占めており、キャラクター人気の変動がそのまま業績リスクにつながる構造でした。
人気が落ち着いたタイミングで代替となるIPが育っておらず、事業の脆弱性が顕在化した形です。
サンリオのV字回復を支えた5つの戦略
サンリオは、売上回復戦略を実行したことで、低迷期を脱することに成功しました。ここでは、サンリオが実際に取り組んだ5つの戦略について紹介します。
① 経営陣の刷新と組織改革
株式会社サンリオでは2020年、31歳という若さの社長が誕生し、経営体制は大きく変わりました。平均年齢の高かった役員構成を若返らせ、意思決定のスピードを重視したトップダウン型の組織へと転換します。
これにより、商品点数の削減や業務効率化、テーマパーク事業の立て直しなど、従来は進みにくかった改革が一気に加速しました。経営判断そのものが市場感覚に近づいたことが、大きな転換点となります。
② 海外事業の立て直しと新市場開拓
経営改革と並行して、最重要課題であった海外事業の再構築にも着手しました。中国ではデジタル領域に強いCOOを配置し、現地採用を積極的に進めました。東南アジアでは合弁会社を設立し、新たな市場開拓を本格化させています。
この結果、北米・アジアともに売上と利益が回復し、海外事業は再び成長エンジンとして機能するようになりました。
③ ハローキティ依存からの脱却
サンリオはハローキティ以外にも多くのキャラクターIPを保有しています。V字回復に向けて、さまざまなキャラクターを戦略的に育成・展開することで、売上構成の分散を進めました。
結果として、ハローキティの売上比率は約30%台まで低下しましたが、単一IP依存のリスクを抑えつつ、全体の売上を伸ばす体制が整いました。
④ 高利益率ライセンス事業の強化
V字回復を語るうえで欠かせないのが、ライセンス事業の成長です。ライセンス事業は利益率が80〜90%と非常に高いことから、海外を中心に売上が拡大したことで営業利益は大きく伸びました。
生み出した利益を人材採用やマーケティングへ再投資できるようになり、好循環が生まれた点が重要です。
⑤ 長期ビジョン「サンリオ時間」の構築
サンリオは短期的な施策だけでなく、「子どもから大人まで、人生のあらゆる時間に寄り添う」という長期ビジョンを掲げています。キャラクターを単なる商品ではなく、生活や学び、仕事の時間にまで広げていく構想です。
この視点により、事業は一過性のブームに左右されにくくなり、持続的な成長が可能となりました。
サンリオのマーケティング戦略の特徴
サンリオの売上V字回復を成功に導いた一因が、マーケティング戦略の見直しです。ここでは、サンリオが実施したマーケティング戦略の特徴について紹介します。
特徴①SNSを軸としたグローバル認知拡大
サンリオはSNSを重要な経営KPIとして位置づけています。グローバルで8,000万人以上のフォロワーを抱え、キャラクターの世界観や情報を継続的に発信することで、ファン基盤を拡大してきました。
SNSは単なる広報手段ではなく、すべての事業の土台となる資産として活用されています。
特徴②ライセンス活用による広告効果の最大化
アパレルや雑貨など、他社とのコラボレーションによるライセンス展開も大きな特徴です。サンリオ側はライセンス収入を得ながら、キャラクター露出を増やすことができます。
いわば「広告費をもらいながら認知を拡大する」仕組みであり、IPビジネスならではの強みを最大限に活かしたマーケティングといえます。
特徴③オフライン施策によるファン体験の強化
オフラインでは、ピューロランドを日本人向けからインバウンド向けへと再定義する戦略を実行しています。イベントやキャラクター体験を通じて、新規ファンの獲得と既存ファンの満足度向上を両立させました。
オンラインとオフラインを連動させた体験設計が、ブランド価値を高めています。
サンリオの事例から学べるマーケティングの本質
サンリオの売上回復事例より、マーケティングの本質を探っていきましょう。
IPはキャラクターでなくても成立する
サンリオの強みはキャラクターIPですが、考え方自体は他業種にも応用可能です。企業や個人にとってのIPは、「人」「ブランド」「発信力」でも代替できます。
SNS×他チャネル×オフラインの連動が重要
SNSで認知を広げ、他チャネルへの露出を増やし、オフラインでファン化するという一連の流れを設計できるかどうかが、今後のマーケティング成果を大きく左右します。
まとめ|サンリオV字回復が示す成功要因
サンリオのV字回復は、単なるマーケティング施策の成功ではありません。経営・組織・事業モデルを同時に見直し、高利益を生む構造を作ったことが本質です。
IPの強化によって利益を生み、その利益を人材やマーケティングへ再投資するという循環を確立できたことこそが、サンリオのV字回復を支えた最大の要因といえるでしょう。
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